奇跡のクインティプルアクセル ~ 5回転半ジャンプ ~

タヌキのポンちゃん

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【第2部】~ 衝撃の運命 ~

父の殺害犯

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「俺もまた、かつてはフィギュアスケートの選手だったんだ。
 でも、実のあの父とはその価値観の違いでよく衝突していたものだった。
 それに俺はトッププレーヤーでもなかったから、いつも父からは見下されていたんだ。

 そして、ある時、俺はむしゃくしゃして、犯罪に手を染めてしまった…
 それでとうとう俺は父から勘当され、戸籍から抹消されたんだ。

 俺は新たに戸籍を作り、白馬祐介として生きていくことを決めた。
 そして、妹である琴音の専属コーチとして生きていくことにしたんだ。

 そんな俺の行動に、不思議とあの父から反対されることはなかった。
 親子の縁を切ったと言えど、まだどこかで俺のことを息子として想っていてくれていたのかも知れない…
 そんな父のことも、俺はまだ尊敬すべき人間として大切に想っていたのかも知れない…

 そんな時、あの忌まわしい放火事件が起こってしまった…
 琴音の冬季オリンピック出場資格を兼ねた、4年前のあの国内戦の前日の夜…
 あの夜に起こった事件で父と母を一度に亡くし、琴音のオリンピックの夢も引き裂かれてしまったんだ!!

 俺のその怒りの心は、その放火犯への仇討ちの気持ちへと一気に燃えたんだ!!
 頼りにならない警察を無視して、俺は単独でその放火犯を捜した。



 そして、4年の歳月を要し、俺はその犯人を探し当てたんだ!!
 大空正… そいつは、北海道でちっぽけな診療所の院長をしていた。

 俺はそいつに詰め寄った!
 そして、そいつはあっさりと犯行を認め、俺はその場でそいつを殺してやるつもりだった。 だが…



『ま、待ってくれ! 今、君の専属選手でもある氷河琴音君の足を治療しているところなんだ!
 彼女の足が治るまで、待ってくれないか?』

『な、何だって!? 今、何て言った? 氷河琴音がこの病院にいるのか? お前、琴音の足を治せるのか?』

『治せる! 彼女の足が完治したら、私を煮て食おうが焼いて食おうが君の自由だっ!!』



「それで、俺は琴音の足が完治したのを見届け、約束通りあのスケート場で奴を撃ったんだ…」

そして、祐介は泣きながら優に琴音のことをよろしく頼むと言って、面会室をあとにした。



自分の実の父親を拳銃で撃った男、氷河祐介…
面会室でその彼と顔を合わせた瞬間、優はそんな彼への殺意の気持ちが沸き出てくるのを感じ取っていた。
だが、氷河祐介のその辛い過去に、わずかだが彼への同情の気持ちさえ感じる優であった…

                                 つづく… 
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