僕の異世界生活

餡ころ餅

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クゥの森を抜けて

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「信じられないかもしれないんですけど、朝家から出たらこの森に出たんです。帰る手段もわからなくて……どうしようって……そしたらあのホーンラビットみたいなのがわらわらと襲いかかってきて……」

僕はリアムにここまでの事情を説明した。
魔法がない別の世界から来たこと。
わけがわからないうちにホーンラビット(仮称)に襲われたこと。
逃げてたらリアムに助けてもらえたこと。
帰る手段がわからないため、なんとか調べて探したいことなどなど。

最初は唖然としていたリアムだが、真剣な表情になり黙って聞いてくれた。

「なるほど。確かにカズトの言うように、この世界で魔法は当たり前のように存在している。もちろん、転移魔法や召喚魔法などもある」

転移魔法や召喚魔法がある!?
それなら帰れるかもしれない、と顔を輝かすもリアムは渋い表情のままだった。

「転移魔法はいわゆる同一平面上に存在する座標と座標の移動だ。異なる世界を転移するのは聞いたことはないからわからない。
だが、今から約20年前に召喚魔法で勇者を異世界から召喚し悪の魔王を討伐したとされている」

異世界から勇者を召喚、魔王討伐。
勇者のきた異世界が僕の世界と同じかどうかはわからない。
さらにいえば、異世界召喚ものでは召喚魔法は一方通行の場合もあるとされている。
もし、そうだとしたら帰れる方法はないに等しくなるのではないだろうか。

「そ、その勇者は元の世界にどうやって帰ったのでしょうか…?」

リアムは首を横に振りながら答えた。

「召喚魔法は一方通行らしい。いま勇者はこの国の辺境、プェルトの街で結婚してのんびり暮らしているそうだ」

最悪だ。
多分、僕の顔色が悪くなったのだろう。リアムは僕をゆっくり座らせてくれた。
座ると同時に帰れないという恐怖、不安からみっともなく泣き出してしまった。

楽しかった学校へはもう行けないかもしれない。
友達にももう会えない可能性が高い。
そして、たった一人の家族───叔父さんにも会えないかもしれない。

朝から迷子になってホーンラビット(仮称)に襲われて助けてもらって……泣き疲れた僕は意識を手放した。

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