角持ち奴隷少女の使用人。

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45、川遊び。

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今日も今日とて犬の散歩をし、ぽてぽてと和やかに歩を進める少女。
だが今日は珍しく、傍にいるのが彼女ではなく単眼である。
楽し気に犬と歩く少女を、少し後方からとてものんびりと追いかけていた。
少女が焦らない様に、少女の歩幅に合わせてゆったりと。

単眼は少女の様子をとても微笑ましく思いながら面倒を見ている。
だが少女がチマチマと歩く間にゆっくりと一歩踏み出すその様に、ご近所の御婆様方も微笑ましく見つめていると単眼は気が付いてはいない。
今日のご近所の視線の先に映る光景は、少女と単眼ワンセットの様だ。
勿論単眼本人は、優しい視線が少女に向いているとしか思っていないのだが。

「私が偶に連れて行く時はあっちの方にも行ったりするんだけど、行ってみる?」

単眼の言葉に素直に頷き、進行方向を変える少女。
犬も「こっちに行くんだねー」と、のんびりと方向を変える。
少女の歩幅に完全に合わせる犬の動きは、最早ショーに出れそうな領域である。

だがしかし、犬の賢さを見て男が過去そういった大会に出してみたところ、大会では一切動かなかったという経験があったりする。間違いなく賢いのだが、見世物になるのは嫌いな様だ。
因みに飼い主は男だと思っているが、ボスは女だと思っている。
両方から命令が下れば先ず女の言葉に従う犬であった。

暫くぽてぽてと歩くと、水の流れる音が少女の耳に入って来る。
そして段々と音が大きくなっていき、少女はその音の原因の場所に辿り着く。

「川の方まで来るのは初めて?」

少女はコクコクト頷くと、キラキラした目で川を眺める。
犬は川遊びは嫌いではないらしく、少しそわそわしていた。
もし喋れたのならば『ねえ行くの? 行くの?』と言っていそうだ。
勿論隣にいる少女も近づいてみたいという顔をしているのだが。

「ちょこっとだけ川で遊んでいこっか」

単眼もそれを察したのか、少女に遊んで良いよと許可を出す。
この川は今いる位置であれば浅く、水かさは少女の脛辺り。
たとえ落ちても、流されて大惨事と言う事はないだろうと判断しての言葉だ。

「この辺は良いけど、あの石の向こうに行っちゃ駄目だからね。あそこまで行くとちょっと深いから、おチビちゃんじゃ小さくてあっという間に流されちゃうからね?」

ただし一応注意をしておいて、自分は万が一に備えてきちんと見ておくつもりだ。
単眼であれば流される事などそうないし、少女程度ならばその気であれば片手で抱えられる。
この巨体が流される様な水量の川であれば、そもそも絶対に近づけはしない。

少女は単眼の言葉に嬉しそうに頷き、いそいそと靴を脱いで靴下も脱ぎ始めた。
犬は既にリードを放されているにもかかわらず、そわそわと少女の準備を待っている。
そして靴と靴下をそろえて置き、少女は川の方へ駆け出し、犬も一緒に追いかけていく。

パシャパシャと水をはね上げながら、犬と一緒にキャッキャと楽し気に走り回っている。
浅いとはいえ足をとられる川で軽快に動く様は、少女の身体能力の高さが伺える事だろう。
犬も久々なのだろう川遊びに、全身びしょびしょにしながらはしゃいでいた。

「元気だなぁ・・・多分楽しくて忘れてるんだろうけど、寒くないのかなぁ」

単眼は何かあった時に何時でも助けに入れるように、自分も靴と靴下を脱いでいる。
だが寒空の中の足を襲う風に負け、大きな岩に座りながら足を擦っていた。
実はちょっと手でぱしゃぱしゃと触る程度のつもりだったのだのだが、楽し気に靴を脱ぎだした少女にその訂正を口にする事が出来なかったのだ。

「うう、しゃむい。帰ったらワンコもドライヤーかけなきゃ・・・」

楽し気に遊ぶ少女と犬を眺め、それ自体には暖かい気持ちを持ちながらも、物理的な寒さに震える単眼。
とりあえず靴だけでも履いておけば風を防げたと気が付いたのは、屋敷に帰って彼女に突っ込まれてからである。
少女は女に強制的に風呂に入れられて温められ、足が少し痒くなる経験をするのだった。
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