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彼女の痕跡
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「あー、ちょっと寝過ぎたか」
昼過ぎになって目を覚まし、欠伸をしながら台所に向かう。
何か飲む物が無いかと冷蔵庫を開けると、ラップされて上に張り紙がしてある物があった。
何だろうと良く見ると、綺麗な字で『起きたら食べて下さい』と書いていた。
間違いなく、これは、あの子が作ってくれたものだろう。
取り出すと綺麗に一食分になるぐらいの、それこそお弁当になりそうな物が皿に盛られていた。
「明ちゃん、ちょっと、これは強烈過ぎない?」
不意打ちだぞこんなの。胸に来るわ。
俺に作ったとか、作っていくとか、そういうの一切言わずに作っていったのか。
俺が気を遣わず寝れるよう、そうしたのだろう。本当に優しくていい子だ。
「可愛くて健気で献身的な彼女よねぇ」
皿をもって彼女の存在に感動していると、背後から聞きなれた姉貴の声が聞こえる。
余りに手元に感動して、接近に全く気が付かなかった。
「あんたには本当にもったいないわよね」
「・・・そうだな、俺もそう思う」
姉貴に反論する気は起きない。本当に俺もそう思うからだ。
明ちゃんはかなり理想的な『女性』だと思う。
本人はあの見た目にコンプレックスがあるけど、それを補って余りある魅力がある。
そんな明ちゃんが俺の彼女で、俺を想ってくれている。
彼女が俺を好きだと思ってくれている事に疑いはない。むしろ疑ったら失礼だ。
彼女は告白の時あそこまで頑張った。
本当なら俺が踏み出さなきゃいけない勇気を、あの子から踏み出してきた。
そこを知っている以上、そんな事を疑う気は一切ない。
ただそんな彼女に俺は釣り合ってるんだろうか、なんて考えてしまう。
彼女が俺の可愛い所が好きだというのは本当なんだろう。
けど、きっと彼女はそれ以外に、男に対する理想もどこかにあるはずだ。
そういう事を考えると、俺は彼女の『彼氏』としてはどうなのかと思う。
あくまで可愛い『女の子みたいな春さん』が好きなんじゃないか。
そんな事を、考えてしまう。
「あべっ!?」
悩んでいたら、背中に衝撃を受けて冷蔵庫に頭をぶつける。
何とか皿は死守した。明ちゃんが作った物をひっくり返すわけにはいかない。
首だけで後ろを振り向くと、姉貴が俺の背中に足をのせていた。
「何すんだよ」
「くっだんねー事で悩んでそうだったから気合い入れてやっただけよ」
「くだんねーってなんだよ」
「さあね。別にあたしはエスパーじゃないから解んないわよ。けどあんたが無駄にうじうじしてるってのだけは解る。悩んでる暇があったら明ちゃん大事にしてやんな」
姉貴にそうまっすぐに言われ、確かにその通りだなと思ってしまった。
自分がどうとか、どう思われてるとかじゃない。
いま彼女が俺に向けてくれる気持ちにちゃんと応える。それが大事な事だよな。
「わりい、姉貴。サンキュ」
「どういたしまして、ばーか」
そう言うと姉貴は俺を押し退けて、冷蔵庫からコーヒーを持って自室に戻っていった。
普段は文句しかいう気の起きない姉貴だが、時々はこうやって助けになってくれる。
だからこそ、普段からああいう風にしてくんねーかなって思うんだけどな・・・。
「とりあえず、これ食べさせて貰おう」
ラップに包まれた料理を電子レンジに入れて温める。
温まるまでの間ぼんやりと、明ちゃんにどう返してあげれば良いかを考えていた。
昼過ぎになって目を覚まし、欠伸をしながら台所に向かう。
何か飲む物が無いかと冷蔵庫を開けると、ラップされて上に張り紙がしてある物があった。
何だろうと良く見ると、綺麗な字で『起きたら食べて下さい』と書いていた。
間違いなく、これは、あの子が作ってくれたものだろう。
取り出すと綺麗に一食分になるぐらいの、それこそお弁当になりそうな物が皿に盛られていた。
「明ちゃん、ちょっと、これは強烈過ぎない?」
不意打ちだぞこんなの。胸に来るわ。
俺に作ったとか、作っていくとか、そういうの一切言わずに作っていったのか。
俺が気を遣わず寝れるよう、そうしたのだろう。本当に優しくていい子だ。
「可愛くて健気で献身的な彼女よねぇ」
皿をもって彼女の存在に感動していると、背後から聞きなれた姉貴の声が聞こえる。
余りに手元に感動して、接近に全く気が付かなかった。
「あんたには本当にもったいないわよね」
「・・・そうだな、俺もそう思う」
姉貴に反論する気は起きない。本当に俺もそう思うからだ。
明ちゃんはかなり理想的な『女性』だと思う。
本人はあの見た目にコンプレックスがあるけど、それを補って余りある魅力がある。
そんな明ちゃんが俺の彼女で、俺を想ってくれている。
彼女が俺を好きだと思ってくれている事に疑いはない。むしろ疑ったら失礼だ。
彼女は告白の時あそこまで頑張った。
本当なら俺が踏み出さなきゃいけない勇気を、あの子から踏み出してきた。
そこを知っている以上、そんな事を疑う気は一切ない。
ただそんな彼女に俺は釣り合ってるんだろうか、なんて考えてしまう。
彼女が俺の可愛い所が好きだというのは本当なんだろう。
けど、きっと彼女はそれ以外に、男に対する理想もどこかにあるはずだ。
そういう事を考えると、俺は彼女の『彼氏』としてはどうなのかと思う。
あくまで可愛い『女の子みたいな春さん』が好きなんじゃないか。
そんな事を、考えてしまう。
「あべっ!?」
悩んでいたら、背中に衝撃を受けて冷蔵庫に頭をぶつける。
何とか皿は死守した。明ちゃんが作った物をひっくり返すわけにはいかない。
首だけで後ろを振り向くと、姉貴が俺の背中に足をのせていた。
「何すんだよ」
「くっだんねー事で悩んでそうだったから気合い入れてやっただけよ」
「くだんねーってなんだよ」
「さあね。別にあたしはエスパーじゃないから解んないわよ。けどあんたが無駄にうじうじしてるってのだけは解る。悩んでる暇があったら明ちゃん大事にしてやんな」
姉貴にそうまっすぐに言われ、確かにその通りだなと思ってしまった。
自分がどうとか、どう思われてるとかじゃない。
いま彼女が俺に向けてくれる気持ちにちゃんと応える。それが大事な事だよな。
「わりい、姉貴。サンキュ」
「どういたしまして、ばーか」
そう言うと姉貴は俺を押し退けて、冷蔵庫からコーヒーを持って自室に戻っていった。
普段は文句しかいう気の起きない姉貴だが、時々はこうやって助けになってくれる。
だからこそ、普段からああいう風にしてくんねーかなって思うんだけどな・・・。
「とりあえず、これ食べさせて貰おう」
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