後藤家の日常

四つ目

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自分の番

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「そんな感じで、今年の誕生日もお父さんは相変わらずでした」
「毎年の事じゃん」
「拓也さん、あんまり物欲なさそうだもんね。普段の格好もシンプルだし」

今日は雛と春さんの二人が家に遊びに来ている。話題はこの間の誕生日の事だ。
結局お父さんにはいつも通り少しいい食材で夕食を出して、新しいスーツを贈った。
お母さんにはちゃんと何が食べたいのかを聞いて、次の休日は一日一緒に買い物に出かけたりもした。

「お母さんはともかく、お父さんは何が欲しいとかは言ってくれると嬉しいんですけどね」
「私新しい皮の上着欲しいー」
「雛、肌着以外は皮服しか着ないもんね」

雛は春夏秋冬問わず、制服と肌着以外は皮製品しか着ない。
そこにこだわりがあるのは解っているけど、夏は見ているだけで暑い。
勿論私の格好では人の事は言えないのだけど。

「でもそれは、明ちゃんも一緒じゃないかなぁ」
「そうですか?」
「だって、去年の明ちゃん、ほとんど同じ事言ってたよ?」
「明はポルノグッズ以外はあんまり興味が無いからねー。草野ッチには言えなかったっしょ」

確かに去年は春さんに聞かれた時は、春さんが祝ってくれるなら何でも良いですよと言った。
言葉にしてみればお父さんと同じだけど、内容はまるで違う。
あの頃のは私は、春さんに自分の本性を隠していたのだから。

「今年は何か欲しいものある?」
「そうですね・・・あると言えばありますが・・・」

新しい道具をこの間見つけたので有ると言えば有る。
けど誕生日の祝い事にそんな物を望むのはさすがにどうだろうか。

「明って貴金属類も化粧品も駄目だから、必然的に置物か実用品になるのよねー」
「そうだね、肌が負けるからね」

服の上につける様にすれば別だけど、基本的に貴金属類をつけると肌がやられる。
腕時計ですら長時間付けるとアウトだ。
なので私は身に着ける類の物は全て棚に仕舞っている。

ああそうだ、良い事を思いついた。
私の祝い事なのだから、私の楽しい事をお願いする物ありじゃないだろうか。

「それじゃ春さん、今度の休日に、一緒に買い物に付き合ってくれませんか?」
「ん、別に良いけど、何処に行くの?」
「それは・・・内緒です」
「ふーん。ま、いいや。了解」

良かった。春さんの了承は得られた。
どこまで行こうかな。近辺よりはもっと街に出た方が良いだろう。

「あたしは何贈ろうかねー。またカニでも贈ろうかー?」
「おま、同級生の誕生日のプレゼントにカニって・・・」
「あによう、良いじゃん別に。それとも何、草野ッチカニ嫌いなの?」
「いや、嫌いってわけじゃ無いけど・・・」

雛は昔から思いついた時にプレゼントを渡してくるタイプだ。
なので時によってびっくりする物を持ってくるときがある。
それが少し楽しみであったりもするのだけど、流石に生ハムの原木持って来た時は驚いた。

「楽しみにしてるよ、雛」
「うわー、プレッシャー。今回本当に面白い物見つけてないのよねー」

因みに私は雛の誕生日には新しい皮のパンツを贈った。
結構高いブランド物らしいけど、よく解らない。
贈った時雛が飛び上がって喜んでいたので良い物だとは思う。値段も凄かったし。

ああ、あれのせいで余計に悩んでるのかな・・・。
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