52 / 144
お泊り
しおりを挟む
「すぅ・・・すぅ・・・」
静かに寝息を立てる春さんの手を握りながら、その顔を見つめる。
やっぱりまだ回復出来ていないようで、体を拭いた後横になったらすぐ寝てしまった。
私は彼が寝る前からずっと、彼の手を握っている。
病気で弱っている時はこうやって人が傍にいる方がきっと安心すると思ったからだ。
春さんは最初こそ少し恥ずかしそうにしていたけど、嬉しそうに笑ってくれた。
握る彼の手は熱くて、熱があるとはっきりわかる。
朝よりは下がっているらしいし、もう回復してきているけどやっぱり少し心配だ。
そう思いながら、毛一つない彼の手を撫でる。手入れの行き届いている、綺麗な手。
そういえば体を拭いていた時、春さん何処にも毛が無かったっけ。
あそこまで体毛の無い高校生男子も珍しいと思う。春さん髭もないし。
すね毛も無いからタイツとかも似合うだろうな。
そういえば春さんがタイツを穿いているところを見た事が無い。
お姉さん、タイツは趣味じゃないのかな。春さんには絶対似合うと思うんだけど。
うん、良い。タイツの春さん良い。
「ううん」
「―――――っ」
春さんの寝言にドキッとして、小さく悲鳴を上げそうになった。
危ない危ない。いかがわしい考えはちょっと止めておこう。
春さんは今弱ってるし、ちゃんと看病しなきゃ。
そこで小さく振動音が聞こえた。カバンからだ。
多分携帯端末の振動だと思いかばんを開け、端末を取り出す。
見るとお母さんからの連絡だった。
部屋を静かに出て、指を画面にスライドさせて電話に出る。
『明ちゃーん? どうしたの、こんな時間になっても帰ってこないから心配したよー?』
そう言われて端末に表示されている時間を見る。
そこには19時と書かれていた。今日はバイトの予定もないから確かに遅い。
普段なら遅くても18時には帰るから、1時間もたてば心配になるだろう。
いや、その前に私、どれだけ春さんの手を握って見つめていたのだろうか。
学校終わって家に帰って買い物して来たから、ここに来たのは16時半頃のはず。
その後おかゆ作って春さんの体拭ていたとしても・・・最低でも一時間は眺めてる。
どれだけ春さんが好きなんだ、私は。
「ごめん、お母さん。春さんが風邪ひいたらしくて、お見舞いに来てたんだ」
『あー・・・なるほど、それで』
「すぐ帰るね」
『・・・んー』
心配かけた事を謝り、今から帰る旨を伝えると母は何か悩むように唸った。
どうしたのだろうか。こういう時のお母さんは何か突拍子の無い事を言いそうで怖い。
『春くん、まだ回復してない感じ?』
「そうだね、まだだと思う」
『よーし解った。ママお泊り許可しちゃう!』
「・・・は?」
一体何を言っているんだろうかこの人は。
大体お母さんが許可をしても、草野家の人達に迷惑がかかる。
そう思って反論をしようとするが、お母さんは畳みかけて来る。
『冬斗さんに連絡今入れたら、お店やってる間は面倒見れないから助かるわぁって。お姉さんも忙しいみたいだからありがたいってさー。んじゃそういうことでねー』
「な、お母さんま―――」
物凄い勢いで言いたい事だけを言って、お母さんは通話を切った。
おそらく唸ってる間に春さんのお父さんに連絡を取ったのだろう。
本当にあの人は行動力だけは凄いので困る。
「・・・まあ、いいか」
親公認で春さんの面倒を見ていろって言われたんだ。素直にそうしよう。
春さんの部屋に戻って、彼の眠るベッドの端に腰かける。
呼吸はいくらか落ち着いているけど、まだ熱そうな彼の額に手をのせる。
やっぱり、熱い。
「早く、良くなってくださいね」
静かに呟いて、寝ている彼の頬にキスをする。
自分の顔が、彼の熱さに負けないぐらい熱いのを感じていた。
静かに寝息を立てる春さんの手を握りながら、その顔を見つめる。
やっぱりまだ回復出来ていないようで、体を拭いた後横になったらすぐ寝てしまった。
私は彼が寝る前からずっと、彼の手を握っている。
病気で弱っている時はこうやって人が傍にいる方がきっと安心すると思ったからだ。
春さんは最初こそ少し恥ずかしそうにしていたけど、嬉しそうに笑ってくれた。
握る彼の手は熱くて、熱があるとはっきりわかる。
朝よりは下がっているらしいし、もう回復してきているけどやっぱり少し心配だ。
そう思いながら、毛一つない彼の手を撫でる。手入れの行き届いている、綺麗な手。
そういえば体を拭いていた時、春さん何処にも毛が無かったっけ。
あそこまで体毛の無い高校生男子も珍しいと思う。春さん髭もないし。
すね毛も無いからタイツとかも似合うだろうな。
そういえば春さんがタイツを穿いているところを見た事が無い。
お姉さん、タイツは趣味じゃないのかな。春さんには絶対似合うと思うんだけど。
うん、良い。タイツの春さん良い。
「ううん」
「―――――っ」
春さんの寝言にドキッとして、小さく悲鳴を上げそうになった。
危ない危ない。いかがわしい考えはちょっと止めておこう。
春さんは今弱ってるし、ちゃんと看病しなきゃ。
そこで小さく振動音が聞こえた。カバンからだ。
多分携帯端末の振動だと思いかばんを開け、端末を取り出す。
見るとお母さんからの連絡だった。
部屋を静かに出て、指を画面にスライドさせて電話に出る。
『明ちゃーん? どうしたの、こんな時間になっても帰ってこないから心配したよー?』
そう言われて端末に表示されている時間を見る。
そこには19時と書かれていた。今日はバイトの予定もないから確かに遅い。
普段なら遅くても18時には帰るから、1時間もたてば心配になるだろう。
いや、その前に私、どれだけ春さんの手を握って見つめていたのだろうか。
学校終わって家に帰って買い物して来たから、ここに来たのは16時半頃のはず。
その後おかゆ作って春さんの体拭ていたとしても・・・最低でも一時間は眺めてる。
どれだけ春さんが好きなんだ、私は。
「ごめん、お母さん。春さんが風邪ひいたらしくて、お見舞いに来てたんだ」
『あー・・・なるほど、それで』
「すぐ帰るね」
『・・・んー』
心配かけた事を謝り、今から帰る旨を伝えると母は何か悩むように唸った。
どうしたのだろうか。こういう時のお母さんは何か突拍子の無い事を言いそうで怖い。
『春くん、まだ回復してない感じ?』
「そうだね、まだだと思う」
『よーし解った。ママお泊り許可しちゃう!』
「・・・は?」
一体何を言っているんだろうかこの人は。
大体お母さんが許可をしても、草野家の人達に迷惑がかかる。
そう思って反論をしようとするが、お母さんは畳みかけて来る。
『冬斗さんに連絡今入れたら、お店やってる間は面倒見れないから助かるわぁって。お姉さんも忙しいみたいだからありがたいってさー。んじゃそういうことでねー』
「な、お母さんま―――」
物凄い勢いで言いたい事だけを言って、お母さんは通話を切った。
おそらく唸ってる間に春さんのお父さんに連絡を取ったのだろう。
本当にあの人は行動力だけは凄いので困る。
「・・・まあ、いいか」
親公認で春さんの面倒を見ていろって言われたんだ。素直にそうしよう。
春さんの部屋に戻って、彼の眠るベッドの端に腰かける。
呼吸はいくらか落ち着いているけど、まだ熱そうな彼の額に手をのせる。
やっぱり、熱い。
「早く、良くなってくださいね」
静かに呟いて、寝ている彼の頬にキスをする。
自分の顔が、彼の熱さに負けないぐらい熱いのを感じていた。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる