後藤家の日常

四つ目

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デートの相談

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「明日はどこ行こうか、明ちゃん」

いつもの昼休みに、いつも通り春さんと昼食中に彼が聞いてきた。
明日は休日で、デートの行き先の相談だ。

「そうですね、どうしましょうか・・・」

空になったお弁当箱をカバンに仕舞いながら、行き先を考える。
私としては、本音を言えば春さんと一緒ならどこでも良い。
もっと素直な欲望を言えば、一日中春さんを抱きしめていたい。

とまあ、そんな欲望を言ったら絶対春さんは困ると思うので、口には出せない。
勿論少しぐらいの接触を望む事は口にするけど、それ以上はちょっと。
折角恋仲になれたのに、下手な事で嫌われて別れるとかしたくない。

お母さんに言われた、素直になりなさいって言葉の意味は解ってる。
けど、まだそこまで開き直れない。言うのが怖い。
この辺りの欲望の塊な発言は、付き合う前より言えなくなってる気がする。

ただ我慢できなくて時々漏れてるけど・・・。

「そういえば明ちゃん、グッズ集めは今でもしてるんだよね」
「え、ええ、買ってますけど」

急にどうしたんだろう。まさか告白した時の話をするつもりだろうか。
あれはちょっと、頭が茹ってただけなんです。お願いなので忘れて下さい。
今でもあの発言は自分で許容できない恥ずかしさを覚える。本当にあれは酷かった。

「本は一緒に買いに行ったりしたけど、グッズ類はまだだしさ。一緒に行って良い?」
「――――」

春さんの提案に、私は固まってしまった。
ちょっと待って下さい。春さんと一緒にあの手の物の買い物に行くんですか?
それはつまり、私が真剣に道具を手に買い物をしているのを見られるって事ですよね。
あの、春さん、それ凄い事言ってる自覚有ります? 絶対ないですよね?

「いいですよ、行きましょうか」

だが動揺した私の口から出た言葉は、肯定だった。
何してるんだろう。私、焦ると自分が恥ずかしい方向の事しか言わないな。
もしかして潜在的にMだったりするのかな。
あ、でも春さんに苛められるなら、ちょっと良いかも。

違う、そうじゃない。
馬鹿か私は。

「・・・提案しておいてなんだけど、本当に良いの? 何か今様子おかしくなかった?」

最近の春さんは私の表情の機微に前より気が付くようになってきている。
他の人は気が付かないのに、春さんが気が付くという事が多い。
お母さんもよく気が付くけど、お母さんの場合は年季が違うからな。
雛もそうだけど、よくこの表情変化の乏しい顔から察せられるものだと思う。

「いえ、大丈夫ですよ。一緒に行きましょう」

恥ずかしいけど、春さんが踏み込んできた事に関して距離は開けない。
折角彼が言ってくれたのに、私がしり込みするわけには行かない。
そう自分に言い聞かせ、先ほどの醜態に言い訳をする。

だって、どう考えても普通は肯定するところじゃないでしょ。
でも、いくらか本音でそう思っている部分もある。でなきゃ流石にOKは辛い。
考えても見て欲しい。春さんの目の前で大人の玩具を真剣に選ぶんだよ?
顔から火が出て店から火災が起きそうだ。

あ、でも春さんが手に取ってまじまじ見るという展開もあるのか。
春さんが男の人用と知らずに手に取ったりとか・・・。

ああ、駄目だ私。本当に駄目だ。
明日は行く前に冷静に、出来るだけ冷静に心を保とう。
でないと多分帰り道絶対暴走する。

「明日が楽しみだね」
「はい、私もです」

明日は試練の日だ・・・。
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