後藤家の日常

四つ目

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寂しい昼

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「・・・明、そういう顔されると流石にあたしも傷つくわー」
「私、どんな顔してた?」

昼休み、雛と一緒に食事をしていたら、唐突にそんな事を言われた。
自分ではどういう表情をしていたのか自覚がなかったので、素直に訊ねる。
というか、家族と雛以外は私の表情変化はそこまで解らないと思う。
春さんも解り易い表情以外は解らないみたいだし。

「そうね『あー、彼氏居なくて寂しいー。膝の上がつめたーい』って感じ?」
「何で知ってるの、雛」

自分の表情の事よりも、膝の上に春さんを乗せていた事を知っている事実に驚く。
いや、家出はそういう事をしている事は言っているけど、昼にまでやってるとは言ってない。
そもそも雛が居ない時にだけやっていたのに。

「だって見たもん。あたしがちょっと遅れたからってさー、膝に乗せて楽しそうにさぁ」
「声かけてくれたら良いのに」
「明、逆の立場だったらどうする?」
「そのまま帰る」
「でしょうが」

そうか、見られてしまっていたのか。親友にあの場を見られたのは、少しだけ恥ずかしい。
お母さん相手なら特に何ともないんだけど、雛相手はちょっと恥ずかしいな。
お父さんの前では流石に出来ない。春さんのお父さんとお姉さんの前でもちょっと。

「ま、それも学校ではもう出来ないね」
「そうだね、三年生だからね」

三年生はもう、授業なんて補習に出ないと駄目な人しか来ていない。
勿論推薦で大学に入った様な人が来るわけがない。つまり春さんは学校に来ていない。
楽しかった昼休みは無くなってしまったわけだ。

「彼氏に会えない寂しさを味わえばいいのだー」
「雛は殆ど空也さんの家に行ってるじゃない」
「まあねー。正直今の所引き払って空也さんとこに住み込みたいんだけどねぇ」
「その方が良いんだろうけどね」

雛が住んでる所は安い所だとは知ってるけど、それでも家に一人暮らしの維持費っていうのは安くはない。
空也さんに前訊ねたら、住む事自体は許可をくれたらしいので、そこは問題ない。
というか、しょっちゅう泊りに行っているので、住んでるのとほぼ変わらない。

「親父がごねなきゃなぁ。結局事実は変わんねえってのに」
「雛が可愛いんだよ」
「こーんな不良娘のどっこが良いのか」

不良娘ね。雛の素行はそんなに悪くはないのだけど。
悪い所が在るとすれば、頭髪ぐらいだろう。
目が痛くなるほどの金髪。プリン状態になった所も殆ど見かけた事が無い。
常にキレイに金髪にしている。

「雛って、髪染めてるのに綺麗だよね」
「はっは、何やら髪質が強いらしくてね。あんまり痛まないんだわこれが。流石に全くってのは無理だけどね」
「そうなんだ、初めて知った」
「始めて髪染めた時も『雛、綺麗に染めたね』しか言わなかったもんね、明」

だって似合っているし。明るくてかわいい雛には、明るい髪はとても似合っている。
それに普段の服装を合わせると、どこかのモデルかの様だ。
道着と制服と肌着以外は、雛の服は皮服しかない。

偶に可愛い服も来ているけど、そういうのはたいてい空也さんの所に行く時だ。
その服も私物じゃなくて、空也さんの実家のお母さんに贈られた服らしい。

「・・・大分話ずれたね」
「そうね。まあ普段通りっしょ」
「確かに」
「ま、今年はもう諦めて雛ちゃんに付き合いなさいな」
「あはは、どっちが付き合ってくれてるのかな、それは」
「さってねー」

雛には私以外の友人や、雛を慕う後輩なんかも居る。
付き合うという意味では、付き合ってもらっているのは私だろう。
・・・うん、春さんが居ないのは寂しいけど、雛が居ればそこまで寂しくないか。
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