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初詣の後の
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「春輝ー、もう上がって良いよー」
「はぁーい、おつかれさまでぇーっす」
親父の言葉に応え、皆より一足先に上がらせて貰う。
そそくさと家に戻り、携帯を取り出す。
『今終わったよ。準備していくからもう少し時間かかると思う』
明ちゃんにメッセージを送って、先ず化粧を落としに行く。
仕事用の化粧を落としたら、今度は出かけようの化粧をし直す。
ちゃんと色んな角度で出来を確認して、良しと頷いて部屋に戻る。
そこで一度形態を確認すると、明ちゃんからメッセージが届いていた。
『では今からそちらに向かいます』
家からここまでだと、どれぐらいだったか。
でもそんなにすぐには来れないだろうから、着替える時間はあるはずだ。
桐の箱に入った着物を取り出し、一応定期的に見てるから大丈夫だとは思うけど様子を確認。
長襦袢を来て、振袖の着物を羽織り、帯を締める。
これは柄のほぼ無いシンプルな赤の着物だが、色合いが鮮やかなのでそれで良いと思っている。
その代わり帯は鮮やかな桜柄だ。
冬に着るものではないのかもしれないが、これしか無いので仕方ない。
根付は何にしようか。帯に会う物が良いんだけども。
何て悩んでいると、呼び鈴が鳴った。
まさか明ちゃんもう来たのだろうか。家から来たにしては早い。
とりあえず無視するわけには行かないので、玄関まで出る。
「はぁーいどちら様でしょうかー」
「春さん、私です。明です」
もしかしたら店側の関係者かもしれないので、仕事モードで声をかける。
すると帰って来たのは明ちゃんの声。
彼女は普段通りの肌の見えない格好で、玄関前に立っていた。
上着はロングコートか。背の高い明ちゃんにはとても映える。
「あけましておめでとう、明ちゃん。少しだけ待ってくれるかな、髪セットしてなくて」
「・・・」
「明ちゃん?」
「っ、あ、はい。上がらせて頂きますね」
真顔で固まった彼女に声をかけると、はっと正気に戻ったような感じで返事を返してきた。
この格好、明ちゃん的には良い物なのか。
ちょっと満足気分で部屋に戻り、明ちゃんの視線を感じながら髪をセットする。
それが終わったら、彼女を待たせるのもどうかと思い根付を選ぶのは諦める。
「さて、行こうか明ちゃん」
「はい。春さん、今日は髪は長いままなんですね」
「着物だとこっちの方が似合うでしょ?」
「似合ってますけど、普段の髪型でも可愛いですよ」
明ちゃんらしい返しだ。
自惚れでも何でもなく、明ちゃんはどんな俺でも可愛いって思ってるからなぁ。
最近はその辺は流石に自覚している。しているからこそこうやって楽しませてるんだけど。
「ありがとう、明ちゃん。さ、行こうか」
「はい」
明ちゃんの手を取って、用意しておいた下駄を履いて外に出る。
彼女は一応日傘を持って来ている様だ。
一応日が出る前に帰る気だけど、何が有るか解らないからね。
手を繋ぎながら、近くの神社まで行く。
この辺りはそこまで都会では無いので、ごった返すほどの人は居ないけどそこそこ多い。
はぐれない様にしっかりと手を掴み―――いや、これはただの言い訳だな。
彼女とはぐれるって、どう考えても無理だもん。
普通に頭が飛びぬけてるから、俺が見つけるのは容易だ。
なので仲良く手を繋いでお参りに行く。そして人の列に並んで順番を待つ。
彼女と他愛もない雑談をしながらだと、退屈な順番待ちもあっという間だった。
「明ちゃん、お賽銭持って来てる?」
「はい、ありますよ」
俺達はお互いにお賽銭を確認し、さい銭箱に投げる。
そして挨拶とお祈りをして、その場をさっと離れた。
「明ちゃんは何をお願いしたの?」
「春さんと一緒に居られるようにです」
「あはは、じゃあ同じだ」
完全にバカップルな会話をしながら、てくてくと神社を後にする。
少し離れただけで人の数が減り、しばらく歩くと全くと行って良い程人が居なくなる。
静かな夜の街を、彼女と手を繋いで歩く。そこで不意に、彼女に手を引かれた。
「明ちゃ―――」
彼女が立ち止まった場所を確認して、俺は一瞬固まってしまう。
けどすぐに気を取り直し、彼女の手を握り返す。
彼女のしたい事に肯定の意味を込めて。
「行こっか」
「は、はい」
そして俺は恥ずかしそうに顔をそむける彼女の手を引いて、先に向かう。
彼女が立ち止まった真横に在った、ラブホテルの中へ。
財布には結構な額が入っているし、おそらくお金は問題ない。
問題は帰った後、親父に年始仕事がまだあるんだよと怒られる事ぐらいだろう。
でも今はそれよりも、彼女の願いを叶える事しか俺の頭には無かった。
「はぁーい、おつかれさまでぇーっす」
親父の言葉に応え、皆より一足先に上がらせて貰う。
そそくさと家に戻り、携帯を取り出す。
『今終わったよ。準備していくからもう少し時間かかると思う』
明ちゃんにメッセージを送って、先ず化粧を落としに行く。
仕事用の化粧を落としたら、今度は出かけようの化粧をし直す。
ちゃんと色んな角度で出来を確認して、良しと頷いて部屋に戻る。
そこで一度形態を確認すると、明ちゃんからメッセージが届いていた。
『では今からそちらに向かいます』
家からここまでだと、どれぐらいだったか。
でもそんなにすぐには来れないだろうから、着替える時間はあるはずだ。
桐の箱に入った着物を取り出し、一応定期的に見てるから大丈夫だとは思うけど様子を確認。
長襦袢を来て、振袖の着物を羽織り、帯を締める。
これは柄のほぼ無いシンプルな赤の着物だが、色合いが鮮やかなのでそれで良いと思っている。
その代わり帯は鮮やかな桜柄だ。
冬に着るものではないのかもしれないが、これしか無いので仕方ない。
根付は何にしようか。帯に会う物が良いんだけども。
何て悩んでいると、呼び鈴が鳴った。
まさか明ちゃんもう来たのだろうか。家から来たにしては早い。
とりあえず無視するわけには行かないので、玄関まで出る。
「はぁーいどちら様でしょうかー」
「春さん、私です。明です」
もしかしたら店側の関係者かもしれないので、仕事モードで声をかける。
すると帰って来たのは明ちゃんの声。
彼女は普段通りの肌の見えない格好で、玄関前に立っていた。
上着はロングコートか。背の高い明ちゃんにはとても映える。
「あけましておめでとう、明ちゃん。少しだけ待ってくれるかな、髪セットしてなくて」
「・・・」
「明ちゃん?」
「っ、あ、はい。上がらせて頂きますね」
真顔で固まった彼女に声をかけると、はっと正気に戻ったような感じで返事を返してきた。
この格好、明ちゃん的には良い物なのか。
ちょっと満足気分で部屋に戻り、明ちゃんの視線を感じながら髪をセットする。
それが終わったら、彼女を待たせるのもどうかと思い根付を選ぶのは諦める。
「さて、行こうか明ちゃん」
「はい。春さん、今日は髪は長いままなんですね」
「着物だとこっちの方が似合うでしょ?」
「似合ってますけど、普段の髪型でも可愛いですよ」
明ちゃんらしい返しだ。
自惚れでも何でもなく、明ちゃんはどんな俺でも可愛いって思ってるからなぁ。
最近はその辺は流石に自覚している。しているからこそこうやって楽しませてるんだけど。
「ありがとう、明ちゃん。さ、行こうか」
「はい」
明ちゃんの手を取って、用意しておいた下駄を履いて外に出る。
彼女は一応日傘を持って来ている様だ。
一応日が出る前に帰る気だけど、何が有るか解らないからね。
手を繋ぎながら、近くの神社まで行く。
この辺りはそこまで都会では無いので、ごった返すほどの人は居ないけどそこそこ多い。
はぐれない様にしっかりと手を掴み―――いや、これはただの言い訳だな。
彼女とはぐれるって、どう考えても無理だもん。
普通に頭が飛びぬけてるから、俺が見つけるのは容易だ。
なので仲良く手を繋いでお参りに行く。そして人の列に並んで順番を待つ。
彼女と他愛もない雑談をしながらだと、退屈な順番待ちもあっという間だった。
「明ちゃん、お賽銭持って来てる?」
「はい、ありますよ」
俺達はお互いにお賽銭を確認し、さい銭箱に投げる。
そして挨拶とお祈りをして、その場をさっと離れた。
「明ちゃんは何をお願いしたの?」
「春さんと一緒に居られるようにです」
「あはは、じゃあ同じだ」
完全にバカップルな会話をしながら、てくてくと神社を後にする。
少し離れただけで人の数が減り、しばらく歩くと全くと行って良い程人が居なくなる。
静かな夜の街を、彼女と手を繋いで歩く。そこで不意に、彼女に手を引かれた。
「明ちゃ―――」
彼女が立ち止まった場所を確認して、俺は一瞬固まってしまう。
けどすぐに気を取り直し、彼女の手を握り返す。
彼女のしたい事に肯定の意味を込めて。
「行こっか」
「は、はい」
そして俺は恥ずかしそうに顔をそむける彼女の手を引いて、先に向かう。
彼女が立ち止まった真横に在った、ラブホテルの中へ。
財布には結構な額が入っているし、おそらくお金は問題ない。
問題は帰った後、親父に年始仕事がまだあるんだよと怒られる事ぐらいだろう。
でも今はそれよりも、彼女の願いを叶える事しか俺の頭には無かった。
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