上 下
3 / 10
第一章 放課後告白しそこねました。

二話 怪物

しおりを挟む
「・・・・・・・・・・・・」俺は目の前の光景に驚きすぎるあまり声も出なかった。なぜなら俺の目の前には身長は軽く三メートルはある巨人が十人ほど、逆に手のひらほどのサイズの人までいる。どこからどう見ても人間には見えない。牙はあるし爪は黒い。いったいなんなんだ!! こいつらは!?
そう言えば朝川はどこだ? い、いた! でも危ない! 怪物共の真下にいる。しかも怪物共はものすごい剣幕で朝川を睨んでいる。朝川を助けなきゃと思うのに怖くて体が動かない!
「ぁ、朝川危ねぇぞ・・は、早く逃げろ・・・」
やっとの思いで絞り出した声は弱々しかった。あー! ほんと情ねぇ俺。
「大丈夫よ。黒澤くんこそ逃げて。」
自分よりも何倍もでかいヤツらを前にしても一切動揺せず大丈夫という朝川がとても綺麗だなと場違いにもそんなことを思った。
「おい、そこのチビ。てめぇ誰だ?」
怪物の中の一人が聞いてきた。というかてめぇ誰だ? って、こっちが聞きたいんですけど・・・・・・でもここは適当に相手を刺激しないように答えておくか。
「えっと、俺はく・・・・・・」
「この人の名前は黒澤 蓮よ。私のクラスメイト。」
なぜか朝川が質問に答えてくれた。でもよくこんなに堂々としてられるな。なんか俺が知ってる朝川とはまるで別人みたいだ・・・・・・
「へぇ、蓮の種族は?」
「人間よ」
「マジか!人間なんて珍しい」
「馬鹿なの?ここは人間界よ。この世界で生活しているひとはほぼ人間よ。逆にあなた達のような存在の方がこの世界では珍しいわ」
え? え? いったいなんの話をしてるんだ!? 人間が珍しい? なんだそれ? どういう意味だ? そして朝川は何か知っているのか? 分からない。頭が混乱して壊れそうだ。
「ところで人間界に何しに来たの?」
「あ? 分かってるだろ? わかってるのに聞くなんて相変わらずだな。なぁ女王様よー」
は? また謎が増えたぞ。今この怪物が朝川の事を女王様って言ったよな? どういう事なんだ?
「もう一度聞くわよ。何しに人間界に来たの?」
「じゃぁこっちからの質問にも答えろよ。お前はなんで人間界で人間に変装してまで生活してるんだ?」
「そ、それは今関係ないわ。先に私の質問に答えて」
「チッ、分かったよ。俺らは19年前のあの事件でどっかの人間の体に入っちまったシャルムを奪いに来たんだよ」
「へぇ」
「で、お前も俺の質問に答えろ。なぜ人間界に居るんだ?」
「私はお前らがまたシャルムを狙うのは予測がついたわ。だからシャルムを奪われないようにするためにここにきたの。だから私とあなたは敵よ」
「フッ、大人しくシャルムを持つ人間を差し出せばいいのによー。お前にはもう分かってんだろ?どいつがシャルムを持ってるかくらい」
「当たり前よ」
「まぁでもお前も馬鹿だよなぁ。俺だって流石に気づいてるぜ? シャルムを持つ人間が誰か・・・・・・あいつだろ」
そう言って指さした先は俺だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

男女比:1:450のおかしな世界で陽キャになることを夢見る

卯ノ花
恋愛
妙なことから男女比がおかしな世界に転生した主人公が、元いた世界でやりたかったことをやるお話。 〔お知らせ〕 ※この作品は、毎日更新です。 ※1 〜 3話まで初回投稿。次回から7時10分から更新 ※お気に入り登録してくれたら励みになりますのでよろしくお願いします。 ただいま作成中

【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。 何もしていないのに冤罪で…… 死んだと思ったら6歳に戻った。 さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。 絶対に許さない! 今更わたしに優しくしても遅い! 恨みしかない、父親と殿下! 絶対に復讐してやる! ★設定はかなりゆるめです ★あまりシリアスではありません ★よくある話を書いてみたかったんです!!

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

処理中です...