後藤家の日常

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普段と少し違う登校

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「ふーん、楽しかったみたいねぇ」
「うん、凄く楽しかったよ」

いつもの通学路を世間話をしながら歩く。
ただ今日はいつもと違い、雛が一緒だ。
雛の家は反対方向にあるので一緒に居る事は稀なのだけど、偶にこういう日がある

「坂本ってどこに住んでんだ?」
「家」
「・・・お前、本当に俺の事嫌いな」

春さんの質問に物凄く適当に答える雛。
それでも春さんは怒る様子なく、片眉を少し上げただけで終わる。

「何を今更。あたしの大好きな明を取ったあんたの事なんか嫌いですよーだ」
「雛は大事な友達だよ?」

春さんに取られたというけど、そこまで雛と遊んでいないなんてことは無い。
雛の誘いが先だった場合は雛を優先しているし、春さんを中心に全てを回す様な事はしてない。
そもそもそんな事をしたら、きっと春さんが気を遣ってしまう。

「多分そういう意味じゃないと思うなぁ・・・」

私の言葉に春さんがポソリと呟く。けどその真意は私にはよく解らなかった。
春さんは私の大好きな男性だし、雛は私の大好きな一番の友人だ。
そこは変わってないと思うんだけどな。

「ふーんだ! あんたがどれだけ明に好かれてても、あたしの方が付き合い長いもんね!」
「そこで張り合われてもなぁ。俺にはどうしようもねぇだろ、そこは」

私を挟んで口論というか、雛が一方的に文句をいう状況。
割といつもの事なんだけど、春さんはこの状況でも怒らない。
一度不思議に思って聞いていたけど「俺は坂本の奴は割と好きだよ」と返された事がある。

雛が好きという言葉に、少し嫌な感情が浮かんだ事が有ったのは二人にも内緒だ。
これは伝えても誰も幸せにならない事だし、今の関係を考えれば気にしても仕方ない。

「でも明にもちょっと嫉妬してるのよね、あたし」
「私に?」

雛が私に嫉妬なんていうのは珍しい。武道以外の話でそんな事を言われたのは初めてだ。
彼女は基本優秀だし、人を妬むぐらいなら努力しろって言う性格だ。
そもそも私の方が雛をうらやむことが多い程だと思う。

「だーってさー、さき越されたって事でしょ? 空也さん手を出してくれる気配全然ないもん」
「ぶっ、ちょ、何でお前がそれ知ってるんだよ!」

雛の言葉に焦る春さん。
けど雛は何でもない様にそれに応えた。

「明に教えて貰ったからに決まってんじゃん」
「あ、明ちゃん!?」
「すみません。雛は、私にとっては特別なので」

春さんとの細かい関係を聞かれる前に彼女に話した。
雛には今までいろいろ相談に乗って貰っているし、話したい相手でもあった。
自分が幸せだった事を、楽しかった事を。
言ってしまえば惚気話を聞いて貰っただけだけど。

「草野ッチ、あんた結構大きいんだって?」
「明ちゃん、何話してんの!?」
「・・・その、すみません」

雛には本当に、隠すことなく余さず話してしまった。
・・・言わなくても良い事も有ったなとは思う。

「草野、言う必要無いとは思うけど、明ふった時はあたしが殴りに行くと思えよ」
「怖いなぁ、お前。ていうか段持ちが素人殴ったらダメだろ」
「ちゃんと加減するし、あんたそれで殴られても理由は言わないでしょ」
「そりゃ、なぁ。まあ、そんな事起こらないけどな」
「けっ、惚気やがって。明の惚気はともかくあんたの惚気なんか聞きたくないね」
「お前、本当に理不尽だな・・・」

そんな風に騒いでいるうちに学校に到着。そこからはまた普段通り、それぞれの教室に向かう。
そういえば春さん、受験はいつ頃なんだろうか。もう出願はしてる頃だよね。
・・・春さんの事だから、もう受験済ませてる可能性有るな。あの人学業に困った様子ないし。

というか、学生の彼女としてそこにあまり気を払わない私ってやっぱり駄目だな。
自分の受験もどうしようか。もう2年も後半なのに、特に行きたい所も無い。
どうしたものかな。
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