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近況報告
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「で、久々に怒られたんだ」
「うん。何年ぶりだったか、お母さんが怖かったよ」
「あっはっは、咲さん普段可愛いもんねぇ」
昼休みにこの間有った出来事を雛に話すと、愉快気に雛は笑う。
私としては本当に怖かったので、まだ笑い飛ばせない。思い出すとまだちょっと怖い。
「私は普段からああいいう真面目なお母さんで居てくれた方が良いけどね」
あのお母さんは怖いけど、何時もあの調子ならお母さんはかなり真面目な事になる。
というか、あれが出来るなら普段から真面目にやれるはずなんだ。
ふざけてメイド服とかナース服とかセーラー服とか着て出かけたりはしない筈だ。
「あー、多分無理じゃん?」
だが私の言葉を、雛はあっさり否定した。
私もそれは解っているので、その否定に落胆はしていない。
お母さんはああいう人で、普段から真面目を望むのは無理だ。
「解ってるけどね。お母さんわざとふざけてる時あるし」
「そーそー。咲さん寂しがり屋だもん。真面目にやってたら明に構ってもらえないし、絶対無理だって」
「別にそんな事しなくても普段の世話はするけどね」
「それがつまんないから、あの人ああなんじゃん。明って基本は静かだし」
確かに私は雛の言う通り、構われないと基本的には静かだ。
そういえばお母さんがふざけ始めたのは、何時頃だっただろうか。
物心ついた時にはもうあの調子だったと思う。
「それに、明だってなんだかんだ咲さんに構ってもらえるのは嬉しそうだし」
「・・・私はそんな事無いけど」
「どうだか」
にしし、という感じで笑う雛に不満げに返す。
だが雛は気にした様子もなく、もっといやらしい笑みを向けて来た。
それじゃまるで、私がお母さんに構って欲しいみたいじゃないか。
「私は大人しいお母さんで良いよ」
「ふーん」
「ニヤニヤしないでよ」
「おっと、ごめんよ」
それでも雛はにやにやと笑うのを止めなかった。
何だか気まずい。話題を変えよう。と言っても何を話そうか。
そうだ、雛こそ最近彼氏や親御さんとはどうしているんだろうか。
「雛、最近空也さんとはどうなの?」
「んー、相変わらずよ~。だーってあの人約束守る気満々だしさぁ、親父はうっざいしさぁ」
「雛は本当にお父さんに厳しいね」
「別に親父の事は嫌いじゃないんだけど、面倒なのよね。あ、感謝はしてるし恩も感じてんのよ? ここまで育てて貰ったわけだしさぁ」
本当に心の底からうんざりした顔で言う雛だが、言葉の通り仲が悪いわけではない。
ただ雛のお父さんが、雛を好きすぎるだけだ。
まあ一人娘を持つ親なんて、大体そんな物だと思う。
・・・うちの家が、ちょっと、特殊なだけで。
「明は良いよねー、ラッブラブでさぁ」
「うん」
「照れもせず言ったよこの人」
「最近はそうでないとむしろ不安かな」
「はいはい、ほんとあんたらお互いに大好きだね。全く羨ましい」
「雛だって仲は良いじゃない」
空也さんは雛を大事にしているし、先の事も考えている。
下手すると、今の幸せを見ている私達よりも、彼の方がよっぽど雛を愛している。
そう思うぐらい大事にしていると思うのだけど、雛はやっぱり不満なんだろうな。
「もうちょっとさ、相手から求められたいわけよ、あたしは」
「でも、無理でしょ」
「なーのよねー。その上あたしがわがまま言うと、大抵聞いてくれちゃうし」
「優しいよね、空也さん」
「いーや、あの人は絶対ねっこはどSだって」
「そ、そうかな」
人の良い優しい人にしか見えないんだけど。恋人にしか解らない機微が有るのかな。
そういう意味では春さんも、意地悪な部分が有るのは最近解ってきてるけど。
前はとにかく優しい先輩だったけど、最近は揶揄われる事も増えた。
それが心地いいからなすがままになってしまうのだけど。
「はぁ、あと二年かぁ」
「正確には二年と少しいるけどね。あと今年は受験だからまだましでしょ」
「受験なんざで時間過ぎるのが速く感じる程劣等生じゃないんですぅ!」
うーん、雛も色々溜まってるなぁ。
傍から見てると二人の空気は、それこそお父さんとお母さんみたいで素敵なんだけどな。
お互いがお互いに、そこに居る事が当たり前だという空気。
私もそうだったけども、やっぱりこういうのは本人には解らないんだろうな。
「うん。何年ぶりだったか、お母さんが怖かったよ」
「あっはっは、咲さん普段可愛いもんねぇ」
昼休みにこの間有った出来事を雛に話すと、愉快気に雛は笑う。
私としては本当に怖かったので、まだ笑い飛ばせない。思い出すとまだちょっと怖い。
「私は普段からああいいう真面目なお母さんで居てくれた方が良いけどね」
あのお母さんは怖いけど、何時もあの調子ならお母さんはかなり真面目な事になる。
というか、あれが出来るなら普段から真面目にやれるはずなんだ。
ふざけてメイド服とかナース服とかセーラー服とか着て出かけたりはしない筈だ。
「あー、多分無理じゃん?」
だが私の言葉を、雛はあっさり否定した。
私もそれは解っているので、その否定に落胆はしていない。
お母さんはああいう人で、普段から真面目を望むのは無理だ。
「解ってるけどね。お母さんわざとふざけてる時あるし」
「そーそー。咲さん寂しがり屋だもん。真面目にやってたら明に構ってもらえないし、絶対無理だって」
「別にそんな事しなくても普段の世話はするけどね」
「それがつまんないから、あの人ああなんじゃん。明って基本は静かだし」
確かに私は雛の言う通り、構われないと基本的には静かだ。
そういえばお母さんがふざけ始めたのは、何時頃だっただろうか。
物心ついた時にはもうあの調子だったと思う。
「それに、明だってなんだかんだ咲さんに構ってもらえるのは嬉しそうだし」
「・・・私はそんな事無いけど」
「どうだか」
にしし、という感じで笑う雛に不満げに返す。
だが雛は気にした様子もなく、もっといやらしい笑みを向けて来た。
それじゃまるで、私がお母さんに構って欲しいみたいじゃないか。
「私は大人しいお母さんで良いよ」
「ふーん」
「ニヤニヤしないでよ」
「おっと、ごめんよ」
それでも雛はにやにやと笑うのを止めなかった。
何だか気まずい。話題を変えよう。と言っても何を話そうか。
そうだ、雛こそ最近彼氏や親御さんとはどうしているんだろうか。
「雛、最近空也さんとはどうなの?」
「んー、相変わらずよ~。だーってあの人約束守る気満々だしさぁ、親父はうっざいしさぁ」
「雛は本当にお父さんに厳しいね」
「別に親父の事は嫌いじゃないんだけど、面倒なのよね。あ、感謝はしてるし恩も感じてんのよ? ここまで育てて貰ったわけだしさぁ」
本当に心の底からうんざりした顔で言う雛だが、言葉の通り仲が悪いわけではない。
ただ雛のお父さんが、雛を好きすぎるだけだ。
まあ一人娘を持つ親なんて、大体そんな物だと思う。
・・・うちの家が、ちょっと、特殊なだけで。
「明は良いよねー、ラッブラブでさぁ」
「うん」
「照れもせず言ったよこの人」
「最近はそうでないとむしろ不安かな」
「はいはい、ほんとあんたらお互いに大好きだね。全く羨ましい」
「雛だって仲は良いじゃない」
空也さんは雛を大事にしているし、先の事も考えている。
下手すると、今の幸せを見ている私達よりも、彼の方がよっぽど雛を愛している。
そう思うぐらい大事にしていると思うのだけど、雛はやっぱり不満なんだろうな。
「もうちょっとさ、相手から求められたいわけよ、あたしは」
「でも、無理でしょ」
「なーのよねー。その上あたしがわがまま言うと、大抵聞いてくれちゃうし」
「優しいよね、空也さん」
「いーや、あの人は絶対ねっこはどSだって」
「そ、そうかな」
人の良い優しい人にしか見えないんだけど。恋人にしか解らない機微が有るのかな。
そういう意味では春さんも、意地悪な部分が有るのは最近解ってきてるけど。
前はとにかく優しい先輩だったけど、最近は揶揄われる事も増えた。
それが心地いいからなすがままになってしまうのだけど。
「はぁ、あと二年かぁ」
「正確には二年と少しいるけどね。あと今年は受験だからまだましでしょ」
「受験なんざで時間過ぎるのが速く感じる程劣等生じゃないんですぅ!」
うーん、雛も色々溜まってるなぁ。
傍から見てると二人の空気は、それこそお父さんとお母さんみたいで素敵なんだけどな。
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