僕の異世界生活

餡ころ餅

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いつも通りのある日、僕は迷子になった

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僕、岸本 和人キシモト カズトは平凡な人間だ。

小中高と普通の成績だし、運動神経も悪くはないが良くもない。友達は多いほどでもないが少なくもなく、地味でもないが特に目立ったキャラでもない。

ただ、平凡ではないといえば、両親は僕が小さい頃に事故で他界してしまってて、父の弟である優希叔父さんに引き取られて暮らしているということ。
叔父さんは長距離トラックドライバーのため、家にはほとんど帰ってこない。
それでも家にいる間は惜しみなく親の愛情を与えてくれて、感謝してもしきれない。


朝、いつもの時間より少し早めに起きると叔父から朝の挨拶がスマホに届いていた。
朝の挨拶と帰宅したとき、夜寝る挨拶はかかさず毎日おこなっている。
叔父に「おはよう」って返事をして顔を洗い、朝のニュースと天気予報をみながらご飯を食べ、制服に着替える。


支度を整え、いつも通りドアを開けて外に出た。──────はずだった。


そこはいつものマンションの廊下ではなく木々が繁る森の中だった。


「……………は?」
突然のことで呆けていると後ろでバタンと扉の閉まる音がした。
振り返ると、そこには今通ってきたドアが消えていた。

「これ、なに?………どこ?どういうこと?」

頭の処理が追いつかずパニックになるも、木の香りや頬を撫でる風が嫌にリアルだ。
自分の頬を抓ってみるも痛いだけ。夢じゃない。

「ドアをくぐったら別の場所?どこで○ドア?」

未来から来た青いロボットの不思議な道具を連想させるが普段から使っていた家のドアだ。そんな不思議な道具なんて存在しない。はずだ。

ハッとしてスマホを見るが圏外表示となっていた。

「ん?叔父さんから返信きてた」

メッセージを開くと、明日の夜には帰ることと帰ったらご飯を食べに行こうというものだった。
パニックになっていた頭がだんだんと冷静になり、逆に帰れないのではないかという不安が一気に押し寄せてきて目の前が歪む。

涙が溢れてきて蹲ろうとした時、後ろの茂みからガサガサと音がした。

びっくりして振り向くと、一本の角が生えたウサギのような生き物が鋭い瞳で僕を睨みつけていた。

「………ウサギ?でも角あるし……?」

茂みから出てきたのがウサギのような小動物でほっとし気を抜いた瞬間、

「キュィィィィィ!!!!」

恐ろしい顔で飛びかかってきた。
慌てて手に提げていた通学バッグを振り回した。
カバンが運良くウサギ(?)の体に当たり近くの木に叩きつけられた。

「な、なんだ……これ。角のあるウサギってよくある異世界ものの小説とかにでてくるホーンラビット?」

異世界ものの小説。
現世で死んでしまって転生する際に神様がチート的なスキルを与えてくれたり、勇者や聖女として召喚されたり、その召喚に巻き込まれたり。多種多様な異世界ものの創作がある。
僕もファンタジーっていいなとか、かっこよく魔法とか使ってみたいなとか、そんな妄想はしたことあるくらいには好きなジャンルだ。

「家を出たら異世界転移しました……ってこと?」

転移したのなら何かの召喚に巻き込まれたとか?実は覚えてないだけで死んでしまって神様とかに会ってるとか?

そんなことを考えていると先ほど木に叩きつけたホーンラビット(仮称)が起き上がってこちらを睨みつけており、フンフンと鼻息が荒く興奮状態のようだ。
すると、睨みつけているホーンラビット(仮称)の後ろの茂みから次々にホーンラビット(仮称)が出てきた。
その数、ざっと10匹を超えている。

僕には戦える術がない。
武器もなければ力もない。
このままだとこのホーンラビット(仮称)たちに殺されてしまう。
逃げるにしても足が早いわけでもないから追いつかれてしまうのは明白だ。

「───そうだ」

睨みつけてくる目を逸らさず、カバンの中を探り休憩時間に食べようと作っていたおむすびを取り出し、ホーンラビット(仮称)の群れに投げ入れた。

ホーンラビット(仮称)は攻撃を受けると思ったのかびくりと体を震わすが昆布入りおむすびの匂いにつられ、何匹かは注意をそらすことができた。

そして、僕は一目散に逃げ出した。
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