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第6話、現状確認
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『グロリア、向こうだ』
「はい!」
頭に響く声が、ガライドさんが魔獣へと誘導してくれる。
目の前に移る手が指差し、言われるままに全力で走る。
何時もより力が張る。体が凄く軽い。まるで風になったみたい。
『いたぞ、アレだ! 先ずは――――――』
「ああああああああああ!!」
声を上げて拳に力を入れて、見つけた魔獣の頭を殴り飛ばす。
すると魔獣の頭が粉々に吹き飛んで、それどころか地面まで吹き飛んだ。
そのせいで胴体が勢いよく吹っ飛んでいって、慌てて追いかけて捕まえた。
ホッとしながら捕まえた魔獣を食べようとして、ふと思い止まってガライドさんに問う。
「勝ち、ました。食べて良い、ですか?」
『・・・まさかただ殴るだけで倒すとは思わなかった。何ださっきの数値。おかしいだろう。それに何だあの一瞬の鮮やか過ぎる動きは。戦い慣れているなんてレベルじゃないぞ。そもそも強化された状態にもかかわらず、当たり前の様に順応していないか』
「数値? でも、何時も、こうやって、勝ってます。戦いは、慣れて、ます」
ただ今日はやけに調子がいい。お腹が空いているけど体が良く動く。
空腹でも闘う時は何時も力が張るけど、今日は何時も以上に地を蹴る力が強かった。
手足が自分の物じゃないから、力が入ると言って良いのか良く解らないけど。
『・・・私に適合する者が中々出てこない訳だ・・・負傷でもしないと私が要らないんだな』
「・・・食べて、良い、ですか?」
『すまない。少々予想外の事態に驚いた。その前にもう一度確認しておきたい。君は本当に、普段から変異獣を口に入れているのだな? 嘘ではないな? 大丈夫なんだな?』
また聞かれた。あの建物を出る前に、何度も何度も答えたのに。
そんなに嘘をついてる様に見えるのかな。本当の事しか言ってないのに。
「食べて、ます。嘘じゃない、です」
『・・・ならばこれ以上何も言うまい。食べる事は許可しよう。だがどうやって食べる?』
どうやって? どうやっても何も、食べるだけ。
許可は貰えたし、流れる血をごくごくと飲み、肉にがぶりとかぶりつく。
『・・・まさか生で行くとは思わなかった。しかもこれは・・・うむ? 何かがおかしいな』
頭の中でまた声が響いているけど、今は気にしない。
お腹空いた。もっと食べたい。いっぱい、食べたい。
それにどれだけ食べても怒られないって、主人は言っていた。
なら全部、全部食べてしまおう。めいっぱい食べてしまおう。
魔獣の毛と骨以外を食べ終わって、ふうと一息吐く。
水分を大分取り込めた。お肉もいっぱい食べられて大分体が軽い。
闘技場で負けたから、結局食べれてなかったし、やっと少し楽になった。
『ふむ、変異獣を取り込む事でエネルギーに変換しているのか。勝てば食べれる。つまり勝つ為に食べている。確かに君の力が有れば理論上は可能だろう。いや、理にはかなっているが、理屈でやっているとは思えんな・・・何時から闘い続けていたのか。この様な少女が』
「私は、ずっと、闘技場で、闘って、ました」
『闘技場? 君の様な少女が闘技場とは、非合法の闘技場の類か?』
「ひごう、ほう? 闘技場は、帝国の、ごらくって、主人は言って、ました」
『・・・帝国? 主人?』
「私は奴隷で、闘技場の闘士で、戦って勝てば、食べる事が出来、ました」
『・・・・・・奴隷?』
そこまで言うと、急に頭の中の声が静かになった。
どうしたんだろうと思い、首を傾げながらもぐもぐ食べる。
下手に話しかけて怒られたくはない。怒られたら痛い事になるかもしれない。
『グロリア、少々、君の事を聞きたい。質問をさせて貰えるかな』
「はい、わかり、ました」
そこからの質問は良く解らないのも有ったけど、応えられるだけ答えた。
合間に魔獣を何体か殴り飛ばして、食べながら会話を続けた。そして――――。
『成程成程。君の話から予測するに、私を作った者達は大昔に死滅しているな! 文明が一回滅んで、再興し始めたという所か! はっはっは、人間は逞しいな! まるでSF小説だ!』
「そう、なん、ですか?」
『はっはっは、困った事にそういう事になるな・・・ふざけるなよ! 適合者が現れれば使うという話ではなかったのか! 道理で時刻表示がおかしい訳だ! 施設と自動同期していたせいで私の内部情報も狂ってしまっただろう! というか人類が変異獣に適合してるではないか!』
「っ!?」
お、怒られた。痛いのが来る・・・あれ、痛くない。
そうか、奴隷の首輪はもうないんだった。
でもこの手足は、なんだか奴隷の首輪に似てる気がする。何となく。
『あ、す、すまない。私は制作者の趣味で、どうもAIの雰囲気が出来るだけ出ない様にされていてね。こう、無駄な感情の振れ幅が有るのだ。全く、奴は本当に碌な事をしない』
「・・・奴?」
『こっちの話だ。しかしそうなると、私の役目は在って無い様なものか。まさか無駄に組み込まれたデータにある物語の様な立場に自分がなるとは。もう私はただのガラクタと変わらんな。何が最高傑作の最強の兵器だ。使える者が居なければ何の意味もないではないか。全く』
「役目、ですか?」
『・・・さっき説明したつもりだったのだが』
「す、すみま、せん。お腹、すいてた、から」
それに解らない事だらけだった。私は奴隷だし、知らない事が多い。
あんまり色々言われても、解らないとしか返せない。
『まあ良い。人類が滅んでいないのであれば、それは良い事なのだろう。我々は人類が生きながらえる為の道具。使う必要無く人々は適応した。そう思う事にしよう。でないとやってられん』
「はぁ・・・そう、ですか」
『所で、君はこれからどうするつもりなんだ』
「私は・・・魔獣に勝って、お腹いっぱい、食べます」
『いや、とりあえず食欲を満たした後は、どうするのかと』
「? いっぱい、食べます、よ?」
もしゃもしゃと、さっきまた倒した魔獣を食べながら答える。
どれだけ食べても良いのは凄く嬉しい。食べる度に体に力が入る。
けどそれでも足りないって、まだまだ食べたいって体が言ってる気がした。
『・・・暫く行動の判断は私がやろう。任せると不安だ』
「わかり、ました。ガライドさんは、どこに、居るんですか?」
『・・・そこからだったか。仕方ない。見て解る様にしよう』
「ふえ!?」
パキンと、いきなり腕が折れて、そこから玉が出て来た。
驚いている内に腕が元通りになって、慌てて手を握って開く。
お、思った通りに動いてる。でも勝手に動いた。びっくりした。
『これが私、という事にしておいてくれ』
「え、あ、え? この玉が、ガライド、さん?」
『そうだ。その手足も私なのだが、まあその理解は追々にな。これから宜しく、相棒』
「あい、ぼう」
『そうだ。過酷であった君のこれまでの人生に報いが有る様に、君のこれからを私がサポートしよう。うむ、そう考えれば、今更起きた事も無駄ではないと思えるな』
相棒。闘技場でも、そんな事を言ってる人が、居た気がする。
意味は良く解らないけど、私に指示を出してくれるって事だろうか。
「わかり、ました。お願い、します。ガライド、さん」
『さんは不要だ。それでグロリア、手始めに何かしたい事はあるかな』
「お腹、いっぱい、食べたい、です!」
『・・・そう言えばそうだったな・・・また変異獣・・・魔獣を狩るとしようか。誘導しよう』
「はい!」
やった。やっぱり私に指示を出してくれるんだ。
今度の主人はいっぱい食べさせてくれる人だ!
「はい!」
頭に響く声が、ガライドさんが魔獣へと誘導してくれる。
目の前に移る手が指差し、言われるままに全力で走る。
何時もより力が張る。体が凄く軽い。まるで風になったみたい。
『いたぞ、アレだ! 先ずは――――――』
「ああああああああああ!!」
声を上げて拳に力を入れて、見つけた魔獣の頭を殴り飛ばす。
すると魔獣の頭が粉々に吹き飛んで、それどころか地面まで吹き飛んだ。
そのせいで胴体が勢いよく吹っ飛んでいって、慌てて追いかけて捕まえた。
ホッとしながら捕まえた魔獣を食べようとして、ふと思い止まってガライドさんに問う。
「勝ち、ました。食べて良い、ですか?」
『・・・まさかただ殴るだけで倒すとは思わなかった。何ださっきの数値。おかしいだろう。それに何だあの一瞬の鮮やか過ぎる動きは。戦い慣れているなんてレベルじゃないぞ。そもそも強化された状態にもかかわらず、当たり前の様に順応していないか』
「数値? でも、何時も、こうやって、勝ってます。戦いは、慣れて、ます」
ただ今日はやけに調子がいい。お腹が空いているけど体が良く動く。
空腹でも闘う時は何時も力が張るけど、今日は何時も以上に地を蹴る力が強かった。
手足が自分の物じゃないから、力が入ると言って良いのか良く解らないけど。
『・・・私に適合する者が中々出てこない訳だ・・・負傷でもしないと私が要らないんだな』
「・・・食べて、良い、ですか?」
『すまない。少々予想外の事態に驚いた。その前にもう一度確認しておきたい。君は本当に、普段から変異獣を口に入れているのだな? 嘘ではないな? 大丈夫なんだな?』
また聞かれた。あの建物を出る前に、何度も何度も答えたのに。
そんなに嘘をついてる様に見えるのかな。本当の事しか言ってないのに。
「食べて、ます。嘘じゃない、です」
『・・・ならばこれ以上何も言うまい。食べる事は許可しよう。だがどうやって食べる?』
どうやって? どうやっても何も、食べるだけ。
許可は貰えたし、流れる血をごくごくと飲み、肉にがぶりとかぶりつく。
『・・・まさか生で行くとは思わなかった。しかもこれは・・・うむ? 何かがおかしいな』
頭の中でまた声が響いているけど、今は気にしない。
お腹空いた。もっと食べたい。いっぱい、食べたい。
それにどれだけ食べても怒られないって、主人は言っていた。
なら全部、全部食べてしまおう。めいっぱい食べてしまおう。
魔獣の毛と骨以外を食べ終わって、ふうと一息吐く。
水分を大分取り込めた。お肉もいっぱい食べられて大分体が軽い。
闘技場で負けたから、結局食べれてなかったし、やっと少し楽になった。
『ふむ、変異獣を取り込む事でエネルギーに変換しているのか。勝てば食べれる。つまり勝つ為に食べている。確かに君の力が有れば理論上は可能だろう。いや、理にはかなっているが、理屈でやっているとは思えんな・・・何時から闘い続けていたのか。この様な少女が』
「私は、ずっと、闘技場で、闘って、ました」
『闘技場? 君の様な少女が闘技場とは、非合法の闘技場の類か?』
「ひごう、ほう? 闘技場は、帝国の、ごらくって、主人は言って、ました」
『・・・帝国? 主人?』
「私は奴隷で、闘技場の闘士で、戦って勝てば、食べる事が出来、ました」
『・・・・・・奴隷?』
そこまで言うと、急に頭の中の声が静かになった。
どうしたんだろうと思い、首を傾げながらもぐもぐ食べる。
下手に話しかけて怒られたくはない。怒られたら痛い事になるかもしれない。
『グロリア、少々、君の事を聞きたい。質問をさせて貰えるかな』
「はい、わかり、ました」
そこからの質問は良く解らないのも有ったけど、応えられるだけ答えた。
合間に魔獣を何体か殴り飛ばして、食べながら会話を続けた。そして――――。
『成程成程。君の話から予測するに、私を作った者達は大昔に死滅しているな! 文明が一回滅んで、再興し始めたという所か! はっはっは、人間は逞しいな! まるでSF小説だ!』
「そう、なん、ですか?」
『はっはっは、困った事にそういう事になるな・・・ふざけるなよ! 適合者が現れれば使うという話ではなかったのか! 道理で時刻表示がおかしい訳だ! 施設と自動同期していたせいで私の内部情報も狂ってしまっただろう! というか人類が変異獣に適合してるではないか!』
「っ!?」
お、怒られた。痛いのが来る・・・あれ、痛くない。
そうか、奴隷の首輪はもうないんだった。
でもこの手足は、なんだか奴隷の首輪に似てる気がする。何となく。
『あ、す、すまない。私は制作者の趣味で、どうもAIの雰囲気が出来るだけ出ない様にされていてね。こう、無駄な感情の振れ幅が有るのだ。全く、奴は本当に碌な事をしない』
「・・・奴?」
『こっちの話だ。しかしそうなると、私の役目は在って無い様なものか。まさか無駄に組み込まれたデータにある物語の様な立場に自分がなるとは。もう私はただのガラクタと変わらんな。何が最高傑作の最強の兵器だ。使える者が居なければ何の意味もないではないか。全く』
「役目、ですか?」
『・・・さっき説明したつもりだったのだが』
「す、すみま、せん。お腹、すいてた、から」
それに解らない事だらけだった。私は奴隷だし、知らない事が多い。
あんまり色々言われても、解らないとしか返せない。
『まあ良い。人類が滅んでいないのであれば、それは良い事なのだろう。我々は人類が生きながらえる為の道具。使う必要無く人々は適応した。そう思う事にしよう。でないとやってられん』
「はぁ・・・そう、ですか」
『所で、君はこれからどうするつもりなんだ』
「私は・・・魔獣に勝って、お腹いっぱい、食べます」
『いや、とりあえず食欲を満たした後は、どうするのかと』
「? いっぱい、食べます、よ?」
もしゃもしゃと、さっきまた倒した魔獣を食べながら答える。
どれだけ食べても良いのは凄く嬉しい。食べる度に体に力が入る。
けどそれでも足りないって、まだまだ食べたいって体が言ってる気がした。
『・・・暫く行動の判断は私がやろう。任せると不安だ』
「わかり、ました。ガライドさんは、どこに、居るんですか?」
『・・・そこからだったか。仕方ない。見て解る様にしよう』
「ふえ!?」
パキンと、いきなり腕が折れて、そこから玉が出て来た。
驚いている内に腕が元通りになって、慌てて手を握って開く。
お、思った通りに動いてる。でも勝手に動いた。びっくりした。
『これが私、という事にしておいてくれ』
「え、あ、え? この玉が、ガライド、さん?」
『そうだ。その手足も私なのだが、まあその理解は追々にな。これから宜しく、相棒』
「あい、ぼう」
『そうだ。過酷であった君のこれまでの人生に報いが有る様に、君のこれからを私がサポートしよう。うむ、そう考えれば、今更起きた事も無駄ではないと思えるな』
相棒。闘技場でも、そんな事を言ってる人が、居た気がする。
意味は良く解らないけど、私に指示を出してくれるって事だろうか。
「わかり、ました。お願い、します。ガライド、さん」
『さんは不要だ。それでグロリア、手始めに何かしたい事はあるかな』
「お腹、いっぱい、食べたい、です!」
『・・・そう言えばそうだったな・・・また変異獣・・・魔獣を狩るとしようか。誘導しよう』
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