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【序章】

あなたは知っていますか?

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1日でもいい…
1時間でもいい…
たとえ、1分でもいい…
いや… たった1秒でもいいんだ…

お願いだ… それでもいいから… 君には生きていて欲しい…

ずっと、君の笑顔を見ていたいから…


僕は今、東京都心の上空を飛んでいる。
救急患者を高速で搬送するというドクターヘリを操縦し、その最高速度である時速270kmまで速度を上げ、帝国ホテルへ向かっていた。

そして僕は、ふと視線を進行方向から右側へ逸らした。
この視線の先… この夕焼けの空の遥か向こう… そこに君はいるんだ…

君は今、生と死の狭間で自分と闘っている…
頼む! どうか生きていてくれっ!!

君の夢、君の希望、君の願い…

それを全て僕が見届けるから!
それを全て君に伝えるから!

「私ね… 次に生まれ変わったら… 野に咲く一輪のお花さんになりたいの…
 壮大な大自然の中でひっそりと咲く、可愛いお花さんになりたいの…
 それでね、朝は眩い太陽の光で目が覚めて、小鳥さんや蝶々さんと一緒に戯れるの。
 それからね、その草原に吹き渡る心地の良い風に、ゆらゆらと身をゆだねながら綺麗な景色を楽しむの。
 それで夜はね、満天に輝くダイヤのような星空を眺めながら、ゆっくりと眠るの。
 私… もう十分に頑張ったよね? 私… もう十分に生きたよね?」

君のその言葉、今になっても僕の心の中でずっと木霊(こだま)している…
一筋の涙が僕の頬を伝う…

僕はその寂しげな君の笑顔を思い出しながら、操縦桿を強く握りしめ、ただひたすら最高速で突き進んでいた…



あなたは知っていますか?

不治の病に侵された余命わずかな一人の女性が、その命の尽きる瞬間まで、自分の夢を追いかけていたことを…
そして、自身の命を削りながらも、前人未到の奇跡の大技に、果敢に挑戦し続けた一人の女性がいたことを…
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