女の勘、なぜ分かる

御厨カイト

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女の勘、なぜ分かる

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今日も俺は妻に「接待があるため夕飯は要らない」とメールを送る。

そして、その足で別の女の元へ行き、女の手料理を食べ、色々話をし、最後にキスをして自宅へ向かう。
かれこれ、こんな生活をして半年以上たっているが未だに妻にはバレていない。
我ながら最高なんじゃないかと自画自賛する。

そんな自分の行動力に心の中でにやりと笑いながら、玄関のドアを開ける。


「ただいま」


……返事が無い。
もう寝てるのかな。


ネクタイを解きながら、リビングへと向かう。


「……なんだ、いたのか」


暗かったリビングの電気をつけると、机に座っている妻がいる。

完全に誰もいないと思っていただけに少しびっくりする。


「いるのならちゃんと返事してくれよ。びっくりした」

「……あなた、最近、いやここ半年ぐらい接待の数が多くないかしら」


ポツリと呟く。


「あぁ……今は会社が大きくなっているところだからな。こういう付き合いが多くなるのは仕方が無いだろ」

「にしては、帰る時間もいつも遅くない?」

「色々話し込んだりするから。ただ高い夕飯を食べるだけじゃないんだよ、こっちは」


こういう事を質問されるのも想定通り。
あらかじめ用意していた言葉で答える。


「ふぅん……」


彼女はチラッとこちらを見る。


「実は接待なんかじゃなくて、別の事でもしてんじゃないの?」

「別の事?例えば?」

「そうね……他に女がいるとか」

「……お前、夜遅くまで仕事を頑張っている俺になんてことを言っているんだ」

「例えばって言ってるでしょ。そんなに怒らないでよ」

「……あぁ、すまない。だが、その言葉は看過できないな」

「それに関してはごめん。……そうよね、あなたは浮気なんかしないわよね」

「当たり前だろ。お前という存在がいるんだから」

「そう言ってくれて安心するわ。そう言えば今日は何処で食べてきたの?」

「駅前のあの良いフレンチをご馳走になった。昼飯を食ってなかったから、すごく美味しかったよ」


俺はスーツを上着掛けに掛けながらそう言う。


「それがどうした?」

「いや、ちょっと気になって。なるほどね……」

「……?一体なんだよ、教えろよ」

「……じゃあ言うけど、そのワイシャツの赤いシミどうしたの?見たところケチャップみたいだけど」

「赤いシミ?」


……ホントだ。
ワイシャツの右胸らへんに100円玉ぐらいの赤いシミが出来ている。


……まさか、今日の夕飯はオムライスだったから、そのケチャップか?
クッソ、何で気づかなかったんだ俺!


「……あぁ、もしかしたらフレンチを食べた時に付いたのかもな」

「あなたが食べたって言っていた、あのフレンチのお店はドレスコードがあるのよ?スーツ脱がないじゃない」

「じゃ、じゃあ、昼飯食った時に付いたのかも」

「さっき昼飯食べてなかったって言ったじゃん」

「あっ、朝着た時にはもう付いていた気が」

「覚えて無いの?今日着ているシャツは昨日の夜、クリーニングから帰って来てビニールを掛けていたのよ?」


冷や汗が流れる。
彼女はジッと俺の目を見ている。


「ふぅ……まぁいいけどね……」


溜息をつきながら、キッチンへと向かう。


「疲れてるでしょ?お酒飲む?」

「あ、あぁ、貰うよ」


少しして、


「はい、どうぞ」


コップに入ったビールが目の前に置かれる。


「あ、ありがとう……」


……飲むか。
コップ一杯、グイっと飲む。

普段は好きなビールの味なのに、今じゃあ緊張の所為か味がおかしく感じる。


「まぁ、あなたが浮気していることぐらい前から知ってたけどね」

「……えっ?」


……えっ?


「どうして」

「うーん、女の勘って奴?理由と言うか証拠は無いけど怪しいって思ってたんだよ」

「……なんだよ、それ」

「でも、今回証拠が出てきたからちゃんと成敗しないとね」

「い、一体何言って――」


……あ、あれ?
きゅ、急に眠気が……


「あなたが飲んだそのビール、睡眠薬入りなのよ。味でバレるかと思ったんだけど大丈夫だったようね……って聞こえて無いか」









「じゃあ、これから私がすることも何も分かんないよね……」




















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