後藤家の日常

四つ目

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母の力

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さて、明ちゃんは行ったし、仕事も目途が付いた。偶には家の事をしますかね。
とりあえず食事が終わった食器をもって台所に行く。
流しには二人が食べた分の食器が・・・ないですね、はい。知ってた。
とりあえず自分が使った食器を洗ってしまう。

「さて、何かやる事有るかな~ん?」

流しを触った感じ今日も態々磨いてるみたいだし、部屋の掃除でもするかなぁ。
そう思いながら、各部屋の隅等を指ですくってみる。

「あら明さん、こんな所にも埃が無いじゃありませんか! お風呂も朝から洗ってるってどういうことなのかしら!?」

あの子優秀すぎるでしょう? なんて素敵なのかしら!?
流石我が娘。チリ一つ許さない。
いや、流石に隅から隅までつつけば出て来るとは思うけど、それは流石に出来ない。
そんな事して娘の機嫌を損ねたらたまったものじゃ無い。

うーん、洗濯物は有るかなぁ・・・。
無いだろうなあと思いつつ洗濯籠を確認する。無いね、うん。
ベランダを見に行くと服は既に干してある。

うちのベランダは広いし、ちゃんと屋根も有るので雨を気にしなくていい。
ていうかシャッターも有るからべランダで部屋干しなんて不思議な事も出来る。
完全にうちの愛娘の為だ。

「・・・そうだ、夕ご飯の買い物!」

思い立ったら即冷蔵庫に走る。明ちゃんが家に居たら怒られるけど、しーらない!
冷蔵庫の状況を見てから何買うか決めようと冷蔵庫を開けると、紙が張ってあった。

『数日分の食材は買ってある。買わないように』

紙には綺麗な明ちゃんの字でそう書いてあった。

「先手打たれた!」

くっそ本格的にやる事が無いぞ!
どうする。母の力の見せどころが無い。

偶には母の力を見せつけて、流石お母さんとか言われたいのに。
言われた事今まで殆ど無いけどね。
だってうちの娘優秀過ぎるんですもん。あの子何でも出来ちゃうのよ?
ふふふ、流石わが娘。こう言ったら絶対嫌な顔するけど。

「・・・よし、しょうがない、飲むかぁ!」

折角開けたので、冷蔵庫からビールを取り出し開てける。
そしてそのままの勢いで口につけて傾ける。

「んぐんぐ、ぷはぁ! 朝っぱらから飲むアルコールは乙だね!」

ダメ人間全開だが知った事か! やる事がねえんだよ!
うちの娘が優秀過ぎるのが悪い! ああそうだ私悪くない!
というわけで理論武装も終わったので何かしよっと。

「明ちゃん新しいエロビデオでも買ってないかな。ちょっと漁りにいこ」

書庫という名の倉庫に行き、明ちゃんのコレクションを漁る。
この倉庫結構広いのに、置き場所無くなりつつあるじゃないか。
よくもまあ、これだけのエロ本とエロビデオ集めたもんだねあの子。

・・・流石に道具まで買い始めたのはちょっと驚いたけど。
使ったら怒られるかなぁ。流石に怒るだろうなぁ。
使ったこと無い道具とかもあるからちょっと興味が有るのよね。
未開封だからあの子も使った事は無いんだろうけど。

「たーくんがここにあるのは明ちゃんの私物って知ったとき、凄い顔してたなぁ・・・」

娘が真顔でエロ本読んでいたのを見た父親の気持ちはどんなものだろう。
合掌。

私は別にどうでも良いけどなぁ。
本やビデオで済ませてる分健全だと思うし、あたしの若い頃よりよっぽどマシだ。
あの子なんだかんだ、自身の経験は無いみたいだし。
たーくんもそれが解ってるから好きにやらせているんだろうしね。

あの人は私が一番ひどかった時期を知ってるから寛容なんだろう。
とはいえ娘が良くない方向に走っていないから、という大前提はあるだろうけど。

「それも時間の問題っぽいけどねぇ」

最近増えつつある先輩後輩物の本を手に取って呟く。
春くんはいい子だし、お姉さんは面白いし、とっとと手を出しちゃえばいいのに。
掴めば幸せになれるって思ったなら、躊躇せずに伸ばさなきゃ駄目なんだけどな。
少なくとも私はそうしなかったせいで色々大変だった。
たーくんが居なかったらこんなに幸せな家庭を持てたとは思えない。

ま、今はそれよりも面白い物を探す方が先だ。
何か無いかなー。

「あ、これ面白そう。これも」

とりあえず適当に面白そうな物を手に取って私室に戻る。
あ、ビール追加でとってこよ。
つまみも用意しなきゃ。
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