角持ち奴隷少女の使用人。

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14、男の仕事。

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「くあ~、つっかれた・・・帰りの運転めんどくせぇ・・・」

仕事からの帰り、運転しながら体を伸ばし、ぼやく男。
そもそもこんな田舎町に住まなければ移動は楽なのだが、男は都会に住みたくない人間であった。
運転手を雇えばそれも多少解決されるのだろうが、他人の運転で乗るのは苦手という、何とも面倒くさい人間性をしている。
唯一、女の運転だけは寝れるのだが、女には基本家を任せているのでどうしようもない。

「しっかし、うざってえなぁ」

男は仕事先で、商売相手の男が連れて来た年端のいかない娘を思い出す。
娘の身なりは小奇麗だったため、男は最初、商売相手の娘か何かかと思った。
だがよく見ると、どうにも娘の様子がおかしい事に気が付く。

娘はやけに息が荒く、上気した顔で、視線が定まっていなかった。
男はその時点で嫌な予感がした。
なのでそれ以降娘に視線を向けず、娘の一切を無視した。
だが嫌な予感という物は的中する事が、往々にして多い物。

商売相手の男は、男の予想通り、その娘を贈り物と言い始めた。
要は、男が少女の奴隷を買った事が、何処からか知られていたのだ。
男に伴侶は居ない。恋人も、金で買った女等も、今まで一人も居なかった。
そんな男が少女を買った。その事実は男に媚びを売る人間としては、見逃せない話だった。

男はこれでも、それなりに名の知られた人間で、自分でもそれを自覚していた。
だからと言って、奴隷を、少女を買った事がそんなに知れ渡るとは思っていなかった。
こんな事なら変装でもしていくのだったと後悔しているが、もはや後の祭りである。

「ったく、しばらく似たような事が続きそうだな」

今後の仕事を思うと、憂鬱で仕方ない男はぼやき続ける。
その言葉を聞く者は誰も居ないのだが、言わないとやっていられないのだろう。
それに男は、屋敷ではなるべく仕事の話をしたくない人間だ。男にとって家は安らぎの場である。そこに仕事の愚痴を持ち込むなど、男にとって本末転倒なのだ。
無論、女に対してだけは例外であり、それは他の使用人も知る所だ。

「碌なもんじゃねえわ、ほんと。女下に引いて、無理矢理いう事きかせて何が楽しいのか」

男にとって、女性に無理矢理な行為をする事は、腹の底から嫌う事であった。
身体的に弱い女性に手を上げて組み伏せるなど、考えるだけで腹立たしいと思っている。
商売女を見下す気は無いが、金でどうにかしようというのも男には理解できない。
故に商売相手の行為は、媚びを売った事にならず、男の怒りを買っただけであった。

因みに、男にとって幼い頃からの関わりである『女』は『女性』としてカウントされていない。
とはいえ女も普段の行動が行動なので、仕方ないと言えば仕方ない。







「あー、着いたー・・・なにやってんだ?」

屋敷について家の傍まで車を走らせていると、庭で女と少女が何かをやっている。
よく見ると、武道の型のように見えた。
女は男が昔見た時と変わらず様になっているが、少女は先日の珍妙な踊りを思い出させる動きだ。
男は車を止め、二人に近づく。

「お帰りなさいませ、旦那様」

女は佇まいを直すことなく、型を通しながら迎えの言葉だけを投げる。

「せめていったん止めろよ・・・」

男を確認した少女はピンと背筋を伸ばした後に、深々と頭を下げた。
それを見てから、女は動きを止める。

「なんで今更そんな事やってんの」

男の記憶では、女はもうずいぶんと長い事、型の流しなどやっていなかった。
そしてその通り、女が型の流しなどをやるのは数年ぶりである。

「いえ、先日の動きがあまりにも珍妙でしたので、代わりにと」
「だからってなんで武道の型なんだよ」
「これしか出来ませんから。数年やって無くても、案外覚えている物ですね」
「あっそう」

男は若干頭を抱えつつ、女に質問するのを止める。
それで良いのかと思う視線を少女に向けるが、少女は両手を握り締めて頑張る気満々だ。
その視線の純粋さに、何も言えなくなってしまった。

「・・・まあ、頑張ってな」

少女の頭を撫でて言うと、少女は満面の笑みでコクコクと頷いた。
男は、まあ少女が良いならそれでいいかと結論付けて、屋敷に入っていく。
少女はぺこりと頭を下げて男を見送ると、また女に教えを乞い始める。

男は屋敷の玄関をしめる際、ちらっと少女を見る。やはりリズムがおかしく、珍妙な動きに見える。だが、顔は真剣そのものだ。
その真剣さが、男にはとても可愛らしく見えた。

「どうやったらあんな子達を好きにしようとか思えるのかね・・・」

男の呟きに応える者は居ないが、それでも男は呟かずにはいられなかった。
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