クールなカノジョが不可抗力でデレる時

御厨カイト

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クールなカノジョが不可抗力でデレる時

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「ねぇ、詩織さん。ちょっとこっち向いてくれない?」

「えっ?いきなりなに?私忙しんだけど」

「まぁまぁ、いいから」

「こっちは良くないんだけど……まぁいいか」


仕方が無いなという雰囲気を漂わせながら、詩織さんはこちらに振り向く。


「で?なに?」

「じゃじゃーん!これ見て!」


俺はポケットの中からあるものを出す。


「これって……五円玉と紐?……何、催眠術でもする気?」

「おっ、正解!よく分かったね」

「……はぁー、しょうもない。そんな子供騙しの事するなんて」

「まぁ、いいじゃない!だからさ、ちょっとやらせてよ」

「はっ?嫌なんですけど。そんな非科学的なことをするなんて、馬鹿馬鹿しいわ」

「そう言って実は怖いんじゃないの~」

「……はぁー、めんどくさいわね。分かったわよ、やればよいじゃない」


そう言いながら、彼女はこちらをジッと見る。
……若干軽蔑を帯びている気がするのは気のせいだろう。

でも、ここで引くわけにはいかない。
いつもは冷たい詩織の本音を聞き出すチャンスなのだから!

……まぁ、ただそんな事をしたいが為に図書室で催眠術の本を探し回ったんだけどね。

えっと、確か本によるとこの五円玉を掛けたい相手の前で揺らせばよいのか、ふむふむ。

そうして、理解した俺は詩織に対して、右からゆっくりと五円玉を揺らして催眠術を掛け始める。


「そ、それじゃあいくよ」

「はいはい、勝手にどうぞ」


それから数分後



「あのー、し、詩織さん?」

「……」


多分、催眠術が掛ったのか、目がとろんとした様子でこちらをボーと眺めている。
一応目の前で手を振ってみたり、頬をつんつんと突いてみるが反応なし。

こ、これは効いたのでは!?
実はこの本について疑っていたけど、まさか本当に効果があるとは……


「これは成功したのかな……?」

「………(コクン)」


彼女は頷く。


お、おうマジか、ジーザス。

そ、それじゃあ早速本音を聞いていくことにするか……
いや待てよ、ここで本音を聞いて、「貴方の事なんて別に財布ぐらいにしか思っていないわ」って言われたらどうしよう。
流石にここまで酷い事は言わないとは思うけど、可能性的には全然ある。

……ヤバいな、冷や汗が出てきた。
本を持っている手がどんどんとビシャビシャになっていく。


そして、そんなこんなで数分経ち、そろそろ催眠が解けるんじゃないか心配になってきた頃。
まだ言い出せていない僕は、頬を叩いて活を入れる。

よ、よし、言うぞ。


「あ、あの……その、し、詩織さんは僕の事、す、好きですか?」


ふー、言い切ったぁ……。
で、詩織さんの反応は!?

詩織さんの方に耳を傾ける。


「……私は……君の事が好き……です……」

「!」


消え入る声だが確かに「好き」と言う言葉が聴こえた。

マ、マジかよ、マジかよ!
とんでもない嬉しさが体中を駆け巡る。
いつもは結構冷たいけど、本心では俺の事をちゃんと好いてくれていたんだな……

と言うかちゃんとこの本効果あったんだな。
疑ってすまんかった。

そう思いながら、もう一回よく内容を読んでみると……あれ?催眠の方法が違う……?
五円玉は左から揺らせって書いてあるな……
それにやり方を間違うと催眠術は掛からないとも……

確か俺、五円玉を右から振った気が……
という事は……まさか……!


そう思って、振り返ると……


顔を真っ赤にさせて、蹲っている詩織さんの姿があった。



「え、えっとー……し、詩織さん……?」

「こっちを見るな!」

「は、はい!すいません!」

「……今後、催眠術は禁止だからな!」

「えっ?」

「禁止だからな!」

「はいぃぃぃ!」





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