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雛の彼氏
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買い物袋を下げ、紐を繋げた彼氏の家の鍵をくるくる回しながら呼び鈴を押す。
暫く待って出て来なかったので鍵を使って中に入る。
部屋に入ると、玄関からすぐ見えるベットに彼氏が寝ているのを確認。
買い物袋を台所に置いてそっと忍び寄る。
この人は一回寝入ると、最低でも5時間は経たないと殴らない限り起きない。
だから寝入っているなら特に足音を消す必要は無いのだけど、何となく気分だ。
寝顔をのぞき込み、しっかり寝てるのを確認して、もそもそと自分も布団の中に入り込む。
彼氏の腕の中に入る様に、胸の中に包まれる様に自分から潜り込む。
んー、空也さんの匂いだ。落ち着く―。
「・・・んー、あれ、雛ちゃん?」
ありゃ残念、起きちゃった。てことは昼前から寝てたのかな。
お仕事お休みだったのか。
少し残念に思いつつ彼が起き上がるのを見ながら、自分はもそもそと彼の足の上に頭を乗せる。
「おはよう空也さん。ご飯にする? お風呂にする? それともあ・た・し?」
寝ぼけ眼を向ける彼に、上を向きながら胸元をはだけさせて問う。
自分で言うのも何だがあたしは胸が大きい。
日常生活でも空手でも邪魔な事この上ないけど、こういう時は効果的だね。
まあ、この人にそんなのが通用するならだけど。
「・・・それは帰って来た時にいう事で、寝起きに言う事じゃ無いんじゃないかな」
「ちぇー、ノリが悪いなぁ」
全く私に手を出す気のない彼氏の答えに、拗ねながら体に抱き付く。
そのまま思い切り鼻で息を吸う。あー、幸せ。
「雛ちゃん、寝起きで多分俺汗臭いと思うんだけど。寝汗凄いし」
「知ってるー」
だから抱き付いてるんだし。あたしは空也さんの匂い好きだもの。
彼は私の答えに頭をポリポリかきながら諦める。言っても無駄な事を知っているから。
「今日はどうしたの。来ないって言って無かった?」
「んー、親友がいちゃついてるの見てたら、空也さんに会いたくなったから」
「明ちゃんだっけ。好きな人と仲良くなれたんだっけ?」
「そうそう。はたから見たらどう見ても相思相愛なのに、何時まで経っても進展しないのよねー、あの二人」
あの二人はお互いがお互いに、自分の想いと相手の想いは別物だと思っている。
あたしはそれが解っていてその事を明に言って無い。だって、なんか、腹立つじゃん。
明には悪いと思うけど、踏み切らないあの男はとても気に入らない。
どう見てもアイツの行動は明が好きにしか見えないっていうのに。
「あたしぐらい素直になれば良いのにねー」
「あ、あはは、それもどうなんだろうね・・・」
彼の反応が微妙だ。まあしょうがない。
だってこの関係は、あたしが5年かけて作り上げた関係だ。
完全に押しかけ女房の様に、此処に足しげく通ってできた関係。
彼は親戚のお兄さんだった。
ある日の親戚の集まりで、あたしは端の方でぼうっと本を読んでる彼に目が行った。
あたしはそこで一目惚れして告白するも、自分と君は20も違う子供と大人だからねと、そんな理由で振られて納得出来なかった。
そして何度も告白して何度も振られという事を繰り返し、とうとう彼は今年根気負けした。
ただしその代わり、とある宣言をされてしまう。
君が成人するまで絶対に手は出さない。それでも良いなら、と言われた。
当時のあたしはそれでも空也さんと一緒になれるならと喜んで飛びついたのだが、今では後悔している。
この人、性的な事に関して反応がとても薄い。家にエロ本の一つもない。
この人と肌を重ねたいと思う我が身としてはとても辛い。
何度も挑発しているのだが、いつもこの通りだ。
胸を押し付けようが半裸になろうが、彼は一切反応しない。
「ちぇー、良いもんだ。いつか空也さんから誘わせて見せるもんねー」
「僕は自分の言った事を曲げる気は無いよ」
ニコニコ笑顔であたしに返す彼氏に悔しいと思いつつ、その笑顔を見てにやけてしまう。
惚れた方が負けという言葉が、良く解る。
どうせ勝てないのは知ってるから、その代わり別方向で攻めるだけだ。
「さって、晩御飯作るね」
「うん、ありがとう、雛ちゃん」
此処にはちょくちょく食事も作りに来ている。というか大半来てる。
なので来ない日の分にと冷蔵庫にも作り置きが有る。
因みにお金はあたしのお金ではない。
いや、あたしのお金も有るが、彼の食事代は別の所から出ている。
資金の出どころは彼の実家だ。
彼に初めて告白して振られた後の一年は正攻法で攻めていた。
だがこれではらちが明かないと、彼の実家のご両親に挨拶に行った。
いい返事は貰えて無いけど彼が好きですと。
我ながら酷い話だと思うし、かなり卑怯だと思う。
でもそれぐらい、なりふり構ってられないぐらい好きになったんだ。
ただ、それでご両親はあたしを気に入ってくれた上に、応援してくれる流れになった。
ご両親からあたしを勧める話も何度も有ったそうだ。
その過程で彼の合鍵を手に入れ、彼の食事を作りに来るようになった。
彼の母から、胃袋掴んでしまえばこっちの物だと言われた事が理由だ。
結果、胃袋は多少つかめたっぽいのと、情が沸いてくれたっぽいのでこの微妙な関係だ。
付き合ってると言えるのかもしれないが、一度も手を出されてない事に一抹の不安を覚える。
「今日は何作るの?」
「煮物と、豚の揚げ物ー。足りなそうだったらホイル焼きもやるよ?」
台所に立つあたしの横に立つ彼の顔と声に、ただそれだけで気分が良くなる私は、結局考えても無駄だと結論づけるしかない。
だって彼の真意がどうあれ、あたしは彼が好きなんだ。
あと3年。長い様な短い様な我慢の期間だ。
でも挑発するのは止めないけどね。
絶対いつか手を出させてやる。
暫く待って出て来なかったので鍵を使って中に入る。
部屋に入ると、玄関からすぐ見えるベットに彼氏が寝ているのを確認。
買い物袋を台所に置いてそっと忍び寄る。
この人は一回寝入ると、最低でも5時間は経たないと殴らない限り起きない。
だから寝入っているなら特に足音を消す必要は無いのだけど、何となく気分だ。
寝顔をのぞき込み、しっかり寝てるのを確認して、もそもそと自分も布団の中に入り込む。
彼氏の腕の中に入る様に、胸の中に包まれる様に自分から潜り込む。
んー、空也さんの匂いだ。落ち着く―。
「・・・んー、あれ、雛ちゃん?」
ありゃ残念、起きちゃった。てことは昼前から寝てたのかな。
お仕事お休みだったのか。
少し残念に思いつつ彼が起き上がるのを見ながら、自分はもそもそと彼の足の上に頭を乗せる。
「おはよう空也さん。ご飯にする? お風呂にする? それともあ・た・し?」
寝ぼけ眼を向ける彼に、上を向きながら胸元をはだけさせて問う。
自分で言うのも何だがあたしは胸が大きい。
日常生活でも空手でも邪魔な事この上ないけど、こういう時は効果的だね。
まあ、この人にそんなのが通用するならだけど。
「・・・それは帰って来た時にいう事で、寝起きに言う事じゃ無いんじゃないかな」
「ちぇー、ノリが悪いなぁ」
全く私に手を出す気のない彼氏の答えに、拗ねながら体に抱き付く。
そのまま思い切り鼻で息を吸う。あー、幸せ。
「雛ちゃん、寝起きで多分俺汗臭いと思うんだけど。寝汗凄いし」
「知ってるー」
だから抱き付いてるんだし。あたしは空也さんの匂い好きだもの。
彼は私の答えに頭をポリポリかきながら諦める。言っても無駄な事を知っているから。
「今日はどうしたの。来ないって言って無かった?」
「んー、親友がいちゃついてるの見てたら、空也さんに会いたくなったから」
「明ちゃんだっけ。好きな人と仲良くなれたんだっけ?」
「そうそう。はたから見たらどう見ても相思相愛なのに、何時まで経っても進展しないのよねー、あの二人」
あの二人はお互いがお互いに、自分の想いと相手の想いは別物だと思っている。
あたしはそれが解っていてその事を明に言って無い。だって、なんか、腹立つじゃん。
明には悪いと思うけど、踏み切らないあの男はとても気に入らない。
どう見てもアイツの行動は明が好きにしか見えないっていうのに。
「あたしぐらい素直になれば良いのにねー」
「あ、あはは、それもどうなんだろうね・・・」
彼の反応が微妙だ。まあしょうがない。
だってこの関係は、あたしが5年かけて作り上げた関係だ。
完全に押しかけ女房の様に、此処に足しげく通ってできた関係。
彼は親戚のお兄さんだった。
ある日の親戚の集まりで、あたしは端の方でぼうっと本を読んでる彼に目が行った。
あたしはそこで一目惚れして告白するも、自分と君は20も違う子供と大人だからねと、そんな理由で振られて納得出来なかった。
そして何度も告白して何度も振られという事を繰り返し、とうとう彼は今年根気負けした。
ただしその代わり、とある宣言をされてしまう。
君が成人するまで絶対に手は出さない。それでも良いなら、と言われた。
当時のあたしはそれでも空也さんと一緒になれるならと喜んで飛びついたのだが、今では後悔している。
この人、性的な事に関して反応がとても薄い。家にエロ本の一つもない。
この人と肌を重ねたいと思う我が身としてはとても辛い。
何度も挑発しているのだが、いつもこの通りだ。
胸を押し付けようが半裸になろうが、彼は一切反応しない。
「ちぇー、良いもんだ。いつか空也さんから誘わせて見せるもんねー」
「僕は自分の言った事を曲げる気は無いよ」
ニコニコ笑顔であたしに返す彼氏に悔しいと思いつつ、その笑顔を見てにやけてしまう。
惚れた方が負けという言葉が、良く解る。
どうせ勝てないのは知ってるから、その代わり別方向で攻めるだけだ。
「さって、晩御飯作るね」
「うん、ありがとう、雛ちゃん」
此処にはちょくちょく食事も作りに来ている。というか大半来てる。
なので来ない日の分にと冷蔵庫にも作り置きが有る。
因みにお金はあたしのお金ではない。
いや、あたしのお金も有るが、彼の食事代は別の所から出ている。
資金の出どころは彼の実家だ。
彼に初めて告白して振られた後の一年は正攻法で攻めていた。
だがこれではらちが明かないと、彼の実家のご両親に挨拶に行った。
いい返事は貰えて無いけど彼が好きですと。
我ながら酷い話だと思うし、かなり卑怯だと思う。
でもそれぐらい、なりふり構ってられないぐらい好きになったんだ。
ただ、それでご両親はあたしを気に入ってくれた上に、応援してくれる流れになった。
ご両親からあたしを勧める話も何度も有ったそうだ。
その過程で彼の合鍵を手に入れ、彼の食事を作りに来るようになった。
彼の母から、胃袋掴んでしまえばこっちの物だと言われた事が理由だ。
結果、胃袋は多少つかめたっぽいのと、情が沸いてくれたっぽいのでこの微妙な関係だ。
付き合ってると言えるのかもしれないが、一度も手を出されてない事に一抹の不安を覚える。
「今日は何作るの?」
「煮物と、豚の揚げ物ー。足りなそうだったらホイル焼きもやるよ?」
台所に立つあたしの横に立つ彼の顔と声に、ただそれだけで気分が良くなる私は、結局考えても無駄だと結論づけるしかない。
だって彼の真意がどうあれ、あたしは彼が好きなんだ。
あと3年。長い様な短い様な我慢の期間だ。
でも挑発するのは止めないけどね。
絶対いつか手を出させてやる。
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