囲まれる俺に妬く彼女

御厨カイト

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囲まれる俺に妬く彼女

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「ここが凛の働く学校か~」


いつもはしっかり者でクールな凛が珍しく忘れ物をしたから俺は彼女が働く学校へと忘れ物を届けに来ていた。
凛はこの学校で養護教諭をしている。

ここに来るのは何だかんだ言って初めてだな。
それも女子校だというのだから少し緊張してくる。

そんなことを思いながら俺は受付に声を掛ける。


「あの、すいません。倉岡凛の夫でございますが、妻の忘れ物を届けに来まして」

「あぁ、倉岡先生の。倉岡先生はこの先を進んで右手の保健室にいらっしゃいます」

「分かりました。ありがとうございます」


そうして俺は凛のいる保健室へと向かう。


ガラガラガラ


「あっ、蓮。いきなりどうしたんだ」

「うん?あぁ、凛が今日は忘れていたお弁当箱を届けに来たんだ」

「そうだったのか。いや、まさか忘れているとは。蓮もせっかくの休みなのにすまないな」

「いやいや、大丈夫だよ。俺も初めて凛が白衣着ているところを見れて嬉しいし」


俺がそう言うと凛は少し恥ずかしそうに微笑む。


「そうジロジロ見られるのは少し恥ずかしい所があるが、蓮にそう言ってもらえて嬉しいよ」

「あ、そうだ。これお弁当箱」

「ありがとう」

「次から忘れないようにしてよ」

「フフッ、そうする」

「それじゃあ、俺行くからさ。お仕事頑張って」

「あぁ、蓮こそありがとうね」

「うん、それじゃあ」


そうして、俺が扉を開けて帰ろうとしたその時。


「!?」


ドドドドドドドドドとたくさんの女子生徒がこの保健室に入ってくる。


「ねぇ、凛先生!一緒にご飯食べよう!」

「ねぇ、聞いてよ凛先生。ウチの彼氏がさぁ………」

「ねぇ、今日の髪型可愛くない、凛先生?」


………どうやら俺の嫁はとても生徒に人気があるようだ。
この空気を壊さないように邪魔者はさっさと退散しましょうかね。
そう思って、静かにこの部屋から出ようとしたその時、


「ねぇ、この人が凛先生の旦那さん?」


……なんか嫌な予感がする。

凛が「うん」と答えた瞬間


「ねぇ、凛先生って家だとどういう感じなの?やっぱりクールな感じ?」

「ねぇ、凛先生の旦那さんは一体何の仕事してるの?」

「ねぇ、」「ねぇ、」「ねぇ、」


………まずい事になった。
まさかこんなにも女子高生に囲まれることになるとは。
嬉しいという感じよりも怖い……


まさかこんなにも女子高生の好奇心というのは強いものなんて………
うーん、一体どうしたものか………


凛に助けを求めようとしても何故か凛は「ムスッ」とした顔してるし。
いやなんで?


ど、どうしよう?
ピーチクパーチク、質問の嵐が降り注いで、こ、怖い。

そんなことを思っているといきなり首元を引っ張られる。
そして、




「蓮は私のものだ!君たちのような小娘には絶対に渡さない!」




俺は凛の胸元でギュッと抱かれ、凛は声高らかにそう宣言していた。

……恥ずかしい


学生たちの反応はと言うと一瞬静かになった後に、まるでスピーカーかと思うほどの「キャー!(≧▽≦)」という声が鳴り響いた。


********


その後はと言うと学生たちは空気を読んだのか、そそくさと保健室から出ていった。


「はぁー、すまないな蓮。まさかこんなことになるとは」

「いやいや、凛のせいじゃないよ。それに仕方がないと思うしね。これぐらいなら大丈夫だよ」

「そうかすまない。あいつらによく言っておかなければ」

「個人的には凛に言われた言葉の方がびっくりしたけどね」


俺がそう言うと凛は少し顔を赤らめる。


「あ、あれは………女子高生に囲まれた蓮がなんか嬉しそうにしていたから、なんかもやもやして………」

「え?嬉しそうにしてた?」

「なんかニヤニヤしてたから、嬉しいのかと」

「個人的には結構困ってたけどね」

「そうだったのか。それでも結果オーライだろう。君を助けることが出来たし、私の想いも知ることができた」

「確かに、それはそうだね」

「そうだろう?」


そうして、凛は「うふふ」と微笑む


「それじゃあ、そろそろホントに帰ることにしますかね」

「そうか、蓮今日はホントありがとう」

「いやいや、大丈夫だよ。凛こそお仕事頑張ってね。そうだ今日は凛の好きなカレーを作る予定だから」

「ホントか!それは楽しみだ。よっし、午後からのお仕事も頑張ろうかな」

「やる気になったようで良かった。それじゃあ、またね」

「あぁ、また」


そうして俺は保健室から出て、廊下を歩く。
なんだか珍しい姿を見ることが出来て良かった。
俺は凛が叫んだあの言葉を思い出して「フフッ」と微笑む。







そんな俺に対して、女子高生が質問攻めしてきたのはまた別のお話。










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