PLAY LIFE -無責任な俺の異世界進化論-

有河弐電

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ナゼナゼ君 異世界にて爆誕

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 散らばる欠片を呆然と眺める。

「……俺の魔力が、足りないのかな」

「それはないです。アベルの魔力は強いです」

 断言するイヴ。そうなの?俺の魔力って強いの?

 自覚全くないけど。それが本当ならちょっと嬉しい。イヴに"強い"と思われてるのも嬉しい。

「ただアベルは、その魔力を扱えていません」

 持ち上げてから落とすプレイね。把握。

「扱う……操作みたいな感じかな。制御とは違う?俺は木を治す時に、一気に魔力流し込まないようにセーブする感じでやってたんだ」

 俺の質問にイヴは、少し考え込でいるようだ。

「魔法を使うことは、直感やイメージが重要なので、"操作""制御"などの言葉では説明しにくいです」

 そう言うと散らばっていたポットの欠片に手をかざす。俺の魔法を無視した欠片たちは、素直にイヴの手に集ってくる。

「アベルの考えている"魔力制御"は、体内に巡る魔力の流れのことだと思います。アベルは、手の平に魔力が集めることは出来ていました」

「うん、手の平が熱を持つような感じになった」

 森の木の修復でも、今のポットの欠片集めでもそれは感じた。

「"操作"は対照的に、体外での魔力の流れを指しているのではありませんか?」

 ありませんか?って魔法ど素人の俺に聞いちゃだめでしょイヴさん。

「体内と体外ってなんか違うの?同じ魔力じゃないの?」

 イヴはまた無言でじっと俺の顔を見つめた。

 うっすいリアクションで、うやむやに流されちゃったけど、俺の無知は転生が原因だってちゃんと分かってくれてるみたいだ。

 だからこの沈黙は、俺の為に考えてくれてる"間"なんだと思う。

「アベルが魔法を上手く扱えない理由が分かった気がします」

 ほらね。さすが俺のブレイン。

 整った容姿も無機質っぽさも相まって、超技術で生み出されたスーパーアンドロイドって言われても、俺信じちゃうよ。

 イヴは粉々のポットの欠片を、俺の手の平にそっと置いた。

「欠片に触れて、別離してしまった粒子をポットの形に集約するようにイメージして下さい」

「別離してしまった粒子をポットの形に集約」

 オウムのように繰り返してしまった。

 イヴはそれ以上何も言わないつもりらしいから、俺は欠片に手を触れて、元のポットの形を想像して、魔力を流し込んでみようとした。

カチャンカチャンと陶器の乾いた音と共に、ほぼ一瞬でポットの形が形成された。

「‥‥‥へ?」

おそるおそるポットを持ち上げてみると、ヒビも汚れすらない元通りのポットだった。

「出来た!俺直せたよイヴ!」

「はい」

「よかった。いつも使ってるポットだったから、無くなったら困るよね」

「はい」

 自分で言っておいてなんだけど、"困る"なんて感情に肯定の返事をされて、少し驚いた。

 だってイヴがポット無くて困るっていうのが、想像できない。紐でもお湯沸かしてたし。

「なんでいつもこのポット使ってるの?」

「お婆さんがいつも使っていたからです」

 形見みたいなもんだったのか…。

「そうだったんだ。そんな大事なポットで魔法を試したりしてごめん」

「はい」

 イヴ自身で直せただろうけど、俺が自分で直せて良かった。

 ……でもなんで最初は出来なかったんだ?


 何故イヴの手がないと欠片は動かなかったのか。

 森の木の修復もそうだった。俺の魔力は強いらしい。魔力制御も出来てる。

 でも体外の魔力操作って?出来る時と出来ない時の違いはなんだ?

 疑問がどんどん出てきて何から聞いていいのか分からなかった。

 ほとんど無意識につぶやいた。

「魔法を理解したい」

 これからも、"何故?"に沢山ぶち当たると思う。

 起こった事の疑問を、その都度聞くより、この世界における"魔法"をちゃんと理解して、自分で"何故"の答えを推定出来るようになりたい。

 俺はずっとそうだった。日本でもそう。

 どうやって作られているか分からないけど"美味しい"とか、
 どうやって動いているか分からないけど"使える"とかが苦手だった。

 そのせいでめんどくさい奴と思われたことも、何度もある。

 でも俺は他人にウザがられる程度で、知的欲求を我慢できるタイプじゃない。

 "知的好奇心"なんて言うと、ずいぶん高尚な思考に思えるけどそうじゃない。

 知識は最大の自衛となる。

 ちゃんと理解すれば、アクシデントに対処出来る。なんだってそうだ。



 予想外のトラブルを、想定内の現象に置き換えられるということは、なによりもの力だ。



 これは俺が自分で会社を立ち上げて社会の荒波に揉まれて得た、最大の処世術。

 だから、俺は知りたい。

 "魔法"がなんなのか。

「俺に魔法を基礎から教えてくれる?」

「はい」

 イヴの答えはいつだって簡潔だ。
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