後藤家の日常

四つ目

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明の努力の気持ち

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呼び鈴を押し、家屋から軽い音が鳴る音が聞こえる。
少し、いや、かなり緊張しながら家主が出てくるのを待つ。
そしてしばらくして玄関に誰かが来る気配を感じ、その扉が開かれた。

「春さん、どうぞ上がって下さい」
「うん、お邪魔します」

明ちゃんに出迎えられ、頭を下げて家に入れて貰う。
靴を脱いで、明ちゃんが用意してくれたスリッパを履く。
最近寒くなってきたからなのか、もこもこ系のスリッパだ。

「春さん、どうしましょうか、早速やってみますか?」
「え? あ、えっと、マッサージ?」
「はい、どうします?」

明ちゃんはいつもの半眼で、首を傾げながら聞いてきた。
こっちはかなり緊張しているのだが、彼女からその気配は感じられない。
彼女の中では単純にマッサージをするだけ、って感じなのかな。

「その、明ちゃんはどうしたい、かな」

質問に質問で返すのはあんまり良くないけど、緊張から自分でも結論が出ない。
して欲しい気もするけど、恥ずかしい気持ちも大きい。
そもそも明ちゃんに本を貸して貰った後なせいか、本当にただマッサージで終わるのだろうかなんで邪な妄想すらしてしまう。

「私は春さんに喜んで頂ければそれで良いので」

半眼の瞳が細められ、可愛らしい笑顔で彼女はそう言った。
いつも思うけど、こういう所でそういう笑顔するの狡くない?
可愛すぎるし、そこまで想われて別の事やろうとか言えるわけないじゃん。
いや、別に嫌な事なんて何にもないんだけどさ。でも狡くない?

「えっと、じゃあ、お願いしよう、かな」
「はい、頑張ります。母にも教えて貰って、母で練習もしたので、下手な事は多分ないと思いますので、そこは安心して下さいね」

やって欲しいというと、一層笑顔を見せる明ちゃん。
うん、もう無理。ここで逃げる選択肢は俺にはもう出せない。
この笑顔曇らせるとか出来るわけねーじゃん。

その上咲さんで練習したって?
態々俺の為にそこまでしてたって知って、嬉しくないわけないじゃん。
つーか嬉しいに決まってんだろうが。

ただ一つ不安に思ったのは、これマッサージの内容次第で絶対姉貴に揶揄われるという事だ。
だって今からやる事咲さん知ってんでしょ?
絶対あの人は後で揶揄ってくるし、姉貴にもその話が行くだろう。
面倒くせぇ・・・。

「汚れても良いように、マッサージ用の服も用意しましたんで、そこは大丈夫ですからね」
「あ、そうなんだ」

あ、よかった、裸じゃなかった。流石に明ちゃん、その辺りは考えてくれたんだな。
前回話したときに否定の言葉が無かったからかなりドキドキしてた。
服着てていいならまだ大丈夫だろう。多分。

という事は、そこまで緊張する必要も無かったのかな。
何か俺一人空回りして恥ずかしがってるみたいで、その事自体に恥ずかしくなってきた・・・。
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