角持ち奴隷少女の使用人。

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25、女の変化。

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ある日の昼、当日の仕事を終わらせた女は特にやる事も無いので屋敷の点検をしていた。
女の立場としては下の人間の報告があってから動けば良い事でもあるのだが、女の場合は昔からの習慣に近い物が有る。
とはいえ把握だけしておいて、何か有っても下からの報告が来るまで放置するつもりなのだが。
勿論余りに長期間放置されているようならば自分でやってしまうつもりだ。

「・・・特に問題なさそうだな」

ただこの点検も、今日が特別にやっているのではなく普段からの事だ。
屋敷の使用人達も解っているし、そうそう大きな問題も滅多に無い。
それでも手が空けばやってしまうだけなのだ。

「仕事が無いと暇だな・・・あの子はどうしているかな」

自分のやる事が無さ過ぎて困った女は、点検を切り上げて少女の下へ行く。
少女は今日も今日とてちょこまかと屋敷を動き回り、色んな所で何かしらやっている。
屋敷の中を歩き回って見当たらなかったという事は裏の畑だろうと女は考え、のんびりと畑の方に向かっていく。

そこにはやはり少女が居り、作物の世話をしていた。
少女が来るまで完全に放置され、無駄に有るだけだった広い土地は今や広大な畑になっている。
最初こそ家庭菜園程度だった筈なのだが、日が経つにつれどんどん規模が大きくなっていた。

「壮観だな」

これならばこの畑を収入源に出来るのではと少し考えたが、その考えはすぐに捨てた。
恐らく少女はそんな事を考えていないだろうし、もし考え始めたらあんなに楽しそうな笑顔が消えてしまうかもしれない。

少女は自分の立場を弁えている。弁えているからこそ役に立とうと頑張っている。
自分の行動が利益になると知れば今以上の頑張りを見せるだろう。
だがその結果が上手く行かなければ、彼女の笑顔が曇る事は間違いない。
商売なんてものはいつでも上手く行くなんて事は絶対にない物だ。
もしやるとしても数年後、彼女が自分の生き方をはっきりと判断できる様になってからで良い。

「それにしても、何故あいつらまで楽しそうにやっている」

畑には他の使用人達の姿もあった。
女も点検中に会わないなと思ったが、全員で畑を手伝っているとは思わなかった。
何だか自分が仲間外れにされたような気分になって来て、女は少し寂しい気分になる。

だがここで混ざりに行っても気を遣わせてしまうかもしれないと思い、女は楽し気な少女を眺める事に徹する事にした。
勿論それだけでも女にとって楽しい事ではあるので、問題は無いのかもしれない。

少女の笑顔を眺め、女は少女がやって来たばかりの頃を思い出していた。
あの頃の少女は何時もびくびくとしながら私を眺めていたが、今は全くそんな様子を見せなくなった。それが嬉しくもあり、あの頃の小動物感が少し無くなった事が寂しくもある。
それでもあの笑顔をいつも見られるのなら、それはそちらの方が良い事だろう。
そんな風に想いながら少女の様子を眺めて、胸の内に暖かい物が有る事を女は自覚していた。

「・・・諦めたつもりだったのだが、存外心根の奥では子供が欲しかったのかもしれないな」

女にとって子供は可愛いし、可愛い物を愛でる事は好きだ。
だが女は、自分が子供を作る事を、母になる事を諦めていた。
そんな自分が彼女に持つ感情は母性なのかもしれないと思い、そう口にしていた。

そこで少女は女が眺めている事に気が付き、ぶんぶんと女に手を振った。
女は何時もの厳しい顔で手を振り返すと、少女は満面の笑みになる。
それが尚の事自分の胸を暖かくしてくれたのを感じながら眺めていると、少女は野菜を一つもぎ取って女の下へ駆け寄った。

「どうし―――聞くまでもないか」

女は少女に問いかけようと思ったが、少女が差し出す野菜を見て止めた。
少女がニコニコ笑顔で差し出したそれを受け取って口にし、女は下手な店売りよりも良く出来ていると思った。
ただ業者が作る物と違い、形が歪なのはご愛敬だろうとも思っていたが。

「美味い。頑張ったな」

そう言って女は少女の頭を撫でる。少女はそんな女を呆けた顔で見上げていた。
女は一体どうしたのかと思い首を傾げたが、少女ははっとした顔を見せる。

「どうした?」

女は少女の様子が変だと思い問いかけるが、少女は顔を横に勢いよく振った。
だがその顔が笑顔であったので、別に構わないかと女は結論を出す。

女は気が付いていなかった。今の自分の顔に。
普段の少女を愛でる厳しい顔ではなく、まるで子を想う母の様な優しい笑みを見せていた事に。
少女はそんな女の顔を見て、何だか凄く嬉しい気分になっていた。






因みに他の使用人達もその様子は見ていたので、後日女は色々と揶揄われる事になる。
無論その話を聞いた男だけは、何時も通り女の拳によって沈められていたのだが。
ただ女の様子は何時もと違い、揶揄われても余り不快な様子では無かった。
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