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ところかわって現在。
ここ最近拠点としている街にとある用事があり俺は来ている。
確か…ネアルだかネルだかという名の小さな街だ。
実の所、薬師の街としか呼ばれない為なかなか聞く機会がない為街の人達でさえ正式名称を知らなかったりするらしい。かくいう俺も前述の通りあやふやだ。
だが、何故ここが薬師の街言うと、かつてこの街にはこの大陸、ユグドラル大陸一の賢者と呼ばれた薬師が居たから らしい。
そしてその賢者の名がネアルだかネルだったか…。
ともかくその名残でこの街は小さいながらも薬師があちこちに居て、その流れで街のサイズにしては冒険者ギルドや薬師所などが大きく長年賑わっている訳だ。
実際この街の大きさ程度だと冒険者ギルドはあっても薬師所、現代感覚でいうと病院兼薬局は無かったりする。
もちろんここを拠点にしているという事は俺も冒険者というよりはなんちゃって薬師として割と稼がせて貰ってる。
ありがとう街のおじいちゃん達。

ちなみに月夜街は早馬車で1日ほど揺られないと到着出来ない第五副都にあったので、これからはかなりの頻度で馬車に揺られてはるばるグルドの元へ通う羽目になるわけである。
めちゃくちゃ揺れるからふわふわのクッションを用意しておかないと…俺の腰が終わる予感しかしない。


「セオ!お帰り。いつぶり?今回は長かったね。」

「ただいまユウヤ、いつみても綺麗だな…会いたかった。依頼人が何故か任務先にまでついてきてしまってな…少々手こずった。しかし見慣れない格好だがまた作ったのか?」

「こちらこそいつも褒めてくれてありがとう。そう!わかる?着物っていうんだけど…かわいい?」

「ああ、華奢なユウヤによく似合っている。その髪型も黒髪が映えるな。」


目の前に居るのはセフレの一人、ルドウエン・セオドルフ。
つい先日まで任務で二ヶ月以上他国に居たらしい。
Aランク冒険者で、落ち着いた雰囲気のいい男だ。
ただ優男というわけではなくて、どちらかというとその冒険者独特のガタイのよさ、見た目からくる威圧感と、襟足だけ長いオールバックという髪型がマッチしてセオにそうそう気安く近付く人間を俺は見た事がない。
話してみれば会う度に少しの変化も気付いてくれる紳士なんだけどね。
それに今日は久々のデートだからか、普段の軽く武装した姿と違いきちんとジャケットとスラックスを着こなしている。こうして見ると高位貴族にしか見えない…これまたこの世界の基準で見ても高い身長と相まってすごくかっこいい。

対して俺の格好はというと、そう、実は着物を着ているのだ。着流しと羽織にしようかと思ったが、今日はグレーに少し紫が入ったような紬を着ている。
実はこの世界にも日本のような島国が東の方にあるらしく、そこから着物やら魚の生食…つまり刺身や寿司などの食文化が徐々に流行り始めているらしく、この前着物を着ていたお貴族様を見た時は超絶びっくりした。
そして早速この色気とカワイイが両立している着物を作り、必ず褒めてくれるセオに会いに来たわけだ。目立つには目立つが、黒が貴重なこの世界で黒髪の俺が多色目立つことなど気にするわけもなく。
褒められて超満足、大満足。承認欲求が満たされた。


「嬉しい。セオに褒めて貰いたくて着てきたんだ。ありがとう。」

「俺は思うままに言っただけだ。という事はそのキモノを着た姿を見たのは俺が初めてか?」

「そうだよ?今日のために作ったんだから。ほら…あの東にある国のものなんだって。」

「そうか、ユウヤの初めてを貰えて光栄だ。ありがとう。東…?ああ、ヤマト大帝国か。ふむ、そう言えば何度か見掛けた事があるかもしれんな。あまり思い出せんが。」


セオに問いかけられるままに答えれば、それを聞いた本人は大変満足そうな顔をしている。
しかし立ち話ばかりもしてられない。目の前の男の顔の良さといて立ちに加え、俺のこの容姿が加わって人だかりが出来そうなくらい目立っている。もちろんセオも気付いているのか、さっと隣へ来てエスコートしてくれるみたいだ。


「いーえ、どういたしまして。そっかあ、興味無い事はとことん覚えてないもんねセオは…。それで今日はどこに連れて行ってくれるの?」

「実は知り合いがレストランをオープンしたようでな。味は保証するから付き合ってくれるか?」

「もちろん。」

「ありがとう。では行こうか。」
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