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親離れ子離れ
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「・・・帰ってこないわねぇ」
「帰ってこないねぇ」
バーの一角で首を傾げる父親と娘。
時計を見ると、既に時間は11時。
だが春くんはまだ帰ってこない。
「連絡もないわねぇ」
「ないねぇ」
遅くなるなりなんなりの連絡も来ていないらしい。
というか、彼がこの時間になっても帰ってこない事自体滅多にないらしい。
「こっちも何にも来ないね」
「帰りが遅いと心配する連絡も来ないな」
明ちゃんからの電話も来ていない。此方も明ちゃんにしては珍しい。
今の所どちらの親にも何の連絡もない。
・・・となるとこれは、もしかするともしかするんじゃないだろうか。
「これは・・・明ちゃんやっちゃったか?」
冗談じゃ無く、本当に春くんを襲っちゃったのかもしれない。
本を選んでる時も大分脳みそ茹ってたからなぁ。
可能性はあり得なくないと思う。
「あー、うん、可能性はあるだろうなぁ」
たーくんはグイッと酒を飲みほして、何とも言えない顔を見せた。
お父さん的には娘に思う所があるんだろうねぇ。
「よしよし、今日は飲もうか」
「うん・・・」
頭を撫でられても沈んだ様子を見せる旦那様。弱ってる顔がラブリー。
しっかし、明ちゃんもやるねぇ。
押し倒せと思って無かったわけじゃ無いけど、ほんとにやるとは。
「我が家的には、何と言ったらいいか・・・」
冬斗さんが申し訳なさそうな顔で言って来るが、私は特に何とも。
というよりも、もし押し倒したなら良くやったという感じだ。
あの子は本当に欲しい物に関しては一歩引く所がある。
その足を踏み出したなら、親としては褒めてあげたい。
「大丈夫大丈夫。何があろうと、どうなっていようと本人達の選択だって。親がどうこう言う事じゃ無いよこんなの。本人達が決めて、本人達が幸せになろうとして、その結果なんだから」
「そう言って貰えるとありがたいわ」
私の言葉に冬斗さんはほっと息を吐く。
私達が娘親だという点で気を遣った様子を見せるが、こんなもの責任なんて問う物じゃない。
もし問うとすれば、その責任はお互い同じだ。
子供のリスクとか、生活のリスクとか、そんなものを男に押し付ける女に育てた覚えはない。
少なくとも私はそんな女である姿を見せた覚えはない。
旦那様を愛しているし、娘を全力で愛している。
彼を選んだ事に後悔はないし、娘を産んだ事は自分にとって最高の幸せだと思っている。
選ぶのは自分だ。良い事も悪い事も選択は自分でする事だ。
その考えが出来ないならパートナーなんて持つべきじゃない。
「私は明の親だから、あの子を信じてる。あの子が今どうあろうと、それはあの子が幸せになる為にやった事だと思ってる。責任っていうなら、自己責任だよ」
勿論あの子がまた小さい子供だっていうなら別だけど、自己判断が付く年だ。
あの年でもしふざけた事を言ったら、親の私が叱るだけだ。
ま、現実は私が叱られてばっかりなんですけどねー。
「強いなぁ、咲ちゃんは」
旦那様がテーブルに突っ伏しながら嘆いておられる。
これは酔っているな。たーくんお酒には結構強いんだけど、いきなり酔い始めるからな。
「はいはい、強いお奥さんですよ。ほらおいでたーくん、慰めてあげるから」
「咲ちゃんー」
酔っぱらっているせいで人目が有るのに素直に私の胸に顔をうずめる旦那様。
可愛いわぁ。頭なでなでしてあげよう。
髪の毛の手触りが気持ち良い。
「あらら、大分酔ってるわね。ついさっきまで普通だったのに」
「彼いきなりこうなるから。滅多にここまで飲まないんだけどね」
多分彼は親離れする娘が寂しいんだろうな。
明ちゃんがたーくんにべったりだったから余計だ。
でも、いつかはこういう時が来る。
「・・・やっぱり、私も少し、寂しいかな」
娘が大人になっていく事に寂しさを感じる。
それはあの子が小さい頃からずっと感じていた。あの子は出来のいい子だから。
ドンドン手がかからなくなって、頼ってくれなくなって、寂しい気持ちになって。
それを埋めるように、構ってもらえるように振舞って。
いつまで私の馬鹿に応えてくれるかな。出来ればもう少し、私達の明ちゃんでいて欲しかった。
焚きつけといて我が儘な話だけど、でもやっぱりちょっと寂しい。
そう想い、旦那様の頭をぎゅっと抱えながら、自分も寂しさを誤魔化していた。
「帰ってこないねぇ」
バーの一角で首を傾げる父親と娘。
時計を見ると、既に時間は11時。
だが春くんはまだ帰ってこない。
「連絡もないわねぇ」
「ないねぇ」
遅くなるなりなんなりの連絡も来ていないらしい。
というか、彼がこの時間になっても帰ってこない事自体滅多にないらしい。
「こっちも何にも来ないね」
「帰りが遅いと心配する連絡も来ないな」
明ちゃんからの電話も来ていない。此方も明ちゃんにしては珍しい。
今の所どちらの親にも何の連絡もない。
・・・となるとこれは、もしかするともしかするんじゃないだろうか。
「これは・・・明ちゃんやっちゃったか?」
冗談じゃ無く、本当に春くんを襲っちゃったのかもしれない。
本を選んでる時も大分脳みそ茹ってたからなぁ。
可能性はあり得なくないと思う。
「あー、うん、可能性はあるだろうなぁ」
たーくんはグイッと酒を飲みほして、何とも言えない顔を見せた。
お父さん的には娘に思う所があるんだろうねぇ。
「よしよし、今日は飲もうか」
「うん・・・」
頭を撫でられても沈んだ様子を見せる旦那様。弱ってる顔がラブリー。
しっかし、明ちゃんもやるねぇ。
押し倒せと思って無かったわけじゃ無いけど、ほんとにやるとは。
「我が家的には、何と言ったらいいか・・・」
冬斗さんが申し訳なさそうな顔で言って来るが、私は特に何とも。
というよりも、もし押し倒したなら良くやったという感じだ。
あの子は本当に欲しい物に関しては一歩引く所がある。
その足を踏み出したなら、親としては褒めてあげたい。
「大丈夫大丈夫。何があろうと、どうなっていようと本人達の選択だって。親がどうこう言う事じゃ無いよこんなの。本人達が決めて、本人達が幸せになろうとして、その結果なんだから」
「そう言って貰えるとありがたいわ」
私の言葉に冬斗さんはほっと息を吐く。
私達が娘親だという点で気を遣った様子を見せるが、こんなもの責任なんて問う物じゃない。
もし問うとすれば、その責任はお互い同じだ。
子供のリスクとか、生活のリスクとか、そんなものを男に押し付ける女に育てた覚えはない。
少なくとも私はそんな女である姿を見せた覚えはない。
旦那様を愛しているし、娘を全力で愛している。
彼を選んだ事に後悔はないし、娘を産んだ事は自分にとって最高の幸せだと思っている。
選ぶのは自分だ。良い事も悪い事も選択は自分でする事だ。
その考えが出来ないならパートナーなんて持つべきじゃない。
「私は明の親だから、あの子を信じてる。あの子が今どうあろうと、それはあの子が幸せになる為にやった事だと思ってる。責任っていうなら、自己責任だよ」
勿論あの子がまた小さい子供だっていうなら別だけど、自己判断が付く年だ。
あの年でもしふざけた事を言ったら、親の私が叱るだけだ。
ま、現実は私が叱られてばっかりなんですけどねー。
「強いなぁ、咲ちゃんは」
旦那様がテーブルに突っ伏しながら嘆いておられる。
これは酔っているな。たーくんお酒には結構強いんだけど、いきなり酔い始めるからな。
「はいはい、強いお奥さんですよ。ほらおいでたーくん、慰めてあげるから」
「咲ちゃんー」
酔っぱらっているせいで人目が有るのに素直に私の胸に顔をうずめる旦那様。
可愛いわぁ。頭なでなでしてあげよう。
髪の毛の手触りが気持ち良い。
「あらら、大分酔ってるわね。ついさっきまで普通だったのに」
「彼いきなりこうなるから。滅多にここまで飲まないんだけどね」
多分彼は親離れする娘が寂しいんだろうな。
明ちゃんがたーくんにべったりだったから余計だ。
でも、いつかはこういう時が来る。
「・・・やっぱり、私も少し、寂しいかな」
娘が大人になっていく事に寂しさを感じる。
それはあの子が小さい頃からずっと感じていた。あの子は出来のいい子だから。
ドンドン手がかからなくなって、頼ってくれなくなって、寂しい気持ちになって。
それを埋めるように、構ってもらえるように振舞って。
いつまで私の馬鹿に応えてくれるかな。出来ればもう少し、私達の明ちゃんでいて欲しかった。
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