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「じゃあもう時間だし出るよ。またね。」
「いや、でも送ります。」
「そうは言っても一階は多分月の子達しか居ないんじゃないの?大丈夫、いーから扉までで。」
「分かりました。またお逢い出来る日を心待ちにしております。」
「もー、堅苦しいのやめてってば。そういう時は素直にまた会いたいですっていえばいいんだよ。俺もまた会いたいから来るし。」
退出時間十数分前になり、グルドと扉の前で押し問答する事約数分。多分、退出時間を過ぎてれば問答無用であのマスターが顔を出すはずだから時間にちょっとは余裕があるとはいえギリギリに退出だなんて普通はするもんじゃない事ぐらい月夜街初心者の俺でも知ってる。
どうにかグルドを説得して、さあ出よう、と思えばグルドの口から出るのはまた形式ばった言葉。
一夜限りの付き合いや手馴れた月ならいざ知らず、お互い初心者マークなんだし、それに昨日気軽に話そうと言ったばかりだ。
俺がため息混じりに言えばグルドは目を丸くして復唱する。全く少しでも会話をしたらすぐ素が出ちゃうんだから、いちいち口上みたいなのはやめたらいいのに。
「え、あ、会いたい、です…?」
「よろしい。んじゃほんとにまたね。あ、そういえば精気?みたいなのあげてないけどいいの?」
扉の取っ手に手をかけたところではたと気付く。
そう、グルドは魔族と人間とのハーフである前に、曲がりなりにも淫魔…インキュバスなんだ。詳しいこの世界での生体は知らないけど元の世界ではそういう創造物には事欠かないほど溢れていた。
そこからの知識では人が取る食事では満たされなかったり、満たされるが万全ではなかったりと様々だったはず。確かに昨日は宣言した通り会話しかしていない。あと一緒に寝たくらい。
抱きしめられるように寝ていたは寝ていたけど…もしかしてあれで良かったりしたのか、な?
そう思い聞いてみれば、グルドの顔はまたみるみるうちに赤く熟れる。恥ずかしがり屋かおい。
「い、いえ、その…。」
「あ、もう五分前じゃん!いいからはっきり言ってよー見上げてるのも結構つらいんだからね。」
「ほ、欲しい!です!」
「なんだやっぱり要るんじゃん。分かった。どうしたらいいの?」
「く、口付けを…出来れば…。」
真っ赤に顔を染め上げもじもじとする様を横目に時計を見ればなんと退出時間五分前。
いかん、このままこのもじもじに付き合っていたら確実にマスターからのお迎えが来る。そもそも一人でここまで来なかった事だし、もしかしたら既にマスターが扉の前で待っている可能性も…。
その考えに辿りつけば、この恥ずかしがり屋さんにペースを合わせるという選択肢はもうない。
それに精気が必要だと分かっていて与えないというのも目覚めが悪い。
すぐ出なきゃいけないし出来ない事だったらどうしよ…と聞いていれば口付けでいいらしい。
簡単な事でよかった~と密かに安心する反面、キスしたいと言うだけでさらに照れ始めたグルドをみて俺がやれやれ先が長そうだなと思ったのは言うまでもないだろう。
「ん、じゃあ屈んで?」
「は、はい。」
そして俺に言われるがまま膝を少し折り屈むグルド。中腰寄りの体勢でも届かない俺とグルドの身長差では俺も背伸びしないと届かない。
やっとの事で合わさる唇。
「んぅ…はぁ…。」
「は、」
「んん…ん!?ぁう…!」
触れ合うだけだった唇を試しに少し開けば戸惑う事なく入ってくる舌が、手馴れた手付きで口内を蹂躙する。精気を吸われているのかなんなのか、今まででは経験した事のない、ゾクゾクとしたなにかが背中を這う。最初はぎこちなく背中に当てられただけだった腕が、キスが深くなるに連れて力がこもりついには抱きすくめられる形になり俺の足が浮いた。
不安定さに恐怖を覚え、グルドの首に回していた手をずらし背中を叩くがキスは深くなるというより激しくなる一方。
酸素が薄いとより口を開けば、飲み込めなくなった唾液が唇の端から顎をつたって喉をつたい襟元へ染み込む感覚がした。
「い"っ!?」
「は、はぁ、っ……!ば、バッカじゃないの!?俺を酸欠で殺す気!?」
「……!す、すみません!」
「もー、慣れてるんだか慣れてないんだかどっちなんだよー。」
いくら背中を叩いても無視されるもんだから終いには舌を噛んでやった。
痛さで我にかえったらしいグルド。反射的に顔は離したが抱きすくめる形で足を空中に浮かせたままだった俺を離さなかったのは評価しよう。あのまま離されてたら絶対ズッコケてたから。
それにしても、先程のキスは、はっきりいって気持ちよさより辛さの方がデカい。酸素不足で頭はくらくらするし真上を向かされているようなものだったから首が超痛い。今も骨が軋んでるのかコキコキ言ってる。
そっと降ろされ、今度は顔を真っ青にしたグルドから浄化魔法を掛けられる。そらね、二人分の唾液で口周りはおろか喉元まで凄い事になったからね。
うん、浄化魔法のおかげでさっきまであった不快感は消え去った。
「いや、でも送ります。」
「そうは言っても一階は多分月の子達しか居ないんじゃないの?大丈夫、いーから扉までで。」
「分かりました。またお逢い出来る日を心待ちにしております。」
「もー、堅苦しいのやめてってば。そういう時は素直にまた会いたいですっていえばいいんだよ。俺もまた会いたいから来るし。」
退出時間十数分前になり、グルドと扉の前で押し問答する事約数分。多分、退出時間を過ぎてれば問答無用であのマスターが顔を出すはずだから時間にちょっとは余裕があるとはいえギリギリに退出だなんて普通はするもんじゃない事ぐらい月夜街初心者の俺でも知ってる。
どうにかグルドを説得して、さあ出よう、と思えばグルドの口から出るのはまた形式ばった言葉。
一夜限りの付き合いや手馴れた月ならいざ知らず、お互い初心者マークなんだし、それに昨日気軽に話そうと言ったばかりだ。
俺がため息混じりに言えばグルドは目を丸くして復唱する。全く少しでも会話をしたらすぐ素が出ちゃうんだから、いちいち口上みたいなのはやめたらいいのに。
「え、あ、会いたい、です…?」
「よろしい。んじゃほんとにまたね。あ、そういえば精気?みたいなのあげてないけどいいの?」
扉の取っ手に手をかけたところではたと気付く。
そう、グルドは魔族と人間とのハーフである前に、曲がりなりにも淫魔…インキュバスなんだ。詳しいこの世界での生体は知らないけど元の世界ではそういう創造物には事欠かないほど溢れていた。
そこからの知識では人が取る食事では満たされなかったり、満たされるが万全ではなかったりと様々だったはず。確かに昨日は宣言した通り会話しかしていない。あと一緒に寝たくらい。
抱きしめられるように寝ていたは寝ていたけど…もしかしてあれで良かったりしたのか、な?
そう思い聞いてみれば、グルドの顔はまたみるみるうちに赤く熟れる。恥ずかしがり屋かおい。
「い、いえ、その…。」
「あ、もう五分前じゃん!いいからはっきり言ってよー見上げてるのも結構つらいんだからね。」
「ほ、欲しい!です!」
「なんだやっぱり要るんじゃん。分かった。どうしたらいいの?」
「く、口付けを…出来れば…。」
真っ赤に顔を染め上げもじもじとする様を横目に時計を見ればなんと退出時間五分前。
いかん、このままこのもじもじに付き合っていたら確実にマスターからのお迎えが来る。そもそも一人でここまで来なかった事だし、もしかしたら既にマスターが扉の前で待っている可能性も…。
その考えに辿りつけば、この恥ずかしがり屋さんにペースを合わせるという選択肢はもうない。
それに精気が必要だと分かっていて与えないというのも目覚めが悪い。
すぐ出なきゃいけないし出来ない事だったらどうしよ…と聞いていれば口付けでいいらしい。
簡単な事でよかった~と密かに安心する反面、キスしたいと言うだけでさらに照れ始めたグルドをみて俺がやれやれ先が長そうだなと思ったのは言うまでもないだろう。
「ん、じゃあ屈んで?」
「は、はい。」
そして俺に言われるがまま膝を少し折り屈むグルド。中腰寄りの体勢でも届かない俺とグルドの身長差では俺も背伸びしないと届かない。
やっとの事で合わさる唇。
「んぅ…はぁ…。」
「は、」
「んん…ん!?ぁう…!」
触れ合うだけだった唇を試しに少し開けば戸惑う事なく入ってくる舌が、手馴れた手付きで口内を蹂躙する。精気を吸われているのかなんなのか、今まででは経験した事のない、ゾクゾクとしたなにかが背中を這う。最初はぎこちなく背中に当てられただけだった腕が、キスが深くなるに連れて力がこもりついには抱きすくめられる形になり俺の足が浮いた。
不安定さに恐怖を覚え、グルドの首に回していた手をずらし背中を叩くがキスは深くなるというより激しくなる一方。
酸素が薄いとより口を開けば、飲み込めなくなった唾液が唇の端から顎をつたって喉をつたい襟元へ染み込む感覚がした。
「い"っ!?」
「は、はぁ、っ……!ば、バッカじゃないの!?俺を酸欠で殺す気!?」
「……!す、すみません!」
「もー、慣れてるんだか慣れてないんだかどっちなんだよー。」
いくら背中を叩いても無視されるもんだから終いには舌を噛んでやった。
痛さで我にかえったらしいグルド。反射的に顔は離したが抱きすくめる形で足を空中に浮かせたままだった俺を離さなかったのは評価しよう。あのまま離されてたら絶対ズッコケてたから。
それにしても、先程のキスは、はっきりいって気持ちよさより辛さの方がデカい。酸素不足で頭はくらくらするし真上を向かされているようなものだったから首が超痛い。今も骨が軋んでるのかコキコキ言ってる。
そっと降ろされ、今度は顔を真っ青にしたグルドから浄化魔法を掛けられる。そらね、二人分の唾液で口周りはおろか喉元まで凄い事になったからね。
うん、浄化魔法のおかげでさっきまであった不快感は消え去った。
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