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メスガキ鬼っ子を分からせた件

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「あっれー???お兄さん、今日も一人なのー?もしかして、友達いないのかなー?」

「……チッ、うっさいぞ。遊びに来たんだったら、黙ってゲームしてろよ」

「アハハハハ!そうやって怒るってことは事実なんだね!あー、かわいそー、プークスクスw」


彼女は俺の肩に顔をのせながら、そう煽る。
俺はいつも通りのそれに腹立ちながらも無視をする。


「むっ、お兄さんのくせに私の言葉を無視するなんて、立場を弁えてないようですね、このこの!」

「痛い痛い痛い!おい!頭の角で背中を刺してくるんじゃないよ!」

「じゃあ、無視しないでよ」

「面倒臭い奴だな。お前こそ、人の家に遊び来てるんだから、立場弁えろよ!」

「ふんふふーん、なぁーんにも聞こえませーんw」


そう言いながら、腹立たしい顔で耳を塞ぐ彼女。


「まったく……なんでこんな奴助けちまったんだか」


思い返すこと数週間前。


俺は信号無視をして、猛スピードで走ってくるトラックから横断歩道上にいたこいつを助けた。
個人的にはそれで終わると思ってたんだが、何を思ったかこいつはその一週間後、俺の部屋を訪ねてきやがった。

その日からこいつは「家にいるのは暇だ」と言って、俺の家でゲームをしたりするようになった。


「あー、お兄さんをからかうの楽しー!ホント退屈しないな~」

「俺はお前のおもちゃでも何でもないんだがな。と言うか、用がねぇんだったら帰れよ!」

「用だったらあるよ。お兄さんをからかうっていう大事な用がね、アハハハハ!」

「……はぁ」


まったく、こんな性格じゃなかったら可愛い鬼っ子なのにな。
今の世界はそういう人外とかが普通にいる世界。
頭に角が付いている鬼も別に珍しくない。

だが、こんな所謂メスガキは見たこと無いぞ。
面倒臭い奴に気に入られちまったようだな。


「それにしても、ホントにお兄さん暇なんだね~。いつもずっとパソコンの前にいるし。ニートなの?」

「だから違うって言ってんだろ!俺だって仕事してんだよ!ホントうるせえな」

「ふ~ん、なんだニートじゃないんだ~、つまんないの~」

「……お前はニートの人に謝ってこい」

「まぁ、いいや。別にお兄さんがニートじゃなくてからかうのは変わらないからね~w、クスクスw」


手を口に当てながら、そう笑ってくる彼女。


多分俺が手が出てないのは年齢のおかげだろうな。
いつもグッと堪えてる。


だが、今日は違う。


「ヒャッ!急に立ち上がってどうしたの?あっ、まさか私に暴力でも振るう気?あぁ、でもお兄さんにはそんな度胸無いか?プークスクスw」


そんな彼女の言葉を華麗にスルーしながら、俺は台所へと向かう。

そして、あるものを持ってまた戻る。


「あれ~、お兄さん何持ってきたの?あっ、もしかして私のためにお菓子取ってきてくれたの?さっすがお兄さん!気が利くね~」

「……お前今日が何の日か知ってるか?」

「えっ?今日?……2月の3日だけど、いきなりどうしたの?」

「そうだ、2月の3日だな。なら、今俺が持ってるものが何か分かるよな?」

「2月の……3日……ハッ、ま、まさか!」


彼女は感づいた顔で後ずさりをする。


「そ、それは、ま、ま、豆!」

「あぁ、そうだ。今日は節分だよな。お前のような悪い鬼を退治する節分だよな!」


俺はそう語気を強めながら、手に持っていた袋から大豆を一掴み持つ。


「お前のような人を馬鹿にするような悪い鬼はこれで退治しないとな!」

「ヒ、ヒェッ!ご、ご、ごめんなさい!お、お願いだから豆だけは投げないで!」

「あん?そんなご都合主義が罷り通ると思ってんのか?」

「うっ、ご、ごめんなさい、ごめんなさい!も、も、もうしないから許して!」


そう彼女は縮こまる。
立派な角も心なしかシュンとしているように感じる。
本当に鬼は豆が弱点のようだ。


「本当にもうしないのか?」

「しない!しない!絶対にしない!絶対にお兄さんをからかうようなことは言わない!」

「本当の本当に?」

「本当の本当の本当!誓う誓う!絶対に言わないって誓う!心の底から誓う!」

「ふーん、そこまで言うか。……しょうがないから許してやろう」

「あ、ありがとう!」

「ただし、また俺を馬鹿にするような事を言ったら……、どうなるか分かったな?」

「うん!絶対に、絶対に言わない!」


彼女は頭を上下にブンブンと振る。


「よっし、それじゃあ、気を取り直してゲームでもするか。」

「うん!お兄さん!」

「……そのお兄さんと言う呼ばれ方も少し恥ずかしいな」

「え、で、でも私はこの呼び方好きだから……」


そう言いながら、彼女はまたシュンとなる。

……まぁ、いいか。お兄さんでも。


「はぁ、ならお兄さんでいいよ。仕方ないから」

「あっ……ありがとう!お兄さん!」

「うん。じゃあやろうか」

「うん!」






そうして、俺たちは二人で仲良く、楽しくゲームをしていくのだった。









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