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春さんの帰宅
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「ただいまー」
「おー、おかえり春」
家に帰ると、俺がこんな格好をしている元凶が声だけで迎える。
声の主は奥の部屋に居る俺の姉貴だ。
部屋に入ると、ファンション雑誌を読みながらベットに転がっていた。
「ねえねえ春、これ今年のなんだけど、春に似合うと思ったんだ」
そう言って、姉貴は付箋のついた雑誌を俺に見せて来る。
そこには完全に少女趣味としか言い様の無い服が載っていた。
俺は姉貴のその行動に、不快感を一切隠さない顔を向ける。
妹が欲しかったとか言う理由で、姉貴には子供の頃からおもちゃにされてる。
子供の頃は解らなかったから、言われるがままに女の子の格好をしていた。
どう話を付けたのか小学校も俺は女児服で通っていた。
小学校高学年に上がる辺りで何かが違うと気が付き、文句を言うも後の祭り。
男物を着ますと教師に言ったら何故かいじめが有るとかそういう話になり、俺が格好を揶揄われただとか、無理矢理男の服を着させようだとか良く解らないい話になった。
何だか面倒臭くなって、小学生時代はもう格好は諦めた。
着替えも女子と一緒で、女子達も全く気にしなかった。
誰かが異を唱えると思っていたのに、結局卒業まで一切なかった。
最終的に修学旅行にまで女子部屋に割り振られる始末だ。
だが中学では男物を、と思っていたら女子制服が届いた。
時期的にもう買い直す時間も無く、仕方なくその服で始業式に向かった。
結果、小学校から上がった女子達や、その事情を聞いた教師達から気を使われる始末。
結局小学校時代の焼き直しになった。
何が一番辛かったって、男からの告白がやたら多かった事だ。
俺は男だっつの。言っても信じやがらねえ奴の多い事。
高校には流石に男物をと隠れて制服を買いに行ったら、何故か女物が届いた。
流石に姉貴の仕業と気が付き文句を言ったが、完全に右から左だ。
しょうがないのでまた女子制服を着て通うはめになった。
だが流石にこのままいつまでも思い通りはしゃくで、何度も男物の服を買っている。
それでもいつの間にかそれが無くなり、女物の服が増えている現状だ。
一度家を出ようとしたら保証人にはならないと姉貴にも親にも言われ、親族にも根回しされた。
ここまでやるかと思ったが、逆らう気力が削げ落ち始めていたせいで色々と諦めてしまった。
結局未だ小さい抵抗をしているだけになってしまっている。
「自分で着ろよ・・・」
「あたしじゃこんな可愛いの似合わないもん」
「だったら弟に着せるなよ!」
「あたしより身長高くなって髭が生えたら考える、っていつもいってんじゃーん」
姉貴の身長は170越え。俺の身長は140ちょい。
この差をひっくり返すには既に高3の俺には絶望的過ぎる。
後数年でこれを追い越す程伸びるとは思えない。思わず溜め息が出る。
「あ、そうだ、明ちゃんに言っといたぞ。そのうち遊びに来るってよ」
「あいあいー」
姉貴の適当な返事を聞きつつ、服を着替える。
因みに此処は姉貴の部屋では無い。俺の部屋だ。
これもいつもの事なのでもうどうでも良い。
文句を言ったところで聞くわけがない。
「ねーえ春ー、そういえば最近明ちゃんとはどうなのよー」
「どうって、何が」
「そろそろ一回ぐらい押し倒したのかって聞いてんのー」
「ぶふぅ! げほっ、げほっ!!」
びっくりして唾液が器官に入った。苦しい。
いきなり何言い出しやがる、この姉貴。
「その様子だとまだかー」
「ま、まだとかそういう問題じゃねえだろ!」
「えー、私あの子好きだし、早く妹にしてよー」
「そういうの明ちゃんが困るから、絶対言うなよ」
あの子は俺を恋愛対象とは見ていない。あの好きは友人への好きだ。
何より彼女は俺の事を可愛いと常に言う。
言わない様に気を付けてるのは知ってるけど、小声で良く漏れている。
間違いなく男とは見られてない。むしろどうやったら見て貰えるのかという話だ。
「ったく、あんたあの子好きな癖に」
「うっせーな。姉貴には関係無いだろ」
「有るんですよー。あんた、明ちゃんがべた褒めした服お気に入りじゃない。あたしが何度言っても駄目で、あの子のいう事は聞いちゃうんだから解り易いにも程が有るわよ」
「ぐっ」
悔しいが何も言い返せない。
あの子と私服で遊びに行く時は、あの子が気に入るであろう服を見繕っていく。
そうするとあの子のいつもの半眼の表情が、満面の笑みに変わるんだ。
あれが可愛くてしょうがない。
あれを見る為なら恥ずかしいとか情けないとか、そんなものどこかに投げ捨ててやる。
「明ちゃんとは服の趣味合うしさー。早く手をだしてよー」
「うるせえ馬鹿姉貴」
だからと言ってそれとこれとは別の話だ。
あの子を想う気持ちは有っても、あの子が俺を見てないのを知っている以上踏み込めるかよ。
それにこんな変な姉貴が付いて来る変な男と深い付き合いなんて、普通に考えて嫌だろ。
「へたれ」
「うっせ」
知ってるよそんな事。振られるのが怖いんだよ俺は。
・・・初恋って実らないって良く聞くし、やっぱ怖えよ。
「おー、おかえり春」
家に帰ると、俺がこんな格好をしている元凶が声だけで迎える。
声の主は奥の部屋に居る俺の姉貴だ。
部屋に入ると、ファンション雑誌を読みながらベットに転がっていた。
「ねえねえ春、これ今年のなんだけど、春に似合うと思ったんだ」
そう言って、姉貴は付箋のついた雑誌を俺に見せて来る。
そこには完全に少女趣味としか言い様の無い服が載っていた。
俺は姉貴のその行動に、不快感を一切隠さない顔を向ける。
妹が欲しかったとか言う理由で、姉貴には子供の頃からおもちゃにされてる。
子供の頃は解らなかったから、言われるがままに女の子の格好をしていた。
どう話を付けたのか小学校も俺は女児服で通っていた。
小学校高学年に上がる辺りで何かが違うと気が付き、文句を言うも後の祭り。
男物を着ますと教師に言ったら何故かいじめが有るとかそういう話になり、俺が格好を揶揄われただとか、無理矢理男の服を着させようだとか良く解らないい話になった。
何だか面倒臭くなって、小学生時代はもう格好は諦めた。
着替えも女子と一緒で、女子達も全く気にしなかった。
誰かが異を唱えると思っていたのに、結局卒業まで一切なかった。
最終的に修学旅行にまで女子部屋に割り振られる始末だ。
だが中学では男物を、と思っていたら女子制服が届いた。
時期的にもう買い直す時間も無く、仕方なくその服で始業式に向かった。
結果、小学校から上がった女子達や、その事情を聞いた教師達から気を使われる始末。
結局小学校時代の焼き直しになった。
何が一番辛かったって、男からの告白がやたら多かった事だ。
俺は男だっつの。言っても信じやがらねえ奴の多い事。
高校には流石に男物をと隠れて制服を買いに行ったら、何故か女物が届いた。
流石に姉貴の仕業と気が付き文句を言ったが、完全に右から左だ。
しょうがないのでまた女子制服を着て通うはめになった。
だが流石にこのままいつまでも思い通りはしゃくで、何度も男物の服を買っている。
それでもいつの間にかそれが無くなり、女物の服が増えている現状だ。
一度家を出ようとしたら保証人にはならないと姉貴にも親にも言われ、親族にも根回しされた。
ここまでやるかと思ったが、逆らう気力が削げ落ち始めていたせいで色々と諦めてしまった。
結局未だ小さい抵抗をしているだけになってしまっている。
「自分で着ろよ・・・」
「あたしじゃこんな可愛いの似合わないもん」
「だったら弟に着せるなよ!」
「あたしより身長高くなって髭が生えたら考える、っていつもいってんじゃーん」
姉貴の身長は170越え。俺の身長は140ちょい。
この差をひっくり返すには既に高3の俺には絶望的過ぎる。
後数年でこれを追い越す程伸びるとは思えない。思わず溜め息が出る。
「あ、そうだ、明ちゃんに言っといたぞ。そのうち遊びに来るってよ」
「あいあいー」
姉貴の適当な返事を聞きつつ、服を着替える。
因みに此処は姉貴の部屋では無い。俺の部屋だ。
これもいつもの事なのでもうどうでも良い。
文句を言ったところで聞くわけがない。
「ねーえ春ー、そういえば最近明ちゃんとはどうなのよー」
「どうって、何が」
「そろそろ一回ぐらい押し倒したのかって聞いてんのー」
「ぶふぅ! げほっ、げほっ!!」
びっくりして唾液が器官に入った。苦しい。
いきなり何言い出しやがる、この姉貴。
「その様子だとまだかー」
「ま、まだとかそういう問題じゃねえだろ!」
「えー、私あの子好きだし、早く妹にしてよー」
「そういうの明ちゃんが困るから、絶対言うなよ」
あの子は俺を恋愛対象とは見ていない。あの好きは友人への好きだ。
何より彼女は俺の事を可愛いと常に言う。
言わない様に気を付けてるのは知ってるけど、小声で良く漏れている。
間違いなく男とは見られてない。むしろどうやったら見て貰えるのかという話だ。
「ったく、あんたあの子好きな癖に」
「うっせーな。姉貴には関係無いだろ」
「有るんですよー。あんた、明ちゃんがべた褒めした服お気に入りじゃない。あたしが何度言っても駄目で、あの子のいう事は聞いちゃうんだから解り易いにも程が有るわよ」
「ぐっ」
悔しいが何も言い返せない。
あの子と私服で遊びに行く時は、あの子が気に入るであろう服を見繕っていく。
そうするとあの子のいつもの半眼の表情が、満面の笑みに変わるんだ。
あれが可愛くてしょうがない。
あれを見る為なら恥ずかしいとか情けないとか、そんなものどこかに投げ捨ててやる。
「明ちゃんとは服の趣味合うしさー。早く手をだしてよー」
「うるせえ馬鹿姉貴」
だからと言ってそれとこれとは別の話だ。
あの子を想う気持ちは有っても、あの子が俺を見てないのを知っている以上踏み込めるかよ。
それにこんな変な姉貴が付いて来る変な男と深い付き合いなんて、普通に考えて嫌だろ。
「へたれ」
「うっせ」
知ってるよそんな事。振られるのが怖いんだよ俺は。
・・・初恋って実らないって良く聞くし、やっぱ怖えよ。
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