1 / 1
小説の話に華が咲き
しおりを挟む「そう言えば、君ってどういう風に小説書いてる?」
文芸部の先輩がいきなりそう話しかけてきた。
「えっ、いきなりどうしたんですか。」
「ん?いや、普通に少し気になってね。それでどんな感じで書いてる?」
お、おぉ、なかなか食い気味だ。
流石小説のことになると目が無くなる先輩だ。
「うーん……どんな感じと言われても。」
「昨日もさ、この部室で小説書いてたじゃない。その時はどういう風に書いてたの?」
「昨日は確か『小説家になってみよう』に投稿するための小説を書いていました。その時は確か、ラブコメを書いてたんですが、こう書きたいなと思うシチュエーションを頭の中で思い浮かべてそれは書いていくという感じですね」
「ふむふむ、なるほど。そう言えば君のラブコメとかって会話文が多いじゃない?」
「まぁ、そうですね。ただ単に僕が会話文が好きというのもありますが殆どがそうです」
「だよね。でも私はさ、会話文を書くのが苦手だから実はけっこう羨ましいんだよね。どうやったら会話文が書けるようになるの?」
「僕の場合はよくネットに上がっているボイス台本を読んだりしてます」
「ボイス台本を?」
「はい。ああいう台本とかってほとんどが会話文というかセリフじゃないですか。だからこのセリフの場合自分だったらこう返すかなとか考えるだけでも良い勉強になると思いますよ」
「へぇー、なるほどね。これは良い話を聞いたわ」
「でも先輩、地の文とか情景描写ってすごく上手じゃないですか。僕こそすごく羨ましいですよ」
「うふふ、可愛い後輩君にそう言ってもらえて嬉しいわ」
先輩はそう言って嬉しそうに微笑む。
いつもは小説にしか興味のないような先輩がそう微笑むもんだから僕は不覚にも「ドキッ」としてしまう。
「そう言えば、君ってラブコメも良く書くよね。それもなんか理由があったりするの?」
「特に理由とかは無いですが、強いて言えばラブコメを書くのが1番楽しいからですかね。ファンタジーとか冒険ものとか書いてた時もあったんですけど、どうにも……そんな中でちょっとラブコメを書き始めてとても楽しかったのでそれからラブコメばかり書くようになりました」
「なるほど、そうだったのね。通りで君がファンタジーとか書かないわけだわ」
「そう言う先輩はファンタジーを書くのが得意ですよね?あの戦闘描写は流石と思います」
「ありがとう。だけどそれはお互い様よ?私も君の何気ない暖かな描写は凄いと思うわ」
「先輩にそう言ってもらえて嬉しいです!」
目標にしている先輩に褒められるのは素直に嬉しい。
「……でもホント君のラブコメってリアルよね。なんかこういう経験か何かあるの?」
「いやいや、そんなことは無いですよ。こんなことがあったら良いなという理想のようなものを書いているだけなので」
「ふぅん……こういう経験ないんだ。……良かった」
先輩はなぜか僕の言葉を受けて「ホッ」と安心したような顔をする。
「どうかしましたか、先輩?」
「う、ううん、なんでもないわ。……そろそろ休憩お終いね。再開しましょうか」
「あ、はい分かりました」
そうして僕らはまた机に向かって、シャーペンを動かしていく。
今日もこの文芸部の部室ではカリカリカリというペンを走らせる音が響き続けた。
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
武田慎吾の災難
冴月希衣@商業BL販売中
青春
【純情一途男子、武田慎吾のある日のお話】
『花霞に降る、キミの唇。』のスピンオフです。
☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆
◆本文、画像の無断転載禁止◆
No reproduction or republication without written permission.
あなただけ
冴月希衣@商業BL販売中
青春
【囚われたいのは、あなただけ】
眼鏡の奥の、その瞳。 あなただけに、ずっとずっと囚われたいの。 だから、あなたも——。
「ねぇ。ご褒美、ほしい?」
☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*・☆
『キミとふたり、ときはの恋。』 『花霞にたゆたう君に』の第一作です。
◆本文、画像の無断転載禁止◆
No reproduction or republication without written permission.
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
碧春
風まかせ三十郎
青春
碧色(へきいろ)。それは表面は澄んでいながら最奥までは見通すことのできない深い碧。毎日のように級友たちと顔を合わせているにも拘わらず、気心の知れた友達ですら、その心の奥底までは見透かすことができない。でも一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、それは深海の底から沸き上がる気泡のように目視できることがある。主人公わたしは電車内で不意に唇を奪われた。それも同じ学校の女生徒に。彼女の名前は瀬名舞子。今日転校してきたばかりの同級生。それ以後、わたしの受験生としての日常は彼女に翻弄されることになる。碧春(へきしゅん)。それはきらめく青春の断片。碧春。それは誰もが抱く永遠の思い出の欠片。
クールな天才美少女への告白の仕方
ウイング神風
青春
僕、渡辺陸には好きな人がいる。 少女はクールで天才芸術家。名前は布虹花。 そして、彼女はいま野球部のエースの告白を受けている。 偶然、僕はその場を遭遇してしまった。 虹花と僕の恋の行方はどうなるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる