後藤家の日常

四つ目

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お伺い

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「春さん、そろそろ卒業式ですけど、私行っても構いませんか?」

最近何故か多い帰り道のお迎えに喜びながら、彼に卒業式の事を訊ねる。
私に来られても迷惑かもしれないし、一応聞いておきたい。
ただ聞いても、春さんは良いよと言う気しかしないけど。

「別に良いけど、むしろ何で駄目だと思ったの?」
「いえ、迷惑かなと思い」
「あはは、彼女が来るのに何で迷惑なのさ。明ちゃん相変わらず変な所で気を遣うね」
「そうですか」

私の言葉を笑い飛ばす春さん。けど一応真剣に聞いたつもりだった。
彼は彼でやりたい事も有るだろうし、クラスメイトとの別れも有る。
その場に私が居ては気を遣ってしまって、そちらに行けないのではと。

もちろんそれ以外にもあるけども、それらの様々な要因全てを含んでの疑問だった。
けど春さんはそれら一切を気にしないと言った。
なら、甘えてしまっても、良いか。

「じゃあ、当日にお祝いに行きますね」
「解った。待ってるよ」

お祝いだし、何か贈り物でもした方が良いかな。
春さんはきっと、卒業おめでとうと言うだけで喜んでくれる。
それは間違いないのだけど、折角なので何かしたい。

けどおそらく、これは聞いても春さんから良い返事は聞けないだろう。
おめでとうと君が言ってくれればいいよ、何て言うのが目に浮かぶ。
一応試しに聞いてみようか。

「春さん、当日何かして欲しい事とかありますか?」
「んー? 明ちゃんが祝いに来てくれたらそれで良いよ」

やっぱり。この人はこういう人だ。欲が無いというか、要求が無いというか。
基本的に「何かをして」とは言わない人なので、何かしたければこちらからだ。
別にそれが嫌なわけでは無いけど、お祝いしたいという時は何か我が儘を言って欲しいと思う。

・・・私が我が儘を言い過ぎな気がしなくもないけど、それはこの際置いておこう。
最近は春さんも私に意地悪をするのだから、関係はきっとイーブンなはずだ。
いや、むしろ最近は春さんが攻めて来る事が多い。翻弄されてばかりな気がする。

とりあえず今は思いつかないので、素直に伝えておこう。

「じゃあ、当日までに何か考えておきます」
「あはは、じゃあ楽しみにしてるね」

そして彼は、要求が無いからと言って、此方のやる事を拒否しているわけじゃ無い。
この通り喜んでくれる。問題は何しても喜ばれてしまう事だ。
余計に何をしたらいいのか迷う。

実際どうしようかな。春さんが喜ぶ事って何だろう。
困った事に本当に何してもこの人喜ぶので、特別何かって思いつかない。
普通なら嫌な顔の一つも有って良いのに、された覚えがない。

けどその点を考えると、私も春さん相手だと何でも良いので、お互い様なのかも。
多分春さんがくれたなら、それこそ余程のごみでなければ要らないとは思わない。
いや、彼がそんなもの渡してくるとは思わないけども。

さて、本当に何しようかな・・・。
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