後藤家の日常

先輩の反応

やばい、落ち着け俺。笑顔を崩すな。
心臓がバクバクいってるのを絶対に悟られるな。

その笑顔は反則だろ。
明ちゃんは普段は割と無表情だから、今の不意打ち笑顔は反則過ぎる。
あの笑顔で大好きとか、思わず勘違いしてしまいそうになる。
この子天然で怖い。ああ、ドキッとした。

しかし気持ち悪いか。成程そこを気にしてたのか。
そんな事でこの子を気持ち悪いなんて思うはずがない。

というか、俺も男だし多少の性欲は持ってる。
そこまで強く無いけど、それでも無いわけじゃ無い。
女性でも、そういう欲が強い子だっているだろう。

そこでふと、明ちゃんが性欲が強いのかと、そういう思考になってしまった。
あ、やばい、やめろ、想像するな。ちょ、待て、体が正直過ぎる。
こんな所で反応されても困る。

「春さん、どうしました」

顔に集まる熱と下半身に集まる熱に焦って、明ちゃんに変化を悟られてしまった。
でも何を考えての事なのかは流石に解らない筈だ。そこまで悟られたら怖い。

「ん、ああ、いや、何でもないよ」
「そうですか？」
「うん、気にしないで」

落ち着け。この子は今不安なんだ。俺が変な動きをすればまた不安にさせる。
心を落ち着けて平静に保て。
幸い今俺の足には弁当箱が乗っている。ばれる事は無い。

「あ、春さん、口の横にご飯粒ついてますよ」
「え？」

彼女は俺の口元についていたご飯粒を取って、口に入れる。
そしてその指が彼女のぷにっとした唇を抑えているのを見て、また体が反応をする。
普段こんな事無いのに今日は一体どうしたんだ。

いや、解ってる。解ってるさ。
さっきまでは意識してなかったけど、今はがっつり意識してしまっているせいだ。

そういう物を集めるのが趣味な女の子と二人っきり。
その上その子は好きな子で、自分を大好きと言ってくれている。
そこから自分が都合の良い邪な想像してるせいだ。
落ち着け、落ち着けないと授業にも出れないぞ。

「そういえば、今日は坂本は来ないな」

とりあえず逃げるように、坂本の事を話題に出す。
そうだよ、なんで今日あいつ居ないんだ。あいつ居ればまだマシだったのに。
人のせいにするのは良くないのは解ってるけど、それでもそう思わずにはいられない。

「多分気を遣ってくれたんだと思います」

そしてその答えは至極単純な理由だった。
流石親友。明ちゃんがこの話をしに来るって知ってたんだな。
邪魔しないようにって今日は来なかったのか。

つまり逃げ場がない。かなりの大ピンチじゃないかこれ。
こんな物をもし明ちゃんに見られたら、今度は俺が明ちゃんの顔が見れない。
頼むから昼休み終わるまでに収まってくれよ・・・。