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待ち合わせ
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試練の日が来てしまった。今日はちゃんと覚悟をしてきた。
絶対に平常心ではいられないと解っているから、そうなるであろうという覚悟だ。
方向性がかなり間違っているとは思うけど、今日は流石に無理。
だって見に行く物が物で、一緒に行く人が春さんなんだもの。
平常心を保とうとしても、絶対どこかで振り切れる。その自信がある。
そもそも未だに本屋も結構恥ずかしいのに、まさかこんな事誘われると思って無かった。
なので今日は自分の心を落ち着ける時間を作るために、外で待ち合わせにした。
家を出る時に出てしまっている緊張を、最近少し冷えてきている空気で落ち着けようと思った。
そのせいで待ち合わせ場所には2時間前に来ている始末だ。
早すぎるというか、私は重過ぎる病んだ女か。
こんなの春さんに知られたら、何て言い訳するつもりだ。
「明ちゃん、なんでこんなに早い時間に居るの?」
自分の行動に頭を抱えていると聞きなれた声が聞こえて、驚きの心を抑えながら振り向く。
そこには少し驚いた顔で私を見る春さんが居た。
今日はパンツルックのちょっとボーイッシュ系な感じの服装だ。
最近はふわっとした全力で可愛い系統が多かったから、久々に見た気がする。
それでもやっぱり可愛い。
けど、なんでこんな時間に来ているんだろう。
まさか春さんも緊張して私と同じ様な事をしてしまったのだろうか。
もしそうなら、それは少しだけ気分が楽になる。
「春さんこそ、なんでこんなに早くに居るんですか」
「俺はこの辺りに用があって、遅刻しないように早めに済ませたら思ったより早く終わってさ。近くの喫茶店かどこかで時間潰そうかな、と思ってたら明ちゃんが居たから・・・」
自分の事をとりあえず棚に上げて、春さんに聞き返す。
すると春さんは普通に用があってこの辺りに居ただけだった。
そうですよね、私と違って春さんが緊張でおかしな行動取るはずが無いですよね。
しってます。しってますよ。
「明ちゃんこそ、なんでこんなに早くいたの?」
当然、もう一度ここにいる理由を聞きなおされた。やっぱり誤魔化せないですよね。
どうしよう、これは正直に言ってしまおうか。
別に言っても引かれないよね、これは。
「ちょっと緊張してしまって、心を落ち着けるために早めに来ていました」
「あ、やっぱり」
やっぱり。やっぱりって言われた。
もしかして今の私はそんなにガチガチになっている様に見えるんだろうか。
「昨日の約束の時返事に間があったからさ、もしかしたらまた明ちゃんに勇気出させる事したかなって思って、気になってたんだ。ごめんね」
どうやら私が全力で抑えて返した返事は、一切意味をなしていなかった。
初めて趣味がばれた時と同じ様に、彼に自分の趣味の行動を見せる緊張は伝わっていた様だ。
こうなると何の為に早く出てきたのか全く分からない。
でも謝られても困る。春さんが近づいて来てくれた事自体は嬉しいんだ。
この人は私の趣味に理解を示してくれる。知ろうとしてくれる。受け入れてくれる。
だからお礼を私から言う事はあっても、彼が謝る必要なんか無い。
「春さん、気にしないで下さい。まだ全部素直になるには羞恥心の方が勝ってしまうだけなんです。春さんの歩み寄りは心から嬉しいので謝らないで下さい」
早めに出て頭を冷やそうとした甲斐が少し有ったのか、思った事をちゃんと伝えられた。
恥ずかしいという気持ちはある。でもそれよりも感謝の方が大きい。
「・・・そっか、良かった」
春さんは私の返事に心底ほっとした様子を見せた。
どうやら彼に大分気を遣わせていたらしい。ちょっと申し訳ない気持ちになって来た。
緊張で気が行ってなかったけど、彼もそういう意味では緊張していたのかもしれない。
一度ならず数度も醜態をさらしているから余計だろう。
私は焦りや羞恥で彼の気遣いが見えていなかった事を謝りたいと思ったが、きっと謝ったら彼は余計に気にするだろう。
だから私は彼の手を取って、彼の顔をじっと見つめる。
彼はきょとんとした顔で私を見上げていた。
「春さん、ありがとうございます。気にして下さってとても嬉しいです。大好きです」
謝罪よりも感謝の言葉を。罪悪感よりも心からの好意を。
不の感情や言葉より、この人を想う言葉を彼に伝える。
すると彼は一瞬目を少し見開いた物の、嬉しそうに目を細めた。
「そっか、それなら本当に良かった。俺も好きだよ、明ちゃん」
にっこり笑って、本当に、本当にどこまでも素敵な笑みで好きだという春さん。
それだけで心から幸せになる自分が居る。
彼の声で耳が幸せで、脳が解けそうになる。
彼の笑みで体の体温が上がって、胸も苦しくなる気がする。
この可愛い彼が傍にいるというだけで、地に足が付いていないフワフワとした感覚になる。
どうやら待ち合わせは無駄だった様だ。相手が春さんという時点で私は無駄な抵抗をした様だ。
どう足掻いても、この人のこういう素敵な所を見ると舞い上がってしまう。
「この後どうしよっか、この時間でも店って空いてるの?」
「向かう間に開店時間になるとは思います」
「そっか、ならいこっか」
「はい、行きましょう」
言動だけは普通だけど、間違いなく今の私は頭が回っていない。
さて、どこまで暴走を抑えられるか。
今回こそは本当に不味い暴走しそうで怖い・・・。
絶対に平常心ではいられないと解っているから、そうなるであろうという覚悟だ。
方向性がかなり間違っているとは思うけど、今日は流石に無理。
だって見に行く物が物で、一緒に行く人が春さんなんだもの。
平常心を保とうとしても、絶対どこかで振り切れる。その自信がある。
そもそも未だに本屋も結構恥ずかしいのに、まさかこんな事誘われると思って無かった。
なので今日は自分の心を落ち着ける時間を作るために、外で待ち合わせにした。
家を出る時に出てしまっている緊張を、最近少し冷えてきている空気で落ち着けようと思った。
そのせいで待ち合わせ場所には2時間前に来ている始末だ。
早すぎるというか、私は重過ぎる病んだ女か。
こんなの春さんに知られたら、何て言い訳するつもりだ。
「明ちゃん、なんでこんなに早い時間に居るの?」
自分の行動に頭を抱えていると聞きなれた声が聞こえて、驚きの心を抑えながら振り向く。
そこには少し驚いた顔で私を見る春さんが居た。
今日はパンツルックのちょっとボーイッシュ系な感じの服装だ。
最近はふわっとした全力で可愛い系統が多かったから、久々に見た気がする。
それでもやっぱり可愛い。
けど、なんでこんな時間に来ているんだろう。
まさか春さんも緊張して私と同じ様な事をしてしまったのだろうか。
もしそうなら、それは少しだけ気分が楽になる。
「春さんこそ、なんでこんなに早くに居るんですか」
「俺はこの辺りに用があって、遅刻しないように早めに済ませたら思ったより早く終わってさ。近くの喫茶店かどこかで時間潰そうかな、と思ってたら明ちゃんが居たから・・・」
自分の事をとりあえず棚に上げて、春さんに聞き返す。
すると春さんは普通に用があってこの辺りに居ただけだった。
そうですよね、私と違って春さんが緊張でおかしな行動取るはずが無いですよね。
しってます。しってますよ。
「明ちゃんこそ、なんでこんなに早くいたの?」
当然、もう一度ここにいる理由を聞きなおされた。やっぱり誤魔化せないですよね。
どうしよう、これは正直に言ってしまおうか。
別に言っても引かれないよね、これは。
「ちょっと緊張してしまって、心を落ち着けるために早めに来ていました」
「あ、やっぱり」
やっぱり。やっぱりって言われた。
もしかして今の私はそんなにガチガチになっている様に見えるんだろうか。
「昨日の約束の時返事に間があったからさ、もしかしたらまた明ちゃんに勇気出させる事したかなって思って、気になってたんだ。ごめんね」
どうやら私が全力で抑えて返した返事は、一切意味をなしていなかった。
初めて趣味がばれた時と同じ様に、彼に自分の趣味の行動を見せる緊張は伝わっていた様だ。
こうなると何の為に早く出てきたのか全く分からない。
でも謝られても困る。春さんが近づいて来てくれた事自体は嬉しいんだ。
この人は私の趣味に理解を示してくれる。知ろうとしてくれる。受け入れてくれる。
だからお礼を私から言う事はあっても、彼が謝る必要なんか無い。
「春さん、気にしないで下さい。まだ全部素直になるには羞恥心の方が勝ってしまうだけなんです。春さんの歩み寄りは心から嬉しいので謝らないで下さい」
早めに出て頭を冷やそうとした甲斐が少し有ったのか、思った事をちゃんと伝えられた。
恥ずかしいという気持ちはある。でもそれよりも感謝の方が大きい。
「・・・そっか、良かった」
春さんは私の返事に心底ほっとした様子を見せた。
どうやら彼に大分気を遣わせていたらしい。ちょっと申し訳ない気持ちになって来た。
緊張で気が行ってなかったけど、彼もそういう意味では緊張していたのかもしれない。
一度ならず数度も醜態をさらしているから余計だろう。
私は焦りや羞恥で彼の気遣いが見えていなかった事を謝りたいと思ったが、きっと謝ったら彼は余計に気にするだろう。
だから私は彼の手を取って、彼の顔をじっと見つめる。
彼はきょとんとした顔で私を見上げていた。
「春さん、ありがとうございます。気にして下さってとても嬉しいです。大好きです」
謝罪よりも感謝の言葉を。罪悪感よりも心からの好意を。
不の感情や言葉より、この人を想う言葉を彼に伝える。
すると彼は一瞬目を少し見開いた物の、嬉しそうに目を細めた。
「そっか、それなら本当に良かった。俺も好きだよ、明ちゃん」
にっこり笑って、本当に、本当にどこまでも素敵な笑みで好きだという春さん。
それだけで心から幸せになる自分が居る。
彼の声で耳が幸せで、脳が解けそうになる。
彼の笑みで体の体温が上がって、胸も苦しくなる気がする。
この可愛い彼が傍にいるというだけで、地に足が付いていないフワフワとした感覚になる。
どうやら待ち合わせは無駄だった様だ。相手が春さんという時点で私は無駄な抵抗をした様だ。
どう足掻いても、この人のこういう素敵な所を見ると舞い上がってしまう。
「この後どうしよっか、この時間でも店って空いてるの?」
「向かう間に開店時間になるとは思います」
「そっか、ならいこっか」
「はい、行きましょう」
言動だけは普通だけど、間違いなく今の私は頭が回っていない。
さて、どこまで暴走を抑えられるか。
今回こそは本当に不味い暴走しそうで怖い・・・。
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