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三章
【プログラム-2】
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ここは富永町にある一軒家。玄関には「白井」の文字が書かれた表札が掛かっている二階立ての木造の家。
あれから一週間が過ぎ白井修一は今、実家の部屋のベッドの上で片方の肘をつきながら寝そべり図書館から借りてきた法律の本を読んでいた。
法律家になりたいわけでも法律に関する仕事に就きたいわけでもない。ただ、難しい内容の読書は滅入った心をまぎらわしてくれる、それだけだった。
その時、部屋をノックする音が聞こえ修一を呼ぶ声がした。
「修ちゃん」
修一は起き上がりドアを開けた。修一の母親が立っていた。
「なに?」
修一は不機嫌そうに言った。
「お昼ご飯作ったわよ。下りてきて食べないかしら?」
「いや、あとでいい」
「最近、修ちゃん食欲も元気も無いし、なんだかお母さん心配。今日は日曜日でお父さんもいるから三人で食べましょ」
「いや、いいよ」
「あら、そう……。悩みがあるなら言いなさいよ」
「無いから大丈夫」
「わかったわ。お父さんにもそう言っとく、お父さんも心配してるから」
そう言うと母親は一階に下りて言った。修一はドアを閉め、またベッドで読書に入った。
あれから一週間が経過したが、思い出しても以前が夢のようだったと、修一はそう思いながらここ数日を過ごしていた。
(まぁ……元に戻っただけだよ)
修一は自分にそう言い聞かせ自分を慰めている。しかし、修一にとって元に戻ったことはダメージとして精神に残った。昔となにも変わらないまま日々を過ごすのと、変化があり変わったあとでまた元に戻るとではだいぶ違う。
修一にとって心が変化したことで見えた世界があまりにも素晴らしく、それが失われたのが今の修一を苦しめていた。
(まるで朝から夜だよ)
弾む心を無くした修一は読書の世界に入っては、時折、頭の中で独り言を呟いて毎日部屋で過ごしていた。そんな生活の中で修一が強く思っていることはアドレスを自分に送ってくれた者に対する願望だ。
(また送ってこないかな? でも、僕がまたあのアドレスを使ったりしたら……)
あの時の出来事が繰り返される現実が修一には目に見えている。 日々の苦しみと別れたいが、修一にとってそれは避けたかった。
(どうしようもないな……アドレスに頼ってるなんて)
自分の力で変わろうとしない自分に嫌気もさす。修一は本を閉じベッドに寝転んだ。
「ピンポーン」と玄関のチャイムが鳴った。ベッドから起き上がり窓の外を見る。玄関の外には車から降りた村野とオカマの双子が立っていた。
修一の母親が家の中へ招き入れ、三人は修一の部屋に上がってきた。
「よお、元気か修一」
ドアを開けるなり村野が言った。
「こんにちは、修一さん」
「元気かしらぁ、修一ちゃん」
オカマ達も村野に続く。
「まぁまぁ……かな」
三人を見て修一は少し心が弾んだ。アドレスの力を失い、心の変化も失ったが、修一にその中で残っているモノもある。それは友達だった。
「元気だと思うよ……」
「そうは見えねぇな、ハハハ!」
「読書してたの? 外は天気良いわよ」
「修一ちゃん、これから外に出掛けましょうよぉ」
「俺達これから「大槻市」の商店街に買いもん行くんだよ。まぁ、俺はコイツらの付き添いだけどよ」
村野はオカマ達に視線を向けて言った。
「運転は村野さんの担当よ。それにいいじゃない、村野さん今日は暇なんでしょう? 仕事無いんだから」
「そうよぉ、日曜日は建設業は休みよぉ。車の運転よろしくね」
オカマ達はふくれ面で見返し言う。
三人の会話を眺めるように見ていた修一が口を開く。
「僕はいいよ。それに今日はコンビニのバイトがあるし」
「そうなのか。んじゃ仕方ないな」
「ごめんね」
修一が残念な表情をする。それには本心があらわれていた。
「仕方ないわよ、バイトの方が大事よ」
「そうよぉ、バイト頑張ってねぇ」
「うん、ありがとう」
修一は頷き言った。
「そうだ、お前らアドレス交換してないだろ? 交換しとけよ」
村野がオカマ達に言った。
「そういえば、今日で会うの二度目だし、修一さんの連絡先は知らないわね」
「そうねぇ。教えてよ、修一ちゃん」
オカマ達はスマホを取り出した。
「そうだね」
修一もスマホを取り出した。操作し赤外線送信で送るためオカマ達に向ける。
「届いたわ。ありがとう」
「登録完了よぉ」
次にオカマ達が修一にアドレスを送り返した。登録した修一は少し心が晴れた気がした。
「それじゃ、修一、俺達行くわ」
そう言うと村野は立ち上がり背伸びをした。
「それじゃ修一さん、またね」
「その内、連絡するわぁ」
オカマ達も立ち上がり、三人は部屋の外へと向かう。
「元気になれよ、修一」
村野は修一を振り返り言った。
「うん、わかった。ありがとう」
修一は数日振りに笑みを浮かべた。
三人は帰り、修一は車が走り去るまで窓の外を眺めていた。
そのあとスマホを開きアドレス帳を見た。アドレス帳には村野とオカマ達三人の名前がある。しかし、彩の名前が無く修一はため息を吐いた。
(彩のアドレスを失った。もう約束は果たせない)
修一はさらに深いため息を吐いた。
二時間後、バイトに行くために身仕度をしてから家を出て、重い足取りでバイト先に向かうが気分はさっきまでよりはマシだった。
(みんなに会ったからかな?)
二十分後に修一はバイト先のコンビニに到着した。自動ドアをくぐり店内に入り、レジで暇そうにしている店員に挨拶をされる。
「修一君か、おはよう。だいたい一週間振りだね」
修一と同じバイト仲間の「福井正博」が声を掛けた。
福井はやせ形でスラリと背が高い。修一の三つ歳が上のフリーターの青年だ。メガネを掛け知的な見た目をしているが、顔立ちはボコボコしており、みんなからは「ジャガイモ」の愛称で呼ばれている。
「おはようございます……」
そう言ってからそのまま事務所に入り、まずは制服に着替え、そのあとにタイムカードを機械に入れ出勤時刻を記入した。用意を済ませ事務所を出て仕事を始める。
「修一君、どうしたんだい? なにか元気無いね?」
「そうですか?」
「ああ、変わった。いや、正確には変わってからまた戻ったかな」
「そうですね、福井さんの言う通りですよ」
「ここ数日、仕事休んでいる間なにしてたんだい?」
「特になにもしてないですね」
「まぁ、とりあえず元気に仕事しよう」
「はい、わかりました」
修一を見ながら福井はため息を吐いた。修一に少し気を遣うように福井はタバコの品出しを始めた。
修一はレジに立ち、客が来るのを待っているだけだ。その時、店の奥で飲料の品出しをしていた店長が出てきた。
「おはよう、白井君」
店長は四十代のごく普通の中年の男性で、髪は白髪まじりで額はだいぶ広くなっている。周りから見た印象としては苦労しているように思える。しかし、顔に浮かぶ笑い皺は接客に向いていて客の評判は良いらしい。
「おはようございます」
「一週間振りでなにか元気無いが頑張ってくれよ」
「はい、わかりました」
そう言ってから店長は事務所に入っていった。
「修一君、僕は雑誌の整理してくるからレジ頼んだよ」
福井が言った。
「わかりました」
修一はレジに立ちながら店内を見渡す。客は数人いるがボーッとしながら修一はアクビをした。その時、客がレジに来た。
「ありがとうございます」
仕事ということもあって気持ちを改めて接客をする。
「ありがとうございました」
精算を終え客が店から出ていく。その客と入れかわりに明らかに態度の悪そうな女が入って来た。その女はレジに直行してくる。そしてタバコの棚を指差し修一に言った。
「マイルドノブァ、一つちょーだい」
「はい?」
「マイルドノブァよ! 早くしてよ!」
女は怒鳴る。
「ちょっとお待ちを……」
修一は棚を見渡し目当てのタバコを探す。
「早くしてよ!」
(うるさい女だな)
修一はウンザリした。
レジでのやり取りを見ていた福井が駆けつけ目当てのタバコを修一に教えた。
「コレだよ、修一君」
「どうも……福井さん」
修一は素早くレジを打ち、客をさっさと帰すように精算した。
「トロイ店員ね」
女が修一に言った。
「はぁ……すいません」
そこに福井が入り言った。
「只今、当店では会員登録をしていただくとお得なポイントが貯まるサービスを実施中でして……」
「どうでもいいわ!」
女はそう言うと店を出ていった。
「いやぁ、凄い女性だよ」
「そうですね」
事務所の扉が開き、一部始終を聞いていた店長が出てきた。
「凄い女性だったね、白井君、ジャガ、いや……福井君」
「まぁ、ハハハ」
修一は苦笑いして言った。
「そうだ、白井君。さっき福井君が言ってたようにこの店ではこの前から無料の会員サービスを始めてね。会員登録をしてくれたお客様に会員カードを発行して、それをレジの精算で使っていただくとポイントが貯まるんだ。そのポイントを支払いに使えるサービスを始めたんだ」
店長が意気揚々と説明した。
「修一君は今週はずっと休んでたから知らなかっただろうけど、店長に頼まれて僕が会員サービスのデータ管理をしてるんだ」
福井が言った。
「福井君はコンピューターに詳しくてパソコンとかでデータなどの管理は得意みたいだからな。本当ならば私がやるべきなんだが面倒でね」
「それって店長としてどうかと思いますよ。あと、さっきジャガイモって言いそうになってましたよね」
「ハハハ、すまない」
店長は苦笑いをした。
店長の笑いを無視し、福井が説明を続ける。
「本部の命令でこの店の店員は登録するのが強制なんだ。たがら修一君のは既に登録済みだよ」
「え? 僕のを登録?」
「すまない。僕が君の個人情報を勝手に登録させてもらったよ」
「そうですか、わかりました」
修一は無関心に言った。
三人の会話はそれで終わり、それぞれは仕事に戻った。
あれから一週間が過ぎ白井修一は今、実家の部屋のベッドの上で片方の肘をつきながら寝そべり図書館から借りてきた法律の本を読んでいた。
法律家になりたいわけでも法律に関する仕事に就きたいわけでもない。ただ、難しい内容の読書は滅入った心をまぎらわしてくれる、それだけだった。
その時、部屋をノックする音が聞こえ修一を呼ぶ声がした。
「修ちゃん」
修一は起き上がりドアを開けた。修一の母親が立っていた。
「なに?」
修一は不機嫌そうに言った。
「お昼ご飯作ったわよ。下りてきて食べないかしら?」
「いや、あとでいい」
「最近、修ちゃん食欲も元気も無いし、なんだかお母さん心配。今日は日曜日でお父さんもいるから三人で食べましょ」
「いや、いいよ」
「あら、そう……。悩みがあるなら言いなさいよ」
「無いから大丈夫」
「わかったわ。お父さんにもそう言っとく、お父さんも心配してるから」
そう言うと母親は一階に下りて言った。修一はドアを閉め、またベッドで読書に入った。
あれから一週間が経過したが、思い出しても以前が夢のようだったと、修一はそう思いながらここ数日を過ごしていた。
(まぁ……元に戻っただけだよ)
修一は自分にそう言い聞かせ自分を慰めている。しかし、修一にとって元に戻ったことはダメージとして精神に残った。昔となにも変わらないまま日々を過ごすのと、変化があり変わったあとでまた元に戻るとではだいぶ違う。
修一にとって心が変化したことで見えた世界があまりにも素晴らしく、それが失われたのが今の修一を苦しめていた。
(まるで朝から夜だよ)
弾む心を無くした修一は読書の世界に入っては、時折、頭の中で独り言を呟いて毎日部屋で過ごしていた。そんな生活の中で修一が強く思っていることはアドレスを自分に送ってくれた者に対する願望だ。
(また送ってこないかな? でも、僕がまたあのアドレスを使ったりしたら……)
あの時の出来事が繰り返される現実が修一には目に見えている。 日々の苦しみと別れたいが、修一にとってそれは避けたかった。
(どうしようもないな……アドレスに頼ってるなんて)
自分の力で変わろうとしない自分に嫌気もさす。修一は本を閉じベッドに寝転んだ。
「ピンポーン」と玄関のチャイムが鳴った。ベッドから起き上がり窓の外を見る。玄関の外には車から降りた村野とオカマの双子が立っていた。
修一の母親が家の中へ招き入れ、三人は修一の部屋に上がってきた。
「よお、元気か修一」
ドアを開けるなり村野が言った。
「こんにちは、修一さん」
「元気かしらぁ、修一ちゃん」
オカマ達も村野に続く。
「まぁまぁ……かな」
三人を見て修一は少し心が弾んだ。アドレスの力を失い、心の変化も失ったが、修一にその中で残っているモノもある。それは友達だった。
「元気だと思うよ……」
「そうは見えねぇな、ハハハ!」
「読書してたの? 外は天気良いわよ」
「修一ちゃん、これから外に出掛けましょうよぉ」
「俺達これから「大槻市」の商店街に買いもん行くんだよ。まぁ、俺はコイツらの付き添いだけどよ」
村野はオカマ達に視線を向けて言った。
「運転は村野さんの担当よ。それにいいじゃない、村野さん今日は暇なんでしょう? 仕事無いんだから」
「そうよぉ、日曜日は建設業は休みよぉ。車の運転よろしくね」
オカマ達はふくれ面で見返し言う。
三人の会話を眺めるように見ていた修一が口を開く。
「僕はいいよ。それに今日はコンビニのバイトがあるし」
「そうなのか。んじゃ仕方ないな」
「ごめんね」
修一が残念な表情をする。それには本心があらわれていた。
「仕方ないわよ、バイトの方が大事よ」
「そうよぉ、バイト頑張ってねぇ」
「うん、ありがとう」
修一は頷き言った。
「そうだ、お前らアドレス交換してないだろ? 交換しとけよ」
村野がオカマ達に言った。
「そういえば、今日で会うの二度目だし、修一さんの連絡先は知らないわね」
「そうねぇ。教えてよ、修一ちゃん」
オカマ達はスマホを取り出した。
「そうだね」
修一もスマホを取り出した。操作し赤外線送信で送るためオカマ達に向ける。
「届いたわ。ありがとう」
「登録完了よぉ」
次にオカマ達が修一にアドレスを送り返した。登録した修一は少し心が晴れた気がした。
「それじゃ、修一、俺達行くわ」
そう言うと村野は立ち上がり背伸びをした。
「それじゃ修一さん、またね」
「その内、連絡するわぁ」
オカマ達も立ち上がり、三人は部屋の外へと向かう。
「元気になれよ、修一」
村野は修一を振り返り言った。
「うん、わかった。ありがとう」
修一は数日振りに笑みを浮かべた。
三人は帰り、修一は車が走り去るまで窓の外を眺めていた。
そのあとスマホを開きアドレス帳を見た。アドレス帳には村野とオカマ達三人の名前がある。しかし、彩の名前が無く修一はため息を吐いた。
(彩のアドレスを失った。もう約束は果たせない)
修一はさらに深いため息を吐いた。
二時間後、バイトに行くために身仕度をしてから家を出て、重い足取りでバイト先に向かうが気分はさっきまでよりはマシだった。
(みんなに会ったからかな?)
二十分後に修一はバイト先のコンビニに到着した。自動ドアをくぐり店内に入り、レジで暇そうにしている店員に挨拶をされる。
「修一君か、おはよう。だいたい一週間振りだね」
修一と同じバイト仲間の「福井正博」が声を掛けた。
福井はやせ形でスラリと背が高い。修一の三つ歳が上のフリーターの青年だ。メガネを掛け知的な見た目をしているが、顔立ちはボコボコしており、みんなからは「ジャガイモ」の愛称で呼ばれている。
「おはようございます……」
そう言ってからそのまま事務所に入り、まずは制服に着替え、そのあとにタイムカードを機械に入れ出勤時刻を記入した。用意を済ませ事務所を出て仕事を始める。
「修一君、どうしたんだい? なにか元気無いね?」
「そうですか?」
「ああ、変わった。いや、正確には変わってからまた戻ったかな」
「そうですね、福井さんの言う通りですよ」
「ここ数日、仕事休んでいる間なにしてたんだい?」
「特になにもしてないですね」
「まぁ、とりあえず元気に仕事しよう」
「はい、わかりました」
修一を見ながら福井はため息を吐いた。修一に少し気を遣うように福井はタバコの品出しを始めた。
修一はレジに立ち、客が来るのを待っているだけだ。その時、店の奥で飲料の品出しをしていた店長が出てきた。
「おはよう、白井君」
店長は四十代のごく普通の中年の男性で、髪は白髪まじりで額はだいぶ広くなっている。周りから見た印象としては苦労しているように思える。しかし、顔に浮かぶ笑い皺は接客に向いていて客の評判は良いらしい。
「おはようございます」
「一週間振りでなにか元気無いが頑張ってくれよ」
「はい、わかりました」
そう言ってから店長は事務所に入っていった。
「修一君、僕は雑誌の整理してくるからレジ頼んだよ」
福井が言った。
「わかりました」
修一はレジに立ちながら店内を見渡す。客は数人いるがボーッとしながら修一はアクビをした。その時、客がレジに来た。
「ありがとうございます」
仕事ということもあって気持ちを改めて接客をする。
「ありがとうございました」
精算を終え客が店から出ていく。その客と入れかわりに明らかに態度の悪そうな女が入って来た。その女はレジに直行してくる。そしてタバコの棚を指差し修一に言った。
「マイルドノブァ、一つちょーだい」
「はい?」
「マイルドノブァよ! 早くしてよ!」
女は怒鳴る。
「ちょっとお待ちを……」
修一は棚を見渡し目当てのタバコを探す。
「早くしてよ!」
(うるさい女だな)
修一はウンザリした。
レジでのやり取りを見ていた福井が駆けつけ目当てのタバコを修一に教えた。
「コレだよ、修一君」
「どうも……福井さん」
修一は素早くレジを打ち、客をさっさと帰すように精算した。
「トロイ店員ね」
女が修一に言った。
「はぁ……すいません」
そこに福井が入り言った。
「只今、当店では会員登録をしていただくとお得なポイントが貯まるサービスを実施中でして……」
「どうでもいいわ!」
女はそう言うと店を出ていった。
「いやぁ、凄い女性だよ」
「そうですね」
事務所の扉が開き、一部始終を聞いていた店長が出てきた。
「凄い女性だったね、白井君、ジャガ、いや……福井君」
「まぁ、ハハハ」
修一は苦笑いして言った。
「そうだ、白井君。さっき福井君が言ってたようにこの店ではこの前から無料の会員サービスを始めてね。会員登録をしてくれたお客様に会員カードを発行して、それをレジの精算で使っていただくとポイントが貯まるんだ。そのポイントを支払いに使えるサービスを始めたんだ」
店長が意気揚々と説明した。
「修一君は今週はずっと休んでたから知らなかっただろうけど、店長に頼まれて僕が会員サービスのデータ管理をしてるんだ」
福井が言った。
「福井君はコンピューターに詳しくてパソコンとかでデータなどの管理は得意みたいだからな。本当ならば私がやるべきなんだが面倒でね」
「それって店長としてどうかと思いますよ。あと、さっきジャガイモって言いそうになってましたよね」
「ハハハ、すまない」
店長は苦笑いをした。
店長の笑いを無視し、福井が説明を続ける。
「本部の命令でこの店の店員は登録するのが強制なんだ。たがら修一君のは既に登録済みだよ」
「え? 僕のを登録?」
「すまない。僕が君の個人情報を勝手に登録させてもらったよ」
「そうですか、わかりました」
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