角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

文字の大きさ
上 下
42 / 247

41、初めての雪。

しおりを挟む
その日は早朝からチラチラと可愛げのある程度の雪が降っていた。
少女は今日も今日とてモコモコの格好で、玄関から楽しそうに空を眺めている。
物心つく前から奴隷であった少女にとって、初めて間近で体験する雪なせいだろう。
そして何故か少女に誘われ、少年もその隣で雪を眺めていた。

「き、綺麗ですね」

少年はとりあえず何か喋らなければと思い、口に出した精一杯がそれであった。
だが少女は特に気にせずコクコクと笑顔で頷き、うずうずした様子を見せている。
少年の言葉が何であろうと、おそらく笑顔を見せていただろう。

普段の少女なら既に突撃しているのだが、今日は使用人服ではないので我慢している。
雪は白くて綺麗に見えるが、それなりに汚れているものだと知っているのだ。
このまま突撃すれば綺麗な服を汚してしまうと思い、只々落ちて来る雪を眺めていた。

「・・・はぁ、良いぞ、着替えて来い。今日の予定は中止だ」

女の言葉にパァッと顔を輝かせ、パタパタと自室に戻って行く少女。
その様子を見て溜め息を吐きつつ少女を凝視しているが、これは何時もの病気である。
少年も最近は慣れ始めているので少し引く程度で済んでいるようだ

少女の本日の予定は、この後で勉強をするはずだった。
ただ勉強時は可愛い格好をして欲しいという女の願いから、使用人服は着る事が出来ない。
なので今日は勉強をお休みにして、使用人服に着替えて来て良いと許可を出したのだった。

そもそも女は最近、少女に勉強を教える必要性を感じなくなりつつある。
読み書きが一切出来なかった頃と違い、読めるようになってからの成長速度が速過ぎるのだ。
暫くすると少女は教えていないはずの知識も増え始めていた。
自ら調べて学習する少女に、自分の様な中途半端な教師など要らないのではと。

とはいえ少女と二人っきりで接する事の出来る大事な時間なので、けして止める気は無い。
これからも時間がある限りやるつもりの女であった。

「僕は他の仕事をしてきますね」
「何を言っている。お前は誘われたのだろう。遊んで来い」
「ええぇ・・・」

少年は今のうちに何かしらの仕事を捜しに行こうとしたのが、女に肩を掴まれ阻まれてしまう。
そして女の発言に困惑しながらも、上司の発言だからと大人しく留まるのだった。
悲しいかな上下関係。特に女は使用人の纏め役なので余計に逆らう事は出来ない。
だがその結果少女と共に居る時間となるので、少年にとっては良い事なのかもしれないが。

そうして暫く待つと、パタパタという音と共に何か丸い物体が玄関に走って来た。
良く見ると、それは合羽を着た少女だ。

すっぽりと体を包むタイプの可愛らしい合羽を羽織り、頭には角が二つ増えている。
足元も普段の靴ではなく長靴が履かれていた。
子供特有の可愛らしさを発揮しながら、雨具姿でかけて来る少女であった。

「――――その服はどうした」
「私でーす」

女は少女の可愛さに一瞬声が出なかったが、何とか気を取り直して質問を投げる。
すると少女の更に後ろからカメラを片手に羊角が歩いて来た。
どうやらこの服は羊角が用意した物らしい。

「可愛いでしょ~」
「・・・今度は着替えを撮ったりしていないだろうな」
「してませんしてません! あれ以降誓って紛らわしい事もしてません!」
「ならば良い」

羊角は咎められている間も手が完全に固定されている。もはやプロの領域だ。
だが少女はそんな事はお構いなしに、少年の手を取って外に出る。
心底楽し気に雪の中に突撃する少女だが、雪は相変わらずチラチラと積もらない程度の降り方。
それでも少女にとっては、始めて外に出て体験できる雪に大満足の様だ。

ただ楽しくはしゃぎまわっている少女とは対照的に、手を握られたり、顔が至近距離になったり、腕に抱きつかれたりと、少年は寒空の中でありながら雪が蒸発しそうな状態である。
女はそんな二人をいつもの酷い顔で眺め、羊角はしっかりとカメラに収めていた。

「あの二人が居ると微笑ましさが落ちるなぁ」

偶々通りがかった複眼は、思わずそう口に出さずにはいられなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

交換した性別

廣瀬純七
ファンタジー
幼い頃に魔法で性別を交換した男女の話

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...