後藤家の日常

四つ目

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その頃の両親

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「にっへっへ。良いじゃん良いじゃん。青春してんねぇ」

携帯端末を見て、にやけながら独り言を言う妻。
その中に映るのは娘の自室に仕掛けたらしい小型カメラからの映像だった。

「咲ちゃん、何してるんだ・・・」

妻の所業に呆れてしまう。流石に娘の自室にカメラをしかけるのはやり過ぎだろう。
それに娘の恋愛に口を出すのも、親としてどうかと思う。
特に私達は絶対に娘の事が言えない恋愛をしているのに、口を出せるわけがない。

「だって、愛娘の成長の記録だよ! 残しておかなきゃ!」

俺の言葉にキラキラした瞳で妻は答えた。そこに一切の曇りは見えない。
どうやら監視では無く記録らしい。
いや、だからといって娘の部屋にカメラを仕掛ける理由にはならない。

「咲ちゃん、やり過ぎだよ」
「うっ」

俺のはっきりと咎める声音の入った言葉に、妻は困った様子で唸った。
だが妻は間違いなく咎められる事を予想しているはずだ。何か返してくるに違いない。

「で、でもこれ、春くんのお父さんとお姉さんからも頼まれてるし」
「春輝君の?」

む、そういう風に返されると少し困る。もしかするとうちの娘を心配しての話かもしれないし。
春輝君は良い子だとは聞いているが、彼も男だ。間違いがないとは言い切れない。
親御さんとしては気にするのは仕方ないか?

「いや、でも、そうだとしても今回はやり過ぎだ」
「あう、やっぱそう?」

一瞬納得しかけた頭を振って、やっぱり駄目だと妻に言う。
妻も論破されるとは思って無かった様だ。
いたずらがばれた子供の様な顔で目線を泳がせている。

「ほら、早く切って。帰ったら明にちゃんと謝って、映像も消すんだよ」
「えー、でも春くんのお父さんとも約束しちゃったのにー」
「だとしても、娘の情事を覗くのは駄目だ」

妻から端末を取り上げて映像を消す。
自分も娘とその恋人の行く末が気にならないわけじゃ無いが、それとこれとは別だ。
娘達が付き合うなら、その事実は娘達の口から語られるべきだ。

「ちぇー、たーくんてばおかたーい」

した唇を突き出しながら文句を言う妻に端末を返す。
流石に一度消した映像をもう一度つける妻ではないと信じている。

「別の所がお硬いのは好きだけどねー?」

返された端末をポケットにしまい、私にしなだれる妻。
その発言はオヤジ臭いと思うのは気のせいだろうか。

「咲ちゃん、そういう所を気を付けないと、本当に明に嫌われるよ」
「うぐっ、ごめんなさい。あい、気を付けます」

俺に注意された事で、妻も流石に反省した様子を見せる。
基本的に俺は彼女の行動を許容するが、それでも許容して良い範囲という物がある。
今回の事は間違いなくやり過ぎだ。

「さ、行くよ咲ちゃん」
「はーい」

妻に声をかけて歩き出す。妻は元気よく返事をして俺の手に掴まった。
咲ちゃんじゃないが、明のあの様子を見てしまった以上帰るのは少し遅い方が良いだろう。
どうせなら春輝君の親御さんに謝りに行くか。彼の店が開くのは何時だったかな・・・。
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