角持ち奴隷少女の使用人。

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42、ゲーセンに行こう。

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「ゲーセンに行きたい」

ある日、男は自室でそんな事を言い出した。
手元には書類が有り、感情の見えない顔で内容を確認している。
端末にカタカタと打ち込みながらの姿は、までちゃんと仕事をしている様だ。
いや、実際にしてはいるのだが、おそらく屋敷の住人は皆そう思うであろう。

「・・・唐突に何を言い出すのですか貴方は。良いから手を動かしてください」
「手は止めてないだろ。ちゃんと仕事はしてるよ」

端末を打つ手が時々止まっているが、それは単純に書類を確認しているからだ。
女もそれは解った上で、仕事に飽きた男の言葉に適当に返しただけである。
男が仕事を真面目にやっていなければ、この家はとうに無くなっているのだから。
因みに女も男の隣でカタカタと手を動かしている。

「あー、最近ゲーセン行ってねー。行きてー。あ、大型アミューズメントパーク系は嫌」
「貴方は人の多い所は嫌いなのに、何故ああいった所には行きたがるんですか」
「別腹なんだよ別腹。あの雑な空間が良いの」

男は余り多くの人と関わり合うのは好きではない。
勿論無茶苦茶嫌いでもないが、無駄に多くの人が居る空間は好きではない。
近所の老人達とはそれなりに顔見知りで仲も良いのだが、それはそれでまた違うらしい。
実に面倒臭い男である。仕事と割り切ると出来る辺りが尚の事面倒臭い。

「あの子も連れて行こうぜ。いい経験になるだろ」
「旦那様が行きたい所は悪影響にしかなりません。私が決めた所で良いなら構いません」
「お前が選ぶ所って禁煙の所とか、大型のクレーン主体のとことかじゃん。つまんねー」
「貴方に任せると空気の悪い地下やチンピラの多い所に連れて行くでしょう。大体あの子をそんな所に連れて行って、面倒を見るのは誰だと思っているんですか」

男は子供連れが似合う様なゲームセンターは基本興味がないのだが、女はそんな所に少女を連れて行く事は絶対に許せないらしい。
こうなるともし連れて行くとしても、大型の健全なイメージのある所にしか行けないだろう。
だが男も自分が行きたいだけで少女を連れて行こうと言ったわけでは無い。

「・・・まあ、しょうがねーか。明日は時間空けとけよ」
「貴方こそ。直前になって店を変えたりしないように」

男は軽く溜め息を吐いて妥協し、女が決めた店に行く事にした。
とはいえ何だかんだと女も男の趣味を知っているので、それなりに楽しめる所にする気はある。ただしこれ以上ごねていたら、クレーンとコインゲームしかない店になっていただろうが。








「という訳で明日は出かけるからな。前に出かけた時も言ったが、絶対に離れるなよ」

女の報告に少女は満面の笑みでコクコクと頷く。
それはゲームセンターなる場所に行けるからではなく、女と外に出かけられるからだ。
前回の外出は結果こそ残念な物だったが、後で思い返してみればとても楽しい一日だった。
なら女とのお出かけはまた楽しいに違いない、少女はそう思っているが故のご機嫌だ。

「何か変な期待をされている気がするが・・・まあ良い。今回は前回の様に眠れない様な事は無いようにな」

その言葉にも嬉しそうにコクコクと頷く少女を見て、可愛いとは思いながらも不安になる女。
前回も返事だけは良かったのだ。
だが今回の少女には秘策がある様で、女に任せろと言わんばかりに手をぎゅっと握っている。
少女自身も同じ様に寝れない可能性が有ると思っていたのだ。

「・・・まあ、何とかなるなら構わんが」

女は少女の張り切りに水を差すのも何だと思い、もし駄目でもまだ後日にしようと決める。
少女は女の返事を聞くや否やパタパタとどこかに向かった。






そして翌日、ちゃんと夜ぐっすり寝て、朝しっかりと起きる少女の姿が。
むしろ男の方が起きていない。その寝ぼけ頭で運転するつもりかと女に殴られた程だ。
少女にはきちんと睡眠をとる為の秘策が本当にあった。
それは単純明快に、疲れ切る事である。流石の少女も疲労から来る睡魔には勝てないのだ。

なお、その為に裏の畑が更に広がり、山を侵食し始めていた。
新しく畑が出来た少女は大満足で睡眠をとり、そろそろ裏庭で家庭菜園とは誤魔化せないなと男は思い始めている。
裏の山が完全に農地になるのは、そう遠くない話かもしれない。
牛も馬も耕運機も無いのに広がる農地を眺めながら、手続きに頭を悩ませる男であった。
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