後藤家の日常

四つ目

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出かける目的

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「お待たせしました、春さん。行きましょうか」
「うん、いこっか」

家まで迎えに来てくれた春さんを少し待たせていたので、慌てて用意を済ませて外に出た。
慌てながらも日傘は忘れない。これを忘れると大変な事になる。

「で、約束のお出かけですが、お嬢様は何がご希望ですか?」
「春さんの方が余程お嬢様に見えると思いますけど」

少しお道化て聞いて来る春さんだけど、どう考えても貴方の方がお似合いな言葉だ。
お互いに苦笑しながら手を繋ぎ、駅に向かって歩を進める。
事前に遠出する事だけは伝えていた。

「で、本当に何しに行くの? 一応大目にお金は持って来てるけど」
「春さんの服を見に行きます」
「・・・はい?」

再度今日の内容を聞いてきた春さんに答えを返すと、彼は真顔で首を傾げた。
けどすぐに私のやりたい事に思い立ったのか、納得いった様子で頷いた。

「つまり俺に着せ替え人形になって欲しいって事かな」
「その・・・そうなります、ね」

もしかして気分を害してしまっただろうか。
最近可愛い格好をしてくれる事が増えたからと、調子に乗ってしまったかもしれない。
そう思っていたら、春さんは笑顔で私の手をちょっと強めに握った。

「ごめんごめん、良い方が悪かった。気にしてないから大丈夫だよ」
「・・・ほんとですか?」
「本当だよ。嫌なら嫌ってちゃんと言うよ。ちゃんと言いたいしね」

少し不安になって本心なのか聞き返すと、春さんは握った手を頬にあてながらそう言った。
その笑顔と行動に一瞬目を奪われたけど、すぐに正気に戻る。
あぶない、最近の春さんは本当に可愛くて堪らない。

「ありがとうございます」
「いえいえどーいたしまして」

お礼の言葉を口にすると、満面の笑みで返してくれる春さん。
思わず往来なのも忘れて抱きしめたくなる笑顔だ。

「あ、そうだ」
「どうしました?」

そこで春さんが何かを思いついた様に声を上げたので、何か有ったのかと尋ねる。
すると春さんは何時もの可愛い笑みとは違う、少しだけ意地悪そうな笑みを向けて来た。
最近偶に見る、私に少し意地悪をする時の顔だ。
その様子にちょと怯みながら、春さんの言葉を待つ。

「俺も明ちゃんの服見て良い?」
「私の服、ですか?」
「うん」
「別に構いませんが・・・」
「よっし、じゃあ今日は・・・時間無いかもしれないから後日かな」

とてもご機嫌そうに春さんは言い切ったが、私の体格を忘れていないだろうか。
こんな体格に会う服を置いている店は限られている。
でも楽しそうな春さんに水を差すのも悪いし、春さんの事だから何か考えが有るのかもしれない。




ただそんな事は、春さんに似合いそうな服を選ぶ事で完全に吹き飛んでしまった。
満足のいく一日でした。春さんは本当に何でも似合うなぁ・・・。
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