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お昼休み。
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昼休みの鐘が鳴り、教師が授業の終了と告げる。
教師が教室を出る前に教室はざわめき、全くこいつらはという視線を残して教師は去っていく。
いつも通りの光景を眺めながら、私は弁当箱をもって席を立つ。
それで一瞬、教室の空気が止まった。
何時もの事なので気にせず教室から出るとざわめきが戻る。これも何時もの事だ。
私は怖がられている。あまり教室に居ない方が皆も気が楽だろう。
だが私の意志は今そこに無い。私は単純に、春さんの所に向かっている。
こういう時何を理由にと悩む所だけど、私達にはお互いに共通の理由が有る。
『あまり教室に居たくない』
そういう理由で、知り合いを求めるのは可笑しな事じゃないだろう。
ただ私とあの人では理由が大きく異なるのだけど。
私は人を求めて。春さんは人除けを求めて。
居たくないというのは同じでも、理由は真逆だ。
春さんと知り合う前は雛と良く居たけど、最近は春さんとばかりだ。
雛は明を取られた―なんて言うけど、そんな事は無いと思う。
だって。
「おー、明ー、おそいよー」
「や、明ちゃん」
私より先に来てる事が多いんだ。
雛は私と春さんの事を応援してくれているが、いつも二人きりと言うのは嫌がる。
私の恋は応援するけど春さんはムカつく、と言っていた。
「雛、速いよ」
「だーって、早く来ないと『明ちゃん』が襲われちゃうじゃん?」
雛は私の言葉に対し、春さんを見ながらそう言った。
その目はいやらしい物を見る様なものだ。
春さんはそんな事考えないよ。むしろ考えるのは私だ。
「襲わねえよ!」
「騙されないぞ! こんなナリしてても男なんだからな!」
「お前は俺を何だと思ってるんだ」
「おかまの皮かぶり」
雛、それだと春さんがおかまで包茎っていう風に聞こえる。
多分、雛だからわざとだけど。
二人はいつもこんな感じだ。
「なんで坂本はそんなに俺を敵視するんだよ」
「あんたが居なきゃ明はもっと友達多かった」
「う、それについては悪いと思ってるよ」
「そんな事無いです。あれは私が勝手にやっただけですから」
二人が言っている事は、私が怖がられている原因の話だ。
それは春さんを助けた事。
春さんが襲われていた所に私が助けに入り。半数近くを病院送りにした。
その事実が学校中に広まった結果、今の状況が出来ている。
「大体あんた、あたしより強いくせに襲われてんじゃねーよ」
「流石に二桁相手とか普通にきついわ。手加減も出来なかったし」
この会話からも解る通り、実は助けに入る必要なんて無かった。
春さんは実はとても強い。武道に長けていて強いのではなく、単純に喧嘩が強い。
だから病院送りにした人間は、加減が出来なかった春さんがやった相手。
けど、そちらを私がやったという事になってしまった。春さんは今でもそれを気にしている。
実際は逆だし警察や学校側も解っているけど、生徒には関係無い。
詳しく話す事も色々と事情が有って出来ないので、誤解を解くのは諦めている。
「春さん、気にしてないですよ。そのおかげで春さんと知り合えたんですから」
「あー、うん、ありがと」
私の言葉に春さんは照れくさそうに礼を言う。
何にせよ、紆余曲折有ったけどお咎めは無かったんだ。気にする事無いと思う。
それに今言った通り、そのおかげで春さんと知り合えて仲良くなれた。
誰に怖がられようと知った事か。
流石に雛に避けられたら辛いけど、雛がそんな事をする筈も無い。
「もぐもぐ。いちゃついてんじゃねーよ」
「あ、ちょ、お前俺の弁当食うなよ!」
「ごちです」
「ごちですじゃねー! しかも肉ばっかくいやがった!」
「一寸味付け濃くない?」
「人の食っといて文句言うなよお前!」
二人のやり取りにクスクスと笑いが出る。仲いいなぁ、この二人も。
雛に彼氏が居なかったら少し嫉妬してる所だ。
春さんと雛が居れば退屈な学校も楽しい。さて、私も早く食べて少しのんびりしよう。
教師が教室を出る前に教室はざわめき、全くこいつらはという視線を残して教師は去っていく。
いつも通りの光景を眺めながら、私は弁当箱をもって席を立つ。
それで一瞬、教室の空気が止まった。
何時もの事なので気にせず教室から出るとざわめきが戻る。これも何時もの事だ。
私は怖がられている。あまり教室に居ない方が皆も気が楽だろう。
だが私の意志は今そこに無い。私は単純に、春さんの所に向かっている。
こういう時何を理由にと悩む所だけど、私達にはお互いに共通の理由が有る。
『あまり教室に居たくない』
そういう理由で、知り合いを求めるのは可笑しな事じゃないだろう。
ただ私とあの人では理由が大きく異なるのだけど。
私は人を求めて。春さんは人除けを求めて。
居たくないというのは同じでも、理由は真逆だ。
春さんと知り合う前は雛と良く居たけど、最近は春さんとばかりだ。
雛は明を取られた―なんて言うけど、そんな事は無いと思う。
だって。
「おー、明ー、おそいよー」
「や、明ちゃん」
私より先に来てる事が多いんだ。
雛は私と春さんの事を応援してくれているが、いつも二人きりと言うのは嫌がる。
私の恋は応援するけど春さんはムカつく、と言っていた。
「雛、速いよ」
「だーって、早く来ないと『明ちゃん』が襲われちゃうじゃん?」
雛は私の言葉に対し、春さんを見ながらそう言った。
その目はいやらしい物を見る様なものだ。
春さんはそんな事考えないよ。むしろ考えるのは私だ。
「襲わねえよ!」
「騙されないぞ! こんなナリしてても男なんだからな!」
「お前は俺を何だと思ってるんだ」
「おかまの皮かぶり」
雛、それだと春さんがおかまで包茎っていう風に聞こえる。
多分、雛だからわざとだけど。
二人はいつもこんな感じだ。
「なんで坂本はそんなに俺を敵視するんだよ」
「あんたが居なきゃ明はもっと友達多かった」
「う、それについては悪いと思ってるよ」
「そんな事無いです。あれは私が勝手にやっただけですから」
二人が言っている事は、私が怖がられている原因の話だ。
それは春さんを助けた事。
春さんが襲われていた所に私が助けに入り。半数近くを病院送りにした。
その事実が学校中に広まった結果、今の状況が出来ている。
「大体あんた、あたしより強いくせに襲われてんじゃねーよ」
「流石に二桁相手とか普通にきついわ。手加減も出来なかったし」
この会話からも解る通り、実は助けに入る必要なんて無かった。
春さんは実はとても強い。武道に長けていて強いのではなく、単純に喧嘩が強い。
だから病院送りにした人間は、加減が出来なかった春さんがやった相手。
けど、そちらを私がやったという事になってしまった。春さんは今でもそれを気にしている。
実際は逆だし警察や学校側も解っているけど、生徒には関係無い。
詳しく話す事も色々と事情が有って出来ないので、誤解を解くのは諦めている。
「春さん、気にしてないですよ。そのおかげで春さんと知り合えたんですから」
「あー、うん、ありがと」
私の言葉に春さんは照れくさそうに礼を言う。
何にせよ、紆余曲折有ったけどお咎めは無かったんだ。気にする事無いと思う。
それに今言った通り、そのおかげで春さんと知り合えて仲良くなれた。
誰に怖がられようと知った事か。
流石に雛に避けられたら辛いけど、雛がそんな事をする筈も無い。
「もぐもぐ。いちゃついてんじゃねーよ」
「あ、ちょ、お前俺の弁当食うなよ!」
「ごちです」
「ごちですじゃねー! しかも肉ばっかくいやがった!」
「一寸味付け濃くない?」
「人の食っといて文句言うなよお前!」
二人のやり取りにクスクスと笑いが出る。仲いいなぁ、この二人も。
雛に彼氏が居なかったら少し嫉妬してる所だ。
春さんと雛が居れば退屈な学校も楽しい。さて、私も早く食べて少しのんびりしよう。
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