後藤家の日常

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本気の嫉妬

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「春さん、何だかボロボロですけど」

春さんがやって来た事で女子生徒の集団から解放されたのだが、春さんの姿は酷い物だった。
私と同じ様に衣服のボタンが全て無くなっており、そもそも上の制服も着ていなかった。
肌着が無ければ大分不味い格好だ。

「そういう明ちゃんこそ追剥ぎに合ったみたいになってるじゃない」

春さんの言う通り、私もボタンが一切無いので前が留まっていない。
それどころか袖やポケットについている物も持って行かれている。

「これ、付け直さないと校則違反になりますよね」
「袖とポケットは許されるんじゃない?」
「だと良いんですけど」

一応替えのボタンは貰っているので、帰ったら付け直そう。
裁縫が特に苦手という事が無くて良かった。
一通りお母さんに教えて貰っている事に感謝しないといけない。
あの人あんなだけど何でも出来るから、子供の頃は凄く尊敬してた気がする。子供の頃は。

「それにしても明ちゃん、大人気だったね」
「見てたんですか?」
「校舎から見えてたよ」
「そうでしたか。まさか私に好意を持ってくれてる方が居るとは思いませんでした」
「いやいや、明ちゃん学校では大人気じゃない」

私の言葉に、春さんは何を言っているのだとばかりに否定して来る。
けど私は怖がられている自覚はあっても、好かれているなどとは一切思っていなかった。
本当に今日は驚いた。

「春さんの方が人気じゃないですか。それこそ男女問わず」
「・・・そうみたいだね。何か凄く複雑な気分になったけど」
「そうなんですか?」
「いやさー、男に実は好きだった的な事言われても困るって。何て言っても傷つけるじゃん」

そこで相手の事を想える貴方は素敵だと思いますよ。
本来ならそんな事は関係なく、ただはっきりと断るだけでしょうし。
おそらく女の子達には優しく断ったんだろうな。

「・・・ん?」

そこでふと、春さんに首筋に目が行き、不可解なあざを見つけた。
それはまるで私が彼に付けた事がある物によく似たあざ。
何でそんな所にそんな物が?

「はるさん、それ、なんですか?」
「え、へ? え、ちょ、まさか跡残ってるの!? あいつ跡は付いて無いとか言ってたのに!」
「へぇ、跡が付く様な事してたんですか」

邪魔しないと誓った。彼女達の想いは尊重したいと思った。
けど、彼の首に残る物を見ていたら、腹の底からふつふつと黒い感情が浮かび上がってくる。
私の様子がおかしい事に気が付いた春さんは、慌てて口を開いた。

「ご、ごめん、この時皆女の子だったし、もみくちゃにされて、その、抵抗とか出来なくて」

わたわたと、詰まりながら言い訳を口にする春さん。
いや、言い訳ではなく事実なのだろう。
この人が女の子に手を上げるのを良しとはしないぐらい解る。
それでも、それが解っていても何だか許せなかった。

「春さんは私のですよ」
「へ、明ちゃ、ちょ、ここまだ通学路」
「知りません」
「ひゃっ!?」

跡が残る首に吸い付き、私のキスマークで上書きをする。
更に彼は私の物だとマーキングをする様に歯を立てた。
その間春さんは抵抗する事なく、可愛い声を漏らしながら我慢していた。
そして暫くして、嫉妬心がゆっくり薄れた事で正気に戻る。

「・・・すみません、調子に乗りました」
「い、いや、うん、俺もごめん」

道端で何をやっているのかと気が付き、恥ずかしさと申し訳なさ両方の気持ちで謝罪する。
彼も首を手で押さえながら、顔を赤くして謝って来た。

「か、帰りましょうか、春さん」
「う、うん」

春さんと一緒の幸せな帰り道なはずなのに、今日は目が合わせられなくなってしまった。
失敗した。嫉妬心って碌な事にならないな。
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