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母の忠告
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「ところで最近気になる事が有るんだけど、聞いて良い?」
夕食の時間に真剣な顔を私に向けて訊ねて来るお母さん。
そのあまりに真面目な表情に、進路の話を思い出して息をのむ。
「聞いて良いって言われても、何の事かも言われないと解らないんだけど」
「んー、まあ、それはそうなんだけどね」
少し怯みながらの返事に、お母さんは悩む様子を見せながら俯いた。
眉間に皺が寄っているその様子に、一体何を聞かれるのかと不安になって来る。
お母さんの隣に居るお父さんも、少し心配そうにお母さんを見つめていた。
「私、何かしたかな?」
「いや、うーん・・・聞いても怒らないでくれる?」
・・・一瞬で気が抜けた。
珍しくまじめな顔をしていると思ったら、怒られるのが嫌だっただけか。
質問の内容を聞いていないのに、何だか少し腹が立ってきた。
「お母さん?」
「ま、まってまって、何で怒ってるの? お母さんまだ何にも言ってないよ!?」
お母さんは私が少しイラッとしている事に即座に気が付き、お父さんの背中に隠れる。
自然と視線はお父さんの方へ向き、お父さんと目が合って少し気まずい気分になる。
そのせいで怒りは削がれ、はぁと一つ溜め息を吐いてからお母さんに話しかけた。
「内容したいで怒る」
「そこは怒らないから言ってみなよって言う事じゃないの!?」
「怒る」
「うえーん、たーくん、愛娘が怖いー」
お父さんの後ろに居るから見えないが、多分お父さんの背中に頭をこすりつけているのだろう。
お壮さんが微妙に左右に揺れている。
「明、少しぐらい聞いてあげたらどうだい?」
「・・・別に変な事じゃなかったら怒らないよ」
「だってさ、咲ちゃん」
内容次第で怒るけど、内容次第では怒らない。
でも何となく、お母さんが聞きたい事は私が起る内容だと思う。
お母さんもそれが解っているから聞いたんだと思うし。
「・・・じゃあ多分明ちゃん怒るから聞かない」
「お父さん、私怒って良いよね」
「怒られたくないから言わないって言ったのにー!」
怒られる様な事言おうとしたって事なのだから、覚悟の上じゃないのか。
お父さんがお母さんを庇う様に抱き、私に「まあまあ」と抑える様に言ってくる。
「はぁ・・・で、何?」
「明ちゃん、怒らない?」
「・・・・・・・・・・・・怒らないよ」
「すっごい不安なタメがあったんですけど」
「じゃあ言わないと怒る」
「どっちにしても逃げ場ないじゃん!」
お母さんは私の言葉に不満そうに返すが、そもそも怒られる様な事を言う方が悪いのだと思う。
とはいっても、結局言ってくれないと内容は解らない。
このまま聞かずに終わらせるとモヤッとしたものが残るし、さっさと言って欲しい。
「あのさー・・・本当に避妊してる?」
「ねえ、殴っていい?」
「怒って良いどころじゃなくなったよ!?」
「前にもそういう聞いてきて私が怒ったの覚えてるよね?」
「でもその代わりこの前は色々教えてあげたじゃん!」
「殴る。絶対殴る。お父さんの前で何で言うかな」
せめて二人っきりの時ならともかく、何故お父さんの目の前で言った。
ほら、お父さんが驚いて私を凝視しているじゃない。
最初に真面目に答えただけに、物凄く腹が立って来た。
「いやまって、今回は結構真面目な気持ちで聞いたのよ! 本当!」
「・・・」
信じられないという気持ちでお母さんを睨むと、お母さんは慌てて続ける。
「だって、ほら、子供生まれたら色々あるじゃん!? その辺今のうちに考えておいた方が良いかなって! 親として! 本当!」
「・・・本当?」
「本当! 今回は!」
いつもはふざけているという自覚は有るらしい。ならお願いだから止めて。
でも確かに親としては不安は有るか。私はまだ高校生だし、春さんは大学生だ。
保護者として、お母さんの言葉は至極当然の事だろう。
「・・・してるよ」
「あ、そうなの?」
「何で疑問付きなの」
「だって春くんの子供ならすぐにでもっていうのかと」
そういう気持ちは無いわけではないけど、それじゃ春さんに迷惑がかかると思う。
勿論妄想はしたけど、やっぱり、出来ない。
春さんが望むならなんて事も考えたけど、自分の冷静な部分が、それはもっと性質が悪い思考だと言っている。
これからの事を考えずに相手に選択肢を押し付け、自分は責任を負わない行動だと。
春さんは以前子供が出来ても構わないとは言ってくれたけど、それでもやっぱりきちんとするべきだと思う。
最低でも、二人で生活出来るまでは、子供は出来ない様に気を付けたい。
「少なくとも、子供産んで大丈夫な状況になるまでは、気を付けるよ」
「そっか。んー、まあ、お母さん的には明ちゃんが望むなら別に構わないんだけどね」
「本気?」
「本気本気。明ちゃんがそれで後悔しないならね」
「・・・そっか、そうだね。後悔しちゃ意味無いよね」
大事な人との大事な事だ。後悔するような事にはしたくない。
「忠告ありがとう、お母さん」
今回の事は、本当に私を想っての事なんだろう。
だから素直に礼を伝えておく事にした。
「どういたしまして! まあ別に色々ただれた生活を送る事自体は、お母さんニヤニヤ出来るから大歓迎なんだけどね!」
「やっぱり殴っていい?」
「そんな馬鹿な!?」
何でせっかく感謝したのに台無しにするかなこの人は・・・。
夕食の時間に真剣な顔を私に向けて訊ねて来るお母さん。
そのあまりに真面目な表情に、進路の話を思い出して息をのむ。
「聞いて良いって言われても、何の事かも言われないと解らないんだけど」
「んー、まあ、それはそうなんだけどね」
少し怯みながらの返事に、お母さんは悩む様子を見せながら俯いた。
眉間に皺が寄っているその様子に、一体何を聞かれるのかと不安になって来る。
お母さんの隣に居るお父さんも、少し心配そうにお母さんを見つめていた。
「私、何かしたかな?」
「いや、うーん・・・聞いても怒らないでくれる?」
・・・一瞬で気が抜けた。
珍しくまじめな顔をしていると思ったら、怒られるのが嫌だっただけか。
質問の内容を聞いていないのに、何だか少し腹が立ってきた。
「お母さん?」
「ま、まってまって、何で怒ってるの? お母さんまだ何にも言ってないよ!?」
お母さんは私が少しイラッとしている事に即座に気が付き、お父さんの背中に隠れる。
自然と視線はお父さんの方へ向き、お父さんと目が合って少し気まずい気分になる。
そのせいで怒りは削がれ、はぁと一つ溜め息を吐いてからお母さんに話しかけた。
「内容したいで怒る」
「そこは怒らないから言ってみなよって言う事じゃないの!?」
「怒る」
「うえーん、たーくん、愛娘が怖いー」
お父さんの後ろに居るから見えないが、多分お父さんの背中に頭をこすりつけているのだろう。
お壮さんが微妙に左右に揺れている。
「明、少しぐらい聞いてあげたらどうだい?」
「・・・別に変な事じゃなかったら怒らないよ」
「だってさ、咲ちゃん」
内容次第で怒るけど、内容次第では怒らない。
でも何となく、お母さんが聞きたい事は私が起る内容だと思う。
お母さんもそれが解っているから聞いたんだと思うし。
「・・・じゃあ多分明ちゃん怒るから聞かない」
「お父さん、私怒って良いよね」
「怒られたくないから言わないって言ったのにー!」
怒られる様な事言おうとしたって事なのだから、覚悟の上じゃないのか。
お父さんがお母さんを庇う様に抱き、私に「まあまあ」と抑える様に言ってくる。
「はぁ・・・で、何?」
「明ちゃん、怒らない?」
「・・・・・・・・・・・・怒らないよ」
「すっごい不安なタメがあったんですけど」
「じゃあ言わないと怒る」
「どっちにしても逃げ場ないじゃん!」
お母さんは私の言葉に不満そうに返すが、そもそも怒られる様な事を言う方が悪いのだと思う。
とはいっても、結局言ってくれないと内容は解らない。
このまま聞かずに終わらせるとモヤッとしたものが残るし、さっさと言って欲しい。
「あのさー・・・本当に避妊してる?」
「ねえ、殴っていい?」
「怒って良いどころじゃなくなったよ!?」
「前にもそういう聞いてきて私が怒ったの覚えてるよね?」
「でもその代わりこの前は色々教えてあげたじゃん!」
「殴る。絶対殴る。お父さんの前で何で言うかな」
せめて二人っきりの時ならともかく、何故お父さんの目の前で言った。
ほら、お父さんが驚いて私を凝視しているじゃない。
最初に真面目に答えただけに、物凄く腹が立って来た。
「いやまって、今回は結構真面目な気持ちで聞いたのよ! 本当!」
「・・・」
信じられないという気持ちでお母さんを睨むと、お母さんは慌てて続ける。
「だって、ほら、子供生まれたら色々あるじゃん!? その辺今のうちに考えておいた方が良いかなって! 親として! 本当!」
「・・・本当?」
「本当! 今回は!」
いつもはふざけているという自覚は有るらしい。ならお願いだから止めて。
でも確かに親としては不安は有るか。私はまだ高校生だし、春さんは大学生だ。
保護者として、お母さんの言葉は至極当然の事だろう。
「・・・してるよ」
「あ、そうなの?」
「何で疑問付きなの」
「だって春くんの子供ならすぐにでもっていうのかと」
そういう気持ちは無いわけではないけど、それじゃ春さんに迷惑がかかると思う。
勿論妄想はしたけど、やっぱり、出来ない。
春さんが望むならなんて事も考えたけど、自分の冷静な部分が、それはもっと性質が悪い思考だと言っている。
これからの事を考えずに相手に選択肢を押し付け、自分は責任を負わない行動だと。
春さんは以前子供が出来ても構わないとは言ってくれたけど、それでもやっぱりきちんとするべきだと思う。
最低でも、二人で生活出来るまでは、子供は出来ない様に気を付けたい。
「少なくとも、子供産んで大丈夫な状況になるまでは、気を付けるよ」
「そっか。んー、まあ、お母さん的には明ちゃんが望むなら別に構わないんだけどね」
「本気?」
「本気本気。明ちゃんがそれで後悔しないならね」
「・・・そっか、そうだね。後悔しちゃ意味無いよね」
大事な人との大事な事だ。後悔するような事にはしたくない。
「忠告ありがとう、お母さん」
今回の事は、本当に私を想っての事なんだろう。
だから素直に礼を伝えておく事にした。
「どういたしまして! まあ別に色々ただれた生活を送る事自体は、お母さんニヤニヤ出来るから大歓迎なんだけどね!」
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