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お泊り
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「すぅ・・・すぅ・・・」
静かに寝息を立てる春さんの手を握りながら、その顔を見つめる。
やっぱりまだ回復出来ていないようで、体を拭いた後横になったらすぐ寝てしまった。
私は彼が寝る前からずっと、彼の手を握っている。
病気で弱っている時はこうやって人が傍にいる方がきっと安心すると思ったからだ。
春さんは最初こそ少し恥ずかしそうにしていたけど、嬉しそうに笑ってくれた。
握る彼の手は熱くて、熱があるとはっきりわかる。
朝よりは下がっているらしいし、もう回復してきているけどやっぱり少し心配だ。
そう思いながら、毛一つない彼の手を撫でる。手入れの行き届いている、綺麗な手。
そういえば体を拭いていた時、春さん何処にも毛が無かったっけ。
あそこまで体毛の無い高校生男子も珍しいと思う。春さん髭もないし。
すね毛も無いからタイツとかも似合うだろうな。
そういえば春さんがタイツを穿いているところを見た事が無い。
お姉さん、タイツは趣味じゃないのかな。春さんには絶対似合うと思うんだけど。
うん、良い。タイツの春さん良い。
「ううん」
「―――――っ」
春さんの寝言にドキッとして、小さく悲鳴を上げそうになった。
危ない危ない。いかがわしい考えはちょっと止めておこう。
春さんは今弱ってるし、ちゃんと看病しなきゃ。
そこで小さく振動音が聞こえた。カバンからだ。
多分携帯端末の振動だと思いかばんを開け、端末を取り出す。
見るとお母さんからの連絡だった。
部屋を静かに出て、指を画面にスライドさせて電話に出る。
『明ちゃーん? どうしたの、こんな時間になっても帰ってこないから心配したよー?』
そう言われて端末に表示されている時間を見る。
そこには19時と書かれていた。今日はバイトの予定もないから確かに遅い。
普段なら遅くても18時には帰るから、1時間もたてば心配になるだろう。
いや、その前に私、どれだけ春さんの手を握って見つめていたのだろうか。
学校終わって家に帰って買い物して来たから、ここに来たのは16時半頃のはず。
その後おかゆ作って春さんの体拭ていたとしても・・・最低でも一時間は眺めてる。
どれだけ春さんが好きなんだ、私は。
「ごめん、お母さん。春さんが風邪ひいたらしくて、お見舞いに来てたんだ」
『あー・・・なるほど、それで』
「すぐ帰るね」
『・・・んー』
心配かけた事を謝り、今から帰る旨を伝えると母は何か悩むように唸った。
どうしたのだろうか。こういう時のお母さんは何か突拍子の無い事を言いそうで怖い。
『春くん、まだ回復してない感じ?』
「そうだね、まだだと思う」
『よーし解った。ママお泊り許可しちゃう!』
「・・・は?」
一体何を言っているんだろうかこの人は。
大体お母さんが許可をしても、草野家の人達に迷惑がかかる。
そう思って反論をしようとするが、お母さんは畳みかけて来る。
『冬斗さんに連絡今入れたら、お店やってる間は面倒見れないから助かるわぁって。お姉さんも忙しいみたいだからありがたいってさー。んじゃそういうことでねー』
「な、お母さんま―――」
物凄い勢いで言いたい事だけを言って、お母さんは通話を切った。
おそらく唸ってる間に春さんのお父さんに連絡を取ったのだろう。
本当にあの人は行動力だけは凄いので困る。
「・・・まあ、いいか」
親公認で春さんの面倒を見ていろって言われたんだ。素直にそうしよう。
春さんの部屋に戻って、彼の眠るベッドの端に腰かける。
呼吸はいくらか落ち着いているけど、まだ熱そうな彼の額に手をのせる。
やっぱり、熱い。
「早く、良くなってくださいね」
静かに呟いて、寝ている彼の頬にキスをする。
自分の顔が、彼の熱さに負けないぐらい熱いのを感じていた。
静かに寝息を立てる春さんの手を握りながら、その顔を見つめる。
やっぱりまだ回復出来ていないようで、体を拭いた後横になったらすぐ寝てしまった。
私は彼が寝る前からずっと、彼の手を握っている。
病気で弱っている時はこうやって人が傍にいる方がきっと安心すると思ったからだ。
春さんは最初こそ少し恥ずかしそうにしていたけど、嬉しそうに笑ってくれた。
握る彼の手は熱くて、熱があるとはっきりわかる。
朝よりは下がっているらしいし、もう回復してきているけどやっぱり少し心配だ。
そう思いながら、毛一つない彼の手を撫でる。手入れの行き届いている、綺麗な手。
そういえば体を拭いていた時、春さん何処にも毛が無かったっけ。
あそこまで体毛の無い高校生男子も珍しいと思う。春さん髭もないし。
すね毛も無いからタイツとかも似合うだろうな。
そういえば春さんがタイツを穿いているところを見た事が無い。
お姉さん、タイツは趣味じゃないのかな。春さんには絶対似合うと思うんだけど。
うん、良い。タイツの春さん良い。
「ううん」
「―――――っ」
春さんの寝言にドキッとして、小さく悲鳴を上げそうになった。
危ない危ない。いかがわしい考えはちょっと止めておこう。
春さんは今弱ってるし、ちゃんと看病しなきゃ。
そこで小さく振動音が聞こえた。カバンからだ。
多分携帯端末の振動だと思いかばんを開け、端末を取り出す。
見るとお母さんからの連絡だった。
部屋を静かに出て、指を画面にスライドさせて電話に出る。
『明ちゃーん? どうしたの、こんな時間になっても帰ってこないから心配したよー?』
そう言われて端末に表示されている時間を見る。
そこには19時と書かれていた。今日はバイトの予定もないから確かに遅い。
普段なら遅くても18時には帰るから、1時間もたてば心配になるだろう。
いや、その前に私、どれだけ春さんの手を握って見つめていたのだろうか。
学校終わって家に帰って買い物して来たから、ここに来たのは16時半頃のはず。
その後おかゆ作って春さんの体拭ていたとしても・・・最低でも一時間は眺めてる。
どれだけ春さんが好きなんだ、私は。
「ごめん、お母さん。春さんが風邪ひいたらしくて、お見舞いに来てたんだ」
『あー・・・なるほど、それで』
「すぐ帰るね」
『・・・んー』
心配かけた事を謝り、今から帰る旨を伝えると母は何か悩むように唸った。
どうしたのだろうか。こういう時のお母さんは何か突拍子の無い事を言いそうで怖い。
『春くん、まだ回復してない感じ?』
「そうだね、まだだと思う」
『よーし解った。ママお泊り許可しちゃう!』
「・・・は?」
一体何を言っているんだろうかこの人は。
大体お母さんが許可をしても、草野家の人達に迷惑がかかる。
そう思って反論をしようとするが、お母さんは畳みかけて来る。
『冬斗さんに連絡今入れたら、お店やってる間は面倒見れないから助かるわぁって。お姉さんも忙しいみたいだからありがたいってさー。んじゃそういうことでねー』
「な、お母さんま―――」
物凄い勢いで言いたい事だけを言って、お母さんは通話を切った。
おそらく唸ってる間に春さんのお父さんに連絡を取ったのだろう。
本当にあの人は行動力だけは凄いので困る。
「・・・まあ、いいか」
親公認で春さんの面倒を見ていろって言われたんだ。素直にそうしよう。
春さんの部屋に戻って、彼の眠るベッドの端に腰かける。
呼吸はいくらか落ち着いているけど、まだ熱そうな彼の額に手をのせる。
やっぱり、熱い。
「早く、良くなってくださいね」
静かに呟いて、寝ている彼の頬にキスをする。
自分の顔が、彼の熱さに負けないぐらい熱いのを感じていた。
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