後藤家の日常

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近くの商店街

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春さんとちゃんと話す事が出来て、今日は気分良く放課後を迎えられた。
帰りは余り一緒には帰れないのでそのまま素直に下駄箱まで直行。

「あ」

春さんの事で頭がいっぱいで、夕飯の買い物を忘れていた。
昨日買い物に行く予定だったのに、あんな事が有ったせいで完全に失念してた。
帰り道の傍にある商店街に行くしかないか。あそこはあまり行きたくないんだけどな。

「しょうがないか」

食材が無くては夕ご飯が作れない。諦めて素直に買い物に行こう。
そう決めたら靴を履き替えて、日傘をさして外に出る。

「今日も暑い」

朝に出る時はあまり暑さを気にしていなかった。
多分暑くなかったわけじゃ無く、私に余裕が無かっただけだろう。
春さんの事で頭がいっぱいで暑さも忘れていたんだ。
本当に、自分はあの人が好きすぎる。






商店街の入り口に差しかかった所で猛烈に家に帰りたくなった。
完全に見覚えのある人物が、商店街の人達と和やかに談笑している。
手にはコロッケかメンチカツかは解らないが揚げ物を持っている。
笑顔で両手の揚げ物を口にしているのを見て、げんなりした気分になる。

「来た日に限っているんだから」

狙ってやってるのかと思う位の遭遇率で、この商店街に来ると会ってしまう。
此処に来る頻度はけして高くないのにだ。
そしてそうなるとただでさえ目立つ私がさらに目立つ。
だから此処にはあまり来たくないんだ。

「あ、あきらちゃーん! おかえりー!」

私を見つけたらしく、両手に揚げ物を持ったままのお母さんが元気良く手を振っている。
無視して帰ろうかな。
だが向こうは私の気持ちなどお構いなしに、全力で走って来てタックルをかます。
結構痛いから止めて欲しい。

「えっへへー、おかえりー」
「痛い」
「それでも受け止めてくれる明ちゃん、だーいスキー」

文句を返す私のお腹に顔をぐりぐりしながらいうお母さん。
どうでも良いけど、衣が上着とスカートにつくから離れて。
油が付くと面倒なんだから。

「相変わらず仲がいいねー」
「うちの姉妹もこれぐらい仲良ければなぁ」
「ほんとほんと、しょっちゅう喧嘩ばっかり」
「うちの娘もこれぐらい可愛かったらなぁ」

商店街の店主達はそれぞれ思う事を口々に言い始める。
だがその内容は明らかに私を母か姉として見ている言葉だ。

私はこの人の母親では無いし、姉でもない。
言うのが至極面倒で、最近は一切その手の言葉は口にしないが。
どこに行ったって基本私がお母さんかお姉さんと呼ばれて呼び止められる。
いい加減面倒くさくなるのが普通だろう。

「今日はどしたのー?」
「食材買いに来た。とりあえず離れて」
「はーい」

お母さんの質問に答えて、とりあえず引きはがす。
素直に離れるとメンチカツを一気に食べて、私と手を繋ぐお母さん。
油でべたついてる。せめて洗うか拭くかしてからにして欲しい。
手袋が油で汚れるんだけど。

「にへへー」

心底嬉しそうな笑顔で私の手を何度も握りなおすお母さん。
何が楽しいんだか。手を放す気は無いんだろうなぁ、これ。
まあいいや。買い物済ませてとっとと帰ろ。




その後、うんざりするぐらい色々な人に話しかけられながら買い物をすます。
何でうちの母は商店街の人間ほぼ全員と顔見知りなんだ。
行く先行く先で何か貰ってるし。
ほんと疲れる・・・。
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