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教室の春輝
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「ねえ草野、彼女とは上手くいってんの?」
HRも終わって、帰る前に同級生達と学生最後の会話をしていると、そんな事を聞かれた。
その真意が何処に有るのかは解らないけど、質問に対する答えは決まっている。
「勿論」
俺の中ではそんな事は当然だし、上手く行かせないつもりはない。
それにこいつが明ちゃんに好意を持ってるとかなら、尚の事下手な態度は見せられない。
「うわー、はっきり。つっまんないの。あんた本当に見た目と動き以外は男前よね」
「そう思うならせめて最後の一年ぐらい男扱いしてくれよ」
「だってあんた可愛いもん。無理無理」
尚、今の俺は同級生に抱きかかえられている。
最後だからと色々許容したせいなのか、皆の距離感が普段より近い。
でも抱き着かれても動揺が殆ど無いのは、やっぱり俺の中で明ちゃんが特別なんだろうな。
「あたしさー、草野の事好きだったのよ?」
「初耳だ」
級友の一人が、唐突に小さな声でそんな事を言ってきた。
これには流石に驚いた。驚いたけど、過去形で言われてるっていう事はそういう事だよな。
「だって言ってないからね」
「何で今言ったんだよ」
「んー、何となく」
「ふーん・・・まあ、ありがとな」
「うわー、かーっこいー」
抱き着いていた級友は茶化した様に言って俺から離れて行ったが、それが本当に何となく言った事だとは思わない。
勿論本当にその通りの可能性だってあるけど、それでも言いたかった理由が有るはずだ。
だから俺は、好意を見せてくれた友人に礼を返すだけで終わらせておく。
俺にはそれ以上の事はしてやれない。
「おい草野。お前の彼女追い剥ぎにあってるぞ」
「は?」
窓から外を眺めていた級友に言われた事が一瞬理解出来ず、驚きながら俺も窓の外を見る。
すると女子生徒達が集団で明ちゃんに群がっていた。
何故か明ちゃんは制服のボタンが全て無くなっており、カッターのボタンも無くなっている。
「三年にも彼女のファン居たから、卒業だって事で暴走してるみたいね」
「いやー、凄いな。ちょっとしたアイドルみたいになってるな」
「彼女普段から目立つからね。あの長身に常に日傘だもん」
「でかいよなー。身長が大きいせいで解り難いけど、スタイル良いし胸も大きい。カッター脱げてるせいで今日はそれが良く解るな」
最後聞き捨てならない言葉が聞こえたので言った奴の胸ぐらを掴む。
女子生徒が言うなら許すが、男が言うのは許さん。明ちゃんを何て目で見てやがる。
「おい、お前、俺の前で明ちゃんの事何て言った。歯を食いしばれ」
「落ち着け草野!」
「そうだよ春ちゃん、ちょっと落ち着いて!」
俺の行動に他の同級生たちが慌てて止めに入る。
が、腕を押さえつけるのではなく、腕の向きだけを変えさせられた。
「やるなら腹にしておけ! 顔は目立つ!」
「そうだよ、顔やったら色々困るよ!」
「おーけー」
「お前ら止めるんじゃないのかよ! 草野もオーケーじゃねえって、悪かったって!」
俺達の様子に本気で慌てて謝って来たので手を放し、握っていた拳も開く。
元々本気で殴る気は無い。ただのじゃれ合いだ。・・・ちょっとだけマジだったけど。
「お前さ、そんなんだから彼女出来ないんだよ」
「うるせえな、俺は一年の時にトラウマが出来たんだよ」
「は、何だそれ」
指をさされて言われた言葉に、何故刺されているのか解らずに問い返す。
すると今度は周囲の男共から声が上がった。
「お前だよお前。お前が可愛いせいで勘違いしたの」
「あー、お前も犠牲者だったのか」
「解る解る。見た目と動作が可愛い上に、距離感が近くて気さくだから勘違いするんだよな」
「本当に男だと知った時の絶望感よ」
「マジ酷いよなー。それなのに女子生徒とは仲が良いし」
「男にトラウマ植え付け、女子生徒とイチャイチャして、その上可愛い彼女作ってさー」
「こいつ本当に酷い奴だよな」
「死ね」
教室に残って居る男連中全員に何故か責められている。
勘違いって、俺は最初からずっと男だって言ってただろうが。
それに最後のは完全にただの罵倒だろ。
「もてない男の僻みはカッコ悪いねー」
「ほんとほんと」
「大体春ちゃん程可愛い子なら男でも別に良いじゃない」
「いや、あんた、それはちょっと何かが間違ってると思うけど」
女子共は女子共で好き勝手言ってくれるな。
まあこんな連中だから、高校三年間楽しかったわけだが。
こんな変な奴を普通に受け入れてくれたからな。
「あ、ごめん、俺行かないと」
時計を見て、出なきゃいけない時間だと気が付く。
なんだかんだ最後だとの思いも有ってか、思ったより長居をしてしまった。
「彼女の所?」
「いや、その前にちょっと用が有るんだ。それ済ませたら明ちゃんの所に行く」
「そ、じゃあ、またね」
「おう、またなー」
級友たちに手を振って、教室を出る。
今度会う日は遠いか近いか解らないが、今の面子はまたそう遠すぎないうちに合うだろう。
だから今は、もう二度と会わないであろう子達への約束を守りに行く。
俺を呼び出した子達に会いに。
さーて、最後だからって襲撃されるのかな。
女の子相手に手を上げるのはやりたくないから、出来る事なら穏便に済ませて欲しいなぁ。
HRも終わって、帰る前に同級生達と学生最後の会話をしていると、そんな事を聞かれた。
その真意が何処に有るのかは解らないけど、質問に対する答えは決まっている。
「勿論」
俺の中ではそんな事は当然だし、上手く行かせないつもりはない。
それにこいつが明ちゃんに好意を持ってるとかなら、尚の事下手な態度は見せられない。
「うわー、はっきり。つっまんないの。あんた本当に見た目と動き以外は男前よね」
「そう思うならせめて最後の一年ぐらい男扱いしてくれよ」
「だってあんた可愛いもん。無理無理」
尚、今の俺は同級生に抱きかかえられている。
最後だからと色々許容したせいなのか、皆の距離感が普段より近い。
でも抱き着かれても動揺が殆ど無いのは、やっぱり俺の中で明ちゃんが特別なんだろうな。
「あたしさー、草野の事好きだったのよ?」
「初耳だ」
級友の一人が、唐突に小さな声でそんな事を言ってきた。
これには流石に驚いた。驚いたけど、過去形で言われてるっていう事はそういう事だよな。
「だって言ってないからね」
「何で今言ったんだよ」
「んー、何となく」
「ふーん・・・まあ、ありがとな」
「うわー、かーっこいー」
抱き着いていた級友は茶化した様に言って俺から離れて行ったが、それが本当に何となく言った事だとは思わない。
勿論本当にその通りの可能性だってあるけど、それでも言いたかった理由が有るはずだ。
だから俺は、好意を見せてくれた友人に礼を返すだけで終わらせておく。
俺にはそれ以上の事はしてやれない。
「おい草野。お前の彼女追い剥ぎにあってるぞ」
「は?」
窓から外を眺めていた級友に言われた事が一瞬理解出来ず、驚きながら俺も窓の外を見る。
すると女子生徒達が集団で明ちゃんに群がっていた。
何故か明ちゃんは制服のボタンが全て無くなっており、カッターのボタンも無くなっている。
「三年にも彼女のファン居たから、卒業だって事で暴走してるみたいね」
「いやー、凄いな。ちょっとしたアイドルみたいになってるな」
「彼女普段から目立つからね。あの長身に常に日傘だもん」
「でかいよなー。身長が大きいせいで解り難いけど、スタイル良いし胸も大きい。カッター脱げてるせいで今日はそれが良く解るな」
最後聞き捨てならない言葉が聞こえたので言った奴の胸ぐらを掴む。
女子生徒が言うなら許すが、男が言うのは許さん。明ちゃんを何て目で見てやがる。
「おい、お前、俺の前で明ちゃんの事何て言った。歯を食いしばれ」
「落ち着け草野!」
「そうだよ春ちゃん、ちょっと落ち着いて!」
俺の行動に他の同級生たちが慌てて止めに入る。
が、腕を押さえつけるのではなく、腕の向きだけを変えさせられた。
「やるなら腹にしておけ! 顔は目立つ!」
「そうだよ、顔やったら色々困るよ!」
「おーけー」
「お前ら止めるんじゃないのかよ! 草野もオーケーじゃねえって、悪かったって!」
俺達の様子に本気で慌てて謝って来たので手を放し、握っていた拳も開く。
元々本気で殴る気は無い。ただのじゃれ合いだ。・・・ちょっとだけマジだったけど。
「お前さ、そんなんだから彼女出来ないんだよ」
「うるせえな、俺は一年の時にトラウマが出来たんだよ」
「は、何だそれ」
指をさされて言われた言葉に、何故刺されているのか解らずに問い返す。
すると今度は周囲の男共から声が上がった。
「お前だよお前。お前が可愛いせいで勘違いしたの」
「あー、お前も犠牲者だったのか」
「解る解る。見た目と動作が可愛い上に、距離感が近くて気さくだから勘違いするんだよな」
「本当に男だと知った時の絶望感よ」
「マジ酷いよなー。それなのに女子生徒とは仲が良いし」
「男にトラウマ植え付け、女子生徒とイチャイチャして、その上可愛い彼女作ってさー」
「こいつ本当に酷い奴だよな」
「死ね」
教室に残って居る男連中全員に何故か責められている。
勘違いって、俺は最初からずっと男だって言ってただろうが。
それに最後のは完全にただの罵倒だろ。
「もてない男の僻みはカッコ悪いねー」
「ほんとほんと」
「大体春ちゃん程可愛い子なら男でも別に良いじゃない」
「いや、あんた、それはちょっと何かが間違ってると思うけど」
女子共は女子共で好き勝手言ってくれるな。
まあこんな連中だから、高校三年間楽しかったわけだが。
こんな変な奴を普通に受け入れてくれたからな。
「あ、ごめん、俺行かないと」
時計を見て、出なきゃいけない時間だと気が付く。
なんだかんだ最後だとの思いも有ってか、思ったより長居をしてしまった。
「彼女の所?」
「いや、その前にちょっと用が有るんだ。それ済ませたら明ちゃんの所に行く」
「そ、じゃあ、またね」
「おう、またなー」
級友たちに手を振って、教室を出る。
今度会う日は遠いか近いか解らないが、今の面子はまたそう遠すぎないうちに合うだろう。
だから今は、もう二度と会わないであろう子達への約束を守りに行く。
俺を呼び出した子達に会いに。
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