後藤家の日常

四つ目

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素直な感想

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「何読んでんのあんた・・・あらぁ、とうとうあんたも目覚めたんだ」
「うを!?」

手元に集中していて、背後から寄ってきている姉貴に一切気が付けなかった。
驚いて飛びのく俺を見て、姉貴はにやにやと意地の悪い笑みを向けている。
持っている本がの内容が内容だからだろう。揶揄う気満々の笑みで俺を見下ろしている。

「うるせえな、近いうちにこれ全部読まなきゃいけねえんだから、邪魔すんなよ」
「あら、つまんない反応。何それ」

だが一切焦る様子無く姉貴に応えると、一瞬でつまらなそうな顔になった。
こういう時に変に弁明すると面倒な事になる。なるべくそっけなくあしらうのが一番だ。

「ふーん?」

姉貴は置いてある本の一冊を手に取り、パラパラとめくる。
おい、借り物なんだから雑に扱うなよ。

「それ俺の物じゃ無いんだから、汚したり癖付けたりすんなよ」
「ふーん、またなんでこんな物借りたの?」
「お勧めなんだってさ。俺こういうの読まないからな」

小説だけじゃなく、AVもエロ漫画もエロ雑誌も手に取った事はない。
何と言うか、あまり興味が湧かなかった。
知識としては有るけど、どこの誰とも知れない相手に欲情を抱く感覚が俺には無い。
男としてはある意味間違ってる気もするし、以前はもしかしたら俺は男としての感覚が無いのかもしれないなんて悩んだ事も有った。

けど今は違う。勿論手元のこれに興奮するとか、そういう意味じゃない。
ちゃんと女の子に惚れて、女の子にそういった気持ちを抱けると知れた。
あの子に、明ちゃんに対する想いが有ると、知る事が出来た。
そういう意味でも明ちゃんは、俺にとって特別な相手なのかもしれないな。

「んで、これ面白いの?」
「正直、実は結構面白い」

普通の、一般書籍では無い様な表現や、出来ない話が沢山詰め込まれている。
それは単純にエロい話と言う訳ではなく、規制がある類の話だからこその展開と言う物が有って、思っていたよりも面白い。
読む前はもっとこう、目的に沿った類の内容が詰め込まれているだけの物だと思っていた。

「こういう世界も有るんだな・・・」

あの子といると、俺の世界が広がって行く。
あの子と会ってから、どんどんと俺の知らない事を知る機会が増えていく。
あの子のおかげで、楽しい事がもっと楽しくなる。

明ちゃんが居ると、とても、楽しい。

「ふーん、あんたそれ、明ちゃんから借りたんでしょ」
「え、何で」

明ちゃんの事を考えていると、姉貴がそんな事を聞いてきた。
もしかして姉貴は、明ちゃんの趣味知ってたのか?

「あ、やっぱりそうなんだ。ふーん、そっか、明ちゃんこういうの読むんだー」

しまった! カマをかけられた!
どうしよう、明ちゃん隠したがってたのに、簡単にばらしちまった。

「おい、明ちゃんはこの趣味隠したがってるんだから、絶対言うなよ!」
「へぇ~?」

あ、しまった、これは逆に余計な事言った。
姉貴の笑みが面白いおもちゃを見つけた顔になっている。

「ねー、春ー。今度春に着てほしい服が有るんだけどさぁ~」

ニヤニヤしながらカタログを手に俺に迫ってくる姉貴。
くっそ、こいつマジで最悪だな。

「くっ、何着れば良いんだよ」
「話を解ってるねぇ。これこれ」

ニヤニヤしながら俺に着させたい服を指さす姉貴。
クッソムカつくけど、俺が少し悔しい思いをするだけで秘密が守られるなら仕方ない。
でも姉貴に言っちゃった事は今度ちゃんと謝っておこう。
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