小説の話に華が咲き

御厨カイト

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小説の話に華が咲き

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「そう言えば、君ってどういう風に小説書いてる?」

文芸部の先輩がいきなりそう話しかけてきた。

「えっ、いきなりどうしたんですか。」

「ん?いや、普通に少し気になってね。それでどんな感じで書いてる?」

お、おぉ、なかなか食い気味だ。
流石小説のことになると目が無くなる先輩だ。

「うーん……どんな感じと言われても。」

「昨日もさ、この部室で小説書いてたじゃない。その時はどういう風に書いてたの?」

「昨日は確か『小説家になってみよう』に投稿するための小説を書いていました。その時は確か、ラブコメを書いてたんですが、こう書きたいなと思うシチュエーションを頭の中で思い浮かべてそれは書いていくという感じですね」

「ふむふむ、なるほど。そう言えば君のラブコメとかって会話文が多いじゃない?」

「まぁ、そうですね。ただ単に僕が会話文が好きというのもありますが殆どがそうです」

「だよね。でも私はさ、会話文を書くのが苦手だから実はけっこう羨ましいんだよね。どうやったら会話文が書けるようになるの?」

「僕の場合はよくネットに上がっているボイス台本を読んだりしてます」

「ボイス台本を?」

「はい。ああいう台本とかってほとんどが会話文というかセリフじゃないですか。だからこのセリフの場合自分だったらこう返すかなとか考えるだけでも良い勉強になると思いますよ」

「へぇー、なるほどね。これは良い話を聞いたわ」

「でも先輩、地の文とか情景描写ってすごく上手じゃないですか。僕こそすごく羨ましいですよ」

「うふふ、可愛い後輩君にそう言ってもらえて嬉しいわ」

先輩はそう言って嬉しそうに微笑む。
いつもは小説にしか興味のないような先輩がそう微笑むもんだから僕は不覚にも「ドキッ」としてしまう。

「そう言えば、君ってラブコメも良く書くよね。それもなんか理由があったりするの?」

「特に理由とかは無いですが、強いて言えばラブコメを書くのが1番楽しいからですかね。ファンタジーとか冒険ものとか書いてた時もあったんですけど、どうにも……そんな中でちょっとラブコメを書き始めてとても楽しかったのでそれからラブコメばかり書くようになりました」

「なるほど、そうだったのね。通りで君がファンタジーとか書かないわけだわ」

「そう言う先輩はファンタジーを書くのが得意ですよね?あの戦闘描写は流石と思います」

「ありがとう。だけどそれはお互い様よ?私も君の何気ない暖かな描写は凄いと思うわ」

「先輩にそう言ってもらえて嬉しいです!」

目標にしている先輩に褒められるのは素直に嬉しい。

「……でもホント君のラブコメってリアルよね。なんかこういう経験か何かあるの?」

「いやいや、そんなことは無いですよ。こんなことがあったら良いなという理想のようなものを書いているだけなので」

「ふぅん……こういう経験ないんだ。……良かった」

先輩はなぜか僕の言葉を受けて「ホッ」と安心したような顔をする。

「どうかしましたか、先輩?」

「う、ううん、なんでもないわ。……そろそろ休憩お終いね。再開しましょうか」

「あ、はい分かりました」

そうして僕らはまた机に向かって、シャーペンを動かしていく。


今日もこの文芸部の部室ではカリカリカリというペンを走らせる音が響き続けた。








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