49 / 144
咲の帰宅
しおりを挟む
「たっだいまー!」
元気よく声を出して玄関のドアを開ける。これで寝ていない限りは聞こえるだろう。
少し待つと、静かな足音を立てて娘が居間からやって来た。
その様子は平常通りだ。
「おかえり、何処に行ってたの?」
「ラブホ!」
「・・・そう、お帰りお父さん」
「ああ、ただいま」
私の答えにあきれた様子を見せる明ちゃん。なんだようー、聞かれたから正直に答えたのにー。
深夜になっても春くんが帰ってこないから気を利かせたのに。
まあ? 私達が楽しんでこなかったかっていえば、そりゃあ楽しみましたけど?
っと、そうだ、春くんはどうしたんだろうか。
「春くんは? 居ないの?」
「帰ったよ」
「え、そなの?」
てっきり泊って朝帰りだと思ってたのに。
あれ、じゃあ彼いつ帰ったんだろう。大丈夫なんだろうか。
「私達結構遅くまで冬斗さんのお店にいたんだけど、春くんいつ帰ったの?」
もし早くに帰っていたなら、事故に遭ったのかもしれない。
春くんって携帯持ってたっけ。持ってるよね。
事故ったならそこからどこかに連絡行くと思うんだけど。
しまったな、気を遣って電話にしなかったのはまずったかも。
ちょっと心配になって聞くと、明ちゃんは返事をせず黙り込んだ。
あれ、どうしたの明ちゃん
「・・・・・・・・・さっき、帰った」
首を傾げて娘の言葉を待っていると、大分溜めてから答えが返って来た。
こういう時、言い難くても変に誤魔化さないのが我が娘の可愛い所。私なら適当言いそう。
「へぇ~~」
なるほどなるほど?
それじゃあかち合わないわけだ。しかしそっかぁ、春くん朝帰りかぁ。
いやまあ、まだ夜は完全に明けてないけどさ。
いや、しかしそうかぁ、明ちゃんもとうとう大人になっちゃったかぁ。
「明ちゃん、初体験どうだったの?」
ニヤニヤしながら娘に問うと、娘は眉間に皴を寄せた。
あら、この子の事だから多少恥ずかしがるかなーって思ったんだけど、意外に冷静だね。
本選んでた時なんか完全に頭茹ってる様子だったのに。
「してないから」
娘は短くそう言って視線をたーくんの方に向ける。
あらぁ、じゃあなんで朝帰りなの?
けど私の疑問には答える様子無く、たーくんに向かって口を開く。
「お父さん、朝ご飯は食べる?」
「あるのかい?」
「うん」
「なら貰おうか」
「解った。用意してくるね」
そして朝食の相談をして、居間に戻っていった。
そのまま台所に向かって朝ごはんを用意してくれるんだろう。
・・・んー、何か引っかかるな。
「咲ちゃん、さっきのはちょっと軽率じゃないか?」
「あー、失敗したかなぁ」
春くんとの事を聞こうとした事を旦那様に咎められてしまった。
でも確かにちょっと失敗だったか。
けどなぁ、親としては確かめたくもあったのよ。何たって可愛い愛娘の事だもの。
「あの子は趣味こそあんなんだけど、身持ちはそんなに緩くないと、思う、よ」
「なんで後半途切れ途切れなのたーくん」
若干自信無かったな。
でもまあ、緩くない、っていうのは同意する。あの子は別に緩い子じゃない。
むしろ緩くないからこそ、タガが外れた時の暴走の可能性があると思ってる。
とはいえ相手は1年想っていた相手だし、それも構わないと思うけどね。
「ま、詳細は今度春くんに聞くとして、朝ご飯貰おう、たーくん」
「そうだね、その後に明に謝ろうか」
「へ、何を?」
さっきの軽口の事かな。
口は滑っちゃったけど朝帰りは事実だし、明ちゃんも言われる覚悟はあったと思うんだけど。
なんだかんだあの子、自分が被保護者って意識強いし。
「カメラ。仕掛けてたでしょ」
「あ」
やっべ、完全に忘れてた!
そうだ、それいうって約束だった!
・・・どうしよう、何で私謝る前にヘイト上げちゃったのかしら。
「た、たーくん、どーしよ」
「俺も一緒に謝ってあげるから」
「あうー」
自分のミスに気が付いてたーくんに縋りつくが、やはり謝る方向なのは変えられないらしい。
勿論この後ちゃんと謝った。
謝った後の明ちゃんは、今日一日私が居ないものとして扱ってきた。凄い泣きそうだった。
今度はもうちょっと上手くやろうと心に決めて、旦那様からは微妙な目線を送られていた。
ばれてる。
元気よく声を出して玄関のドアを開ける。これで寝ていない限りは聞こえるだろう。
少し待つと、静かな足音を立てて娘が居間からやって来た。
その様子は平常通りだ。
「おかえり、何処に行ってたの?」
「ラブホ!」
「・・・そう、お帰りお父さん」
「ああ、ただいま」
私の答えにあきれた様子を見せる明ちゃん。なんだようー、聞かれたから正直に答えたのにー。
深夜になっても春くんが帰ってこないから気を利かせたのに。
まあ? 私達が楽しんでこなかったかっていえば、そりゃあ楽しみましたけど?
っと、そうだ、春くんはどうしたんだろうか。
「春くんは? 居ないの?」
「帰ったよ」
「え、そなの?」
てっきり泊って朝帰りだと思ってたのに。
あれ、じゃあ彼いつ帰ったんだろう。大丈夫なんだろうか。
「私達結構遅くまで冬斗さんのお店にいたんだけど、春くんいつ帰ったの?」
もし早くに帰っていたなら、事故に遭ったのかもしれない。
春くんって携帯持ってたっけ。持ってるよね。
事故ったならそこからどこかに連絡行くと思うんだけど。
しまったな、気を遣って電話にしなかったのはまずったかも。
ちょっと心配になって聞くと、明ちゃんは返事をせず黙り込んだ。
あれ、どうしたの明ちゃん
「・・・・・・・・・さっき、帰った」
首を傾げて娘の言葉を待っていると、大分溜めてから答えが返って来た。
こういう時、言い難くても変に誤魔化さないのが我が娘の可愛い所。私なら適当言いそう。
「へぇ~~」
なるほどなるほど?
それじゃあかち合わないわけだ。しかしそっかぁ、春くん朝帰りかぁ。
いやまあ、まだ夜は完全に明けてないけどさ。
いや、しかしそうかぁ、明ちゃんもとうとう大人になっちゃったかぁ。
「明ちゃん、初体験どうだったの?」
ニヤニヤしながら娘に問うと、娘は眉間に皴を寄せた。
あら、この子の事だから多少恥ずかしがるかなーって思ったんだけど、意外に冷静だね。
本選んでた時なんか完全に頭茹ってる様子だったのに。
「してないから」
娘は短くそう言って視線をたーくんの方に向ける。
あらぁ、じゃあなんで朝帰りなの?
けど私の疑問には答える様子無く、たーくんに向かって口を開く。
「お父さん、朝ご飯は食べる?」
「あるのかい?」
「うん」
「なら貰おうか」
「解った。用意してくるね」
そして朝食の相談をして、居間に戻っていった。
そのまま台所に向かって朝ごはんを用意してくれるんだろう。
・・・んー、何か引っかかるな。
「咲ちゃん、さっきのはちょっと軽率じゃないか?」
「あー、失敗したかなぁ」
春くんとの事を聞こうとした事を旦那様に咎められてしまった。
でも確かにちょっと失敗だったか。
けどなぁ、親としては確かめたくもあったのよ。何たって可愛い愛娘の事だもの。
「あの子は趣味こそあんなんだけど、身持ちはそんなに緩くないと、思う、よ」
「なんで後半途切れ途切れなのたーくん」
若干自信無かったな。
でもまあ、緩くない、っていうのは同意する。あの子は別に緩い子じゃない。
むしろ緩くないからこそ、タガが外れた時の暴走の可能性があると思ってる。
とはいえ相手は1年想っていた相手だし、それも構わないと思うけどね。
「ま、詳細は今度春くんに聞くとして、朝ご飯貰おう、たーくん」
「そうだね、その後に明に謝ろうか」
「へ、何を?」
さっきの軽口の事かな。
口は滑っちゃったけど朝帰りは事実だし、明ちゃんも言われる覚悟はあったと思うんだけど。
なんだかんだあの子、自分が被保護者って意識強いし。
「カメラ。仕掛けてたでしょ」
「あ」
やっべ、完全に忘れてた!
そうだ、それいうって約束だった!
・・・どうしよう、何で私謝る前にヘイト上げちゃったのかしら。
「た、たーくん、どーしよ」
「俺も一緒に謝ってあげるから」
「あうー」
自分のミスに気が付いてたーくんに縋りつくが、やはり謝る方向なのは変えられないらしい。
勿論この後ちゃんと謝った。
謝った後の明ちゃんは、今日一日私が居ないものとして扱ってきた。凄い泣きそうだった。
今度はもうちょっと上手くやろうと心に決めて、旦那様からは微妙な目線を送られていた。
ばれてる。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる