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女装後輩
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「先輩ー、草野せんぱーい!」
ある日の学校帰りに背後から名前を呼ばれ、げんなりした気分で振り向く。
後ろで纏めた長い黒髪を靡かせながら、手をぶんぶん振って走ってくるやつが視界に入る。
スカートを完全改造してギリギリなミニスカにしているから、激しく動くと中が見えそうだ。
まあ見えない様にしているらしいから、期待してるやつがいても無駄だけど。
「先輩、今帰りですか?」
俺の下にたどり着き、はぁはぁと息を荒げながら問う女子制服の一年生。
ただしこいつは女じゃない。かなり可愛らしい顔しているが男だ。
名前は古本良《ふるもとりょう》。俺に懐いている面倒くさい後輩だ。
「そうだよ、何か用かよ古本」
「やだなぁ、折角同じ時間に出会ったんだし一緒に帰りましょうよぉ」
適当にあしらうと、俺の手を握ってすり寄ってくる。
しなだれかかるな。重い。お前の方が図体でかいんだから止めろ。
心の中で文句を言いながら口にはしない。
こいつは構うとなんて言い返しても楽しんできやがるから、うざったい事この上ない。
「好きにしろよ面倒くさい。どうせ断ってもついて来るくせに」
「よく解ってらっしゃる」
俺の言葉に古本は笑顔で付いて来る。
懐いて来る後輩を無下に扱う気は本来はないが、こいつに対しては別だ。
こいつは女の姿をしているが、中身は完全に男だ。
女装だから当たり前だって言われるかもしれないが、そうじゃない。
こいつは女に近づくために女の格好をしている。しかも、しかもだ。
その上こいつは俺をその同好の士とか思ってやがる。
俺はそんな目的でやって無いって何度もいってるのに、聞きやしねぇ。
「とうとう後藤先輩と付き合ったんですね」
やっぱ通学路で手を繋いでたらこうなるか。
解っててやった事ではあるけど、だからってなんで絡んできやがるかな。
いやまあ、こいつにしたら上手くやりやがったな、って所なんだろうなぁ。
「後藤先輩って良いですよねぇ。素直に懐いて来る人間には優しい人ですし、良いなーとは思ってたんですけど、坂本先輩が怖いんですよねぇ」
「だってお前、明ちゃんに抱き着いた事あるだろうが。坂本が殴って無かったら俺が殴ってる」
「おー、怖いですねぇ。もうばっちり彼氏顔ですねぇ。相変わらずかっわいーのに」
「お前、ほんと殴るぞ」
「さーっせんした!」
本気でイラッときて拳を構えると即座に謝って来た。
といってもその声は明らかに揶揄ってやがったけど。
因みに坂本が殴ったと言っても顔は殴って無い。腹だ。
勿論俺も腹以外殴る気は無い。
「お前さぁ、ばれた時とか怖くないの?」
「ばれるはず無いじゃないっすかぁ。草野先輩にだけですよ、こんな感じなの」
「それを誰かに見られればいいのに」
そんで女子から袋叩き似合えばいいのに。
俺と違ってこいつは好きでこういう格好をしている。
それ自体は別に良いが、それを利用して女の子に触るのがこいつの目的。
それを知っているだけにどうにもイラッとする。
「大体草野先輩だってそれは同じじゃないですか」
「何がだよ」
「先輩こそ俺に対する態度みたいなの見られたらまずいんじゃないんですか?」
「俺は基本こんな感じだよ」
明ちゃんには多分他の人より態度が柔らかいとは思うけど、基本はこんな感じだ。
坂本にも態度自体は変わってない。
「まあ、言葉とかそういう激しいとこあっても、所作が女の子ですもんねぇ」
「・・・っせえな」
もうしみついてて取れねえんだよ。
小学生の頃から姉貴にしつけられて、周りの女子にも注意されてんだよ。
気が付いたらそれが当然になっていたからどうしようもない。
なのでこの動きは完全に身に着いたもので、もう消しようもない。
わざとしない様にと思わないと、自然と女性らしい動きをしてしまう。
ただ最近は、明ちゃんが喜んでくれるせいで、それでよかったかななんて思うけど。
そう思うからこそ、俺の男の部分を見せるのが最近怖いんだよなぁ。
「ねえねえ先輩、後藤先輩って彼女としてはどんな感じなんですか。自分の予想としては草野先輩の前だけで可愛らしかったりとか想像」
「うるせえ、黙れ」
何でこいつに明ちゃんの可愛い所なんか教えなきゃいかないんだ。
坂本はともかく、こいつに言ってやる義理は無い。
だが古本の質問は止まることなく、こいつの家への別れ道まで延々続いた。
うぜえ・・・。
ある日の学校帰りに背後から名前を呼ばれ、げんなりした気分で振り向く。
後ろで纏めた長い黒髪を靡かせながら、手をぶんぶん振って走ってくるやつが視界に入る。
スカートを完全改造してギリギリなミニスカにしているから、激しく動くと中が見えそうだ。
まあ見えない様にしているらしいから、期待してるやつがいても無駄だけど。
「先輩、今帰りですか?」
俺の下にたどり着き、はぁはぁと息を荒げながら問う女子制服の一年生。
ただしこいつは女じゃない。かなり可愛らしい顔しているが男だ。
名前は古本良《ふるもとりょう》。俺に懐いている面倒くさい後輩だ。
「そうだよ、何か用かよ古本」
「やだなぁ、折角同じ時間に出会ったんだし一緒に帰りましょうよぉ」
適当にあしらうと、俺の手を握ってすり寄ってくる。
しなだれかかるな。重い。お前の方が図体でかいんだから止めろ。
心の中で文句を言いながら口にはしない。
こいつは構うとなんて言い返しても楽しんできやがるから、うざったい事この上ない。
「好きにしろよ面倒くさい。どうせ断ってもついて来るくせに」
「よく解ってらっしゃる」
俺の言葉に古本は笑顔で付いて来る。
懐いて来る後輩を無下に扱う気は本来はないが、こいつに対しては別だ。
こいつは女の姿をしているが、中身は完全に男だ。
女装だから当たり前だって言われるかもしれないが、そうじゃない。
こいつは女に近づくために女の格好をしている。しかも、しかもだ。
その上こいつは俺をその同好の士とか思ってやがる。
俺はそんな目的でやって無いって何度もいってるのに、聞きやしねぇ。
「とうとう後藤先輩と付き合ったんですね」
やっぱ通学路で手を繋いでたらこうなるか。
解っててやった事ではあるけど、だからってなんで絡んできやがるかな。
いやまあ、こいつにしたら上手くやりやがったな、って所なんだろうなぁ。
「後藤先輩って良いですよねぇ。素直に懐いて来る人間には優しい人ですし、良いなーとは思ってたんですけど、坂本先輩が怖いんですよねぇ」
「だってお前、明ちゃんに抱き着いた事あるだろうが。坂本が殴って無かったら俺が殴ってる」
「おー、怖いですねぇ。もうばっちり彼氏顔ですねぇ。相変わらずかっわいーのに」
「お前、ほんと殴るぞ」
「さーっせんした!」
本気でイラッときて拳を構えると即座に謝って来た。
といってもその声は明らかに揶揄ってやがったけど。
因みに坂本が殴ったと言っても顔は殴って無い。腹だ。
勿論俺も腹以外殴る気は無い。
「お前さぁ、ばれた時とか怖くないの?」
「ばれるはず無いじゃないっすかぁ。草野先輩にだけですよ、こんな感じなの」
「それを誰かに見られればいいのに」
そんで女子から袋叩き似合えばいいのに。
俺と違ってこいつは好きでこういう格好をしている。
それ自体は別に良いが、それを利用して女の子に触るのがこいつの目的。
それを知っているだけにどうにもイラッとする。
「大体草野先輩だってそれは同じじゃないですか」
「何がだよ」
「先輩こそ俺に対する態度みたいなの見られたらまずいんじゃないんですか?」
「俺は基本こんな感じだよ」
明ちゃんには多分他の人より態度が柔らかいとは思うけど、基本はこんな感じだ。
坂本にも態度自体は変わってない。
「まあ、言葉とかそういう激しいとこあっても、所作が女の子ですもんねぇ」
「・・・っせえな」
もうしみついてて取れねえんだよ。
小学生の頃から姉貴にしつけられて、周りの女子にも注意されてんだよ。
気が付いたらそれが当然になっていたからどうしようもない。
なのでこの動きは完全に身に着いたもので、もう消しようもない。
わざとしない様にと思わないと、自然と女性らしい動きをしてしまう。
ただ最近は、明ちゃんが喜んでくれるせいで、それでよかったかななんて思うけど。
そう思うからこそ、俺の男の部分を見せるのが最近怖いんだよなぁ。
「ねえねえ先輩、後藤先輩って彼女としてはどんな感じなんですか。自分の予想としては草野先輩の前だけで可愛らしかったりとか想像」
「うるせえ、黙れ」
何でこいつに明ちゃんの可愛い所なんか教えなきゃいかないんだ。
坂本はともかく、こいつに言ってやる義理は無い。
だが古本の質問は止まることなく、こいつの家への別れ道まで延々続いた。
うぜえ・・・。
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