後藤家の日常

四つ目

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アンハッピー

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「春さん、今日はお店ですか?」
「ん、ああ、イベント時期だからね。今年もオッサン連中に愛想振りまいてチョコ配りだよ」
「子供の頃からやってるんでしたっけ」
「正直うんざりなんだけどねー。チョコぐらい買って食えって」

バレンタイン当日、何気なく話題を振ったら、とてもチョコを渡し難い話題に話になった
どうしよう、一応何とか美味しいと思えるチョコレート作れたんだけど、渡して良いのかな。
念の為ケーキも作っている。
学校に持って来ても会えるかどうか解らなかったので、両方とも家に有るけど。

「俺甘い物嫌いじゃないけど、この時期のチョコレートだけは滅べって思う」
「そう、ですか」

これは、チョコレートは家に封印かな。お母さんにでもあげよう。
欲しくない人にあげても、ただの嫌がらせにしかならないし、それで良いだろう。

「明ちゃんもそうでしょ?」
「あー・・・バイト先ですか。今日は休みなので、私が行く日に何故か配る事になってます」
「お互い客商売は面倒くさいよねー」
「そうですね、こういう時は、ちょっと面倒だなと思います」

私の今思っている面倒は、別の方向だけど。でも今回ばかりはしょうがない。
お母さんに乗せられたのは私だし、私が良かれという事を春さんが良いと思うとは限らない。
こういうすれ違いは許容しなければ。

「明ちゃん、イベント事とかあんまり興味ないから、余計に面倒でしょ」
「そうですね、母にも良くもうちょっと楽しもうと言われます」
「あはは、咲さんは楽しむ事に全力だもんね」

お母さんなら全力で楽しんで「頑張って作ったんだよ!」なんて言って渡すんだろう。
普段は気に食わないと思う事も多いけど、こういう時はお母さんの素直さが羨ましい。
勿論前よりは彼とは素直に話しているとは思うけど、流石に事前に嫌だと聞いている事に踏み込む勇気は出ない。

「ん?」

そこで春さんの携帯から音が鳴り、彼はその内容を確かめる。
けしてそれを覗き見る様な事はしない。彼氏彼女でもその辺の分別は在るべきだ。
特に仕事をしている人なら、守秘義務も有るのだから。

「・・・明ちゃん、今日の夜時間ある?」
「夜ですか?」
「うん、仕事終わった後になるけど」
「全く構いませんよ」

何も予定は無いし、春さんが来る事は歓迎しかない。
そのまま泊って行っても良いと思う。
・・・どうせならそこは誘ってみようかな。一緒に寝たい。
春さんを抱きしめながら寝た翌日は、とても幸せな気分で起きられる。

「じゃあ、家まで送ったら、また後でね」
「はい、解りました」

そして彼は私を家に送り終えると、急ぎ足、どころか走って帰って行った。
私を送っている間は普通だったのだけど、急ぎの連絡だったのかな。
ちょっと申し訳ない事をしてしまったかもしれない。
夜に来た時に、急ぎの時は気にしないで欲しいとちゃんと伝えておこう。
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