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おじいちゃん
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「おじいちゃーん、いるー?」
勝手知ったる他人の家と、庭に入って縁側に回る。
何時もの事だから特に気にはしない。
そして家主も私に気が付き、笑顔で手を振って迎えてくれた。
「おお、おるぞ。明ちゃんか。今日も暑そうだなぁ」
「暑いよ」
「あっはっは。そりゃそうだ。すまん、すまん」
私の格好は夏でも長袖長ズボンだ。首元や手首足首まできっちり有るし、手袋もしている。
見ている方は暑苦しいだろう。実際暑い。暑くないわけがない。
だけど暑いのと火傷して病院行きなら暑い方を取る。
「んで、今日は友達と来たのか?」
そう言っておじいちゃんは私と反対側の、家の陰になっている方の庭に顔を向ける。
雛が反対側からこっそり回って驚かそうとしていたのだが、どうやらばれている様だ。
流石おじいちゃん。
「・・・雛ー、バレてるよー」
「えー、何でよー! マンガじゃないんだから分かんないでしょ普通!」
私が声をかけると、家の陰から雛がぷりぷりしながら出てきた。
家に入る前に驚かそうという算段だったのだけど、おじいちゃんには通用しなかった。
何時もながら謎の力を持つおじいちゃんだ。
「うちに明ちゃんが一人で来るなんて珍しいしな。後お前さん、足音もうちょっと殺さんと」
「これでも精いっぱい静かに歩いたもん!」
「あっはっは、それじゃ―しょうがないな」
雛の答えに笑うおじいちゃん。
そんなおじいちゃんの背後には勝手に家に上がり込み、背後からにじり寄る母の姿が。
おじいちゃん、愛弟子が背後から襲いかかろうとしてるよ。
「じじい覚悟ー!」
「甘いわたわけ!」
奇襲なのに叫んで後ろから襲い掛かるお母さん。背後から行く意味無い。
そしてその攻撃を容易くいなして畳に投げつけるおじいちゃん。
お母さん、物凄く格好悪い。
「うげっ!」
畳に叩きつけられて可愛くない悲鳴を上げるが、一応受け身は取っている。
まあ、取れる様に投げてくれてるから当然だけど。
それにしても綺麗に投げられた。多分お母さんも素直に投げられたんだろうな。
「お前は奇襲がしたいのか、真っ当に打ち勝ちたいのかどっちだ」
「うつつ、声をかけたので奇襲じゃないと言い張り、あわよくばぶん殴りたい」
「阿呆か」
腰をさすりつつ、意味の解らない事を言うお母さん。全面的におじいちゃんに同意だ。
この二人は私が子供の頃からこんな感じだ。
いや、むしろ今の方がお母さんの自由奔放さは増している気がする。
多分私が子供の頃の方が幾分か大人しかったはずだ。
「んで、今日はぞろぞろと何か用か?」
「遊びに来た」
「来たー!」
「そうかそうか」
おじいちゃんの質問に今度こそちゃんと答える私と雛。
お母さんは部屋の奥に行って、おそらくおじいちゃんのであろう茶菓子を勝手に食べている。
本当に自由だあの人。どうやったらあそこまで自由になれるんだろう。
私はずっとあの人の娘をしているけど、あの人の真似は出来ない。
「じじー。これ美味しいんだけど、これだけしかないのー?」
「お、おま、咲! 全部食うやつが有るか!」
楽しみにしていたらしい菓子を全部食べられ、お母さんの頭を掴んでギリギリと力を入れていくおじいちゃん。
どうやらよっぽどお気に入りの菓子だったみたい。おじいちゃん、結構本気で力を入れてる。
「い、痛い痛い! 茶菓子の一つや二つ良いじゃんか!」
「一つ二つじゃなくて全部食ったろうが! 楽しみにしてたのを全部食われたら普通怒るわ!」
「あはははははは!」
二人がじゃれついているのを見て大笑いする雛。私はため息が出るよ。
お母さんはもうちょっと落ち着いてほしい。
欲しいと思ったところでどうせ叶わない願いだとは知っている。諦めよう。
「私達、先に道場にいくから」
「二人共後でねー」
私と雛は二人を置いて先に道場に向かう。待ってたら長くなりそうだし。
先に着替えておこう。久々に道着を切るけど、やっぱり動けるかどうか不安だ。
酷く鈍っている事は無いと思うけど、雛の相手になるかが不安。
「え、ちょっと待って! 明ちゃん助けてくれないの!?」
「ええい、娘に助けを求めるな! 自業自得だろうが!」
「いった! じじい、ちったあ加減しやがれ!」
「煩いわバカ娘めが!」
あの二人は本当に仲が良いな。
お母さんが本気でああいう態度をとる相手はおじいちゃんだけだ。
だからあれも内心楽しんでいるんだと思う。だから気にするだけ負けだ。
でもなるべく早めに切り上げて欲しい。
勝手知ったる他人の家と、庭に入って縁側に回る。
何時もの事だから特に気にはしない。
そして家主も私に気が付き、笑顔で手を振って迎えてくれた。
「おお、おるぞ。明ちゃんか。今日も暑そうだなぁ」
「暑いよ」
「あっはっは。そりゃそうだ。すまん、すまん」
私の格好は夏でも長袖長ズボンだ。首元や手首足首まできっちり有るし、手袋もしている。
見ている方は暑苦しいだろう。実際暑い。暑くないわけがない。
だけど暑いのと火傷して病院行きなら暑い方を取る。
「んで、今日は友達と来たのか?」
そう言っておじいちゃんは私と反対側の、家の陰になっている方の庭に顔を向ける。
雛が反対側からこっそり回って驚かそうとしていたのだが、どうやらばれている様だ。
流石おじいちゃん。
「・・・雛ー、バレてるよー」
「えー、何でよー! マンガじゃないんだから分かんないでしょ普通!」
私が声をかけると、家の陰から雛がぷりぷりしながら出てきた。
家に入る前に驚かそうという算段だったのだけど、おじいちゃんには通用しなかった。
何時もながら謎の力を持つおじいちゃんだ。
「うちに明ちゃんが一人で来るなんて珍しいしな。後お前さん、足音もうちょっと殺さんと」
「これでも精いっぱい静かに歩いたもん!」
「あっはっは、それじゃ―しょうがないな」
雛の答えに笑うおじいちゃん。
そんなおじいちゃんの背後には勝手に家に上がり込み、背後からにじり寄る母の姿が。
おじいちゃん、愛弟子が背後から襲いかかろうとしてるよ。
「じじい覚悟ー!」
「甘いわたわけ!」
奇襲なのに叫んで後ろから襲い掛かるお母さん。背後から行く意味無い。
そしてその攻撃を容易くいなして畳に投げつけるおじいちゃん。
お母さん、物凄く格好悪い。
「うげっ!」
畳に叩きつけられて可愛くない悲鳴を上げるが、一応受け身は取っている。
まあ、取れる様に投げてくれてるから当然だけど。
それにしても綺麗に投げられた。多分お母さんも素直に投げられたんだろうな。
「お前は奇襲がしたいのか、真っ当に打ち勝ちたいのかどっちだ」
「うつつ、声をかけたので奇襲じゃないと言い張り、あわよくばぶん殴りたい」
「阿呆か」
腰をさすりつつ、意味の解らない事を言うお母さん。全面的におじいちゃんに同意だ。
この二人は私が子供の頃からこんな感じだ。
いや、むしろ今の方がお母さんの自由奔放さは増している気がする。
多分私が子供の頃の方が幾分か大人しかったはずだ。
「んで、今日はぞろぞろと何か用か?」
「遊びに来た」
「来たー!」
「そうかそうか」
おじいちゃんの質問に今度こそちゃんと答える私と雛。
お母さんは部屋の奥に行って、おそらくおじいちゃんのであろう茶菓子を勝手に食べている。
本当に自由だあの人。どうやったらあそこまで自由になれるんだろう。
私はずっとあの人の娘をしているけど、あの人の真似は出来ない。
「じじー。これ美味しいんだけど、これだけしかないのー?」
「お、おま、咲! 全部食うやつが有るか!」
楽しみにしていたらしい菓子を全部食べられ、お母さんの頭を掴んでギリギリと力を入れていくおじいちゃん。
どうやらよっぽどお気に入りの菓子だったみたい。おじいちゃん、結構本気で力を入れてる。
「い、痛い痛い! 茶菓子の一つや二つ良いじゃんか!」
「一つ二つじゃなくて全部食ったろうが! 楽しみにしてたのを全部食われたら普通怒るわ!」
「あはははははは!」
二人がじゃれついているのを見て大笑いする雛。私はため息が出るよ。
お母さんはもうちょっと落ち着いてほしい。
欲しいと思ったところでどうせ叶わない願いだとは知っている。諦めよう。
「私達、先に道場にいくから」
「二人共後でねー」
私と雛は二人を置いて先に道場に向かう。待ってたら長くなりそうだし。
先に着替えておこう。久々に道着を切るけど、やっぱり動けるかどうか不安だ。
酷く鈍っている事は無いと思うけど、雛の相手になるかが不安。
「え、ちょっと待って! 明ちゃん助けてくれないの!?」
「ええい、娘に助けを求めるな! 自業自得だろうが!」
「いった! じじい、ちったあ加減しやがれ!」
「煩いわバカ娘めが!」
あの二人は本当に仲が良いな。
お母さんが本気でああいう態度をとる相手はおじいちゃんだけだ。
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