2 / 8
2お城での生活
しおりを挟む
「手始めに名前を教えてほしいわ、わたしの名前はデイジー」
「俺は隣のランタナ王国の王子ピアニー。こっちは友達のクインス。この公国の王子さ」
「よろしくね、ピアニー。クインス」
ピアニーはクインスの肩を抱いてデイジーに向かって笑ってる。
体調が悪いのかクインスはふらついた。
「わたし、まだ精霊の祝福やったことないの。やってみようか?」
「よろしく~、さ、クインス、さっさとそこのソファーに横になれ!」
「お前なーー、勝手に色々と決めるな……」
渋々ソファーに横になったクインスの胸の上に飛び乗ると、眠り猫デイジーは祝福をした。
泡のような白い光がブクブクとデイジーから放たれてクインスを優しく包んだ。
(わあ、すごい、これが精霊の力……)
初めて使う精霊の祝福。
目を瞑るクインスの眉間からシワが消えた。
つり上がっていた眉毛も下がり、静かな寝息が聞こえる。
「すう……」
眠った!
安らかな顔でスヤスヤと気持ち良さそうに眠ってる。
「わー寝た!寝てる!神経が細やかで不眠症プリンスのあのクインスが」
「成功してよかった~」
褒美として眠り猫デイジーの部屋がその日のうちに用意された。
猫一匹に対して人間一人用の部屋だ。
ベッドも人間用のダブルベットで、テーブルやソファーも付いている。
取り急ぎ用意された部屋なので部屋は生活感がなく、まだ家具や装飾品も揃っていない。
「ベッド、ふかふか~」
猫は喜びベッドの上でぴょんぴょんと跳ねる。
「それにお菓子がすごく美味しい!」
テーブルの上には浅いお皿に注がれたミルク、イチゴの乗ったショートケーキ、アップルパイにチョコレートケーキ、ババロアにシュークリーム、プリンアラモード。
見たことのない沢山のスイーツ。
一口ずつ味見をしたがどれも甘くて美味しかった。
精霊は食べなくても生きていける。
食べ物はあくまで嗜好品として摂取するのだ。
「特にこのイチゴが美味しい!」
甘酸っぱくて、甘くてふわふわの生クリームとよく合うわ。
「気に入ったか?」
突然部屋の扉が開き、シャツにスラックスというラフな姿の気だるそうなクインスが現れた。
どうやら目を覚ましたらしい。
「うん、すごく美味しい。どうもありがとう!」
「俺もありがとう。久しぶりによく眠れたよ」
クインスは笑っている。
少し顔色も良くなったようだ。
それでもーークインスは時々寂しげな顔をしてお城から海の地平線を見つめている。
その横顔を見るとデイジーも何故だか寂しい気分になって、思わず彼に擦り寄り気を引こうとした。
「どうしたんだ?」
落ち着いた声色。
クインスはデイジーの頭を撫でて笑った。
「海の向こうになにがあるの?」
「…友がいる。もう死んだけどな」
「死んだ?」
「二年前、ピアニーの国に敵国が攻めてきたんだ。俺と俺の友人は加勢するために出征した。友人はそこで戦死したーー。それからだ、眠れない日々が続いたのは」
それは淡々とした口調だった。
今にも泣きそうな顔をしているのに……。
「でも、ここ数週間ぐっすり眠って、冴えた頭で考えるようになったら少し気も晴れてきた。お前のお陰だ」
また、ぐしゃぐしゃと頭の毛がボサボサになるくらい撫でられる。
「うふふ、今まで精霊が人間に使役するのは変なのって思ってたんだけどーー悪くないわね。自分がだれかの役に立ってるなんて。クインスの笑顔が見れたから、すごく嬉しい」
(でも、すっかりクインスも元気になってーーもうわたしは必要ないかしら?)
「いやだな…」
「何だ?」
「ウウン、なんでもない」
別れの日も近いと思うと寂しくなる。
それでも彼が元気になってよかったと素直に喜ぶデイジーだった。
「俺は隣のランタナ王国の王子ピアニー。こっちは友達のクインス。この公国の王子さ」
「よろしくね、ピアニー。クインス」
ピアニーはクインスの肩を抱いてデイジーに向かって笑ってる。
体調が悪いのかクインスはふらついた。
「わたし、まだ精霊の祝福やったことないの。やってみようか?」
「よろしく~、さ、クインス、さっさとそこのソファーに横になれ!」
「お前なーー、勝手に色々と決めるな……」
渋々ソファーに横になったクインスの胸の上に飛び乗ると、眠り猫デイジーは祝福をした。
泡のような白い光がブクブクとデイジーから放たれてクインスを優しく包んだ。
(わあ、すごい、これが精霊の力……)
初めて使う精霊の祝福。
目を瞑るクインスの眉間からシワが消えた。
つり上がっていた眉毛も下がり、静かな寝息が聞こえる。
「すう……」
眠った!
安らかな顔でスヤスヤと気持ち良さそうに眠ってる。
「わー寝た!寝てる!神経が細やかで不眠症プリンスのあのクインスが」
「成功してよかった~」
褒美として眠り猫デイジーの部屋がその日のうちに用意された。
猫一匹に対して人間一人用の部屋だ。
ベッドも人間用のダブルベットで、テーブルやソファーも付いている。
取り急ぎ用意された部屋なので部屋は生活感がなく、まだ家具や装飾品も揃っていない。
「ベッド、ふかふか~」
猫は喜びベッドの上でぴょんぴょんと跳ねる。
「それにお菓子がすごく美味しい!」
テーブルの上には浅いお皿に注がれたミルク、イチゴの乗ったショートケーキ、アップルパイにチョコレートケーキ、ババロアにシュークリーム、プリンアラモード。
見たことのない沢山のスイーツ。
一口ずつ味見をしたがどれも甘くて美味しかった。
精霊は食べなくても生きていける。
食べ物はあくまで嗜好品として摂取するのだ。
「特にこのイチゴが美味しい!」
甘酸っぱくて、甘くてふわふわの生クリームとよく合うわ。
「気に入ったか?」
突然部屋の扉が開き、シャツにスラックスというラフな姿の気だるそうなクインスが現れた。
どうやら目を覚ましたらしい。
「うん、すごく美味しい。どうもありがとう!」
「俺もありがとう。久しぶりによく眠れたよ」
クインスは笑っている。
少し顔色も良くなったようだ。
それでもーークインスは時々寂しげな顔をしてお城から海の地平線を見つめている。
その横顔を見るとデイジーも何故だか寂しい気分になって、思わず彼に擦り寄り気を引こうとした。
「どうしたんだ?」
落ち着いた声色。
クインスはデイジーの頭を撫でて笑った。
「海の向こうになにがあるの?」
「…友がいる。もう死んだけどな」
「死んだ?」
「二年前、ピアニーの国に敵国が攻めてきたんだ。俺と俺の友人は加勢するために出征した。友人はそこで戦死したーー。それからだ、眠れない日々が続いたのは」
それは淡々とした口調だった。
今にも泣きそうな顔をしているのに……。
「でも、ここ数週間ぐっすり眠って、冴えた頭で考えるようになったら少し気も晴れてきた。お前のお陰だ」
また、ぐしゃぐしゃと頭の毛がボサボサになるくらい撫でられる。
「うふふ、今まで精霊が人間に使役するのは変なのって思ってたんだけどーー悪くないわね。自分がだれかの役に立ってるなんて。クインスの笑顔が見れたから、すごく嬉しい」
(でも、すっかりクインスも元気になってーーもうわたしは必要ないかしら?)
「いやだな…」
「何だ?」
「ウウン、なんでもない」
別れの日も近いと思うと寂しくなる。
それでも彼が元気になってよかったと素直に喜ぶデイジーだった。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
媚薬を盛られた天使が、腹黒悪魔にそそのかされ堕天する話(両思い)
夢伽 莉斗
恋愛
あざとい人たらし悪魔×好きを認めたくない意地っ張りの天使
理性溶けきったとろとろ天使が、頭のキレる悪魔に言葉巧みにおねだりさせられ、気づいたら中出しされてます。
地上に勉強にきていた天使のセラエルは、成り行きでカジノ店の客二人とお酒を飲むことになった。でもどうやらそのお客はセラエルに媚薬を盛って無体を働こうとしていたようで!?
店に来ていた悪魔のディアンシャが助けてくれたけど、媚薬の効果で体がまだおかしい。ディアンシャは堕天はさせないって言ってたし、彼に頼んで触ってもらってもいいかな。ディアンシャは冷たくて酷いことも言うけど、優しい時はすごく甘やかしてくれるからきっと大丈夫!
※この小説は、小説家になろう ムーンライトノベルズで公開中の『悪キス』第30話ifです。本編では、ディアンシャはここでは手を出さず、飴と鞭でかわいがっています。悪役系キャラとの溺愛ものが好きな方はぜひ!
『悪魔のキスは愛が死んでいる』
〜怪我した悪魔を助けたら、腹黒ドSと発覚し執着されて弄ばれ堕天を狙ってきます〜
(もうじき完結)
#執着 人外 スパダリ モブレ(未遂) 吸血鬼 異種姦 冷血 クズ 囲い込み 策略
※イラスト:Yuba様(@fo___n)
※毎日更新、3話構成
下品な男に下品に調教される清楚だった図書委員の話
神谷 愛
恋愛
クラスで目立つこともない彼女。半ば押し付けれられる形でなった図書委員の仕事のなかで出会った体育教師に堕とされる話。
つまらない学校、つまらない日常の中の唯一のスパイスである体育教師に身も心も墜ちていくハートフルストーリー。ある時は図書室で、ある時は職員室で、様々な場所で繰り広げられる終わりのない蜜月の軌跡。
歪んだ愛と実らぬ恋の衝突
ノクターンノベルズにもある
☆とブックマークをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
【R18】少年のフリした聖女は触手にアンアン喘がされ、ついでに後ろで想い人もアンアンしています
アマンダ
恋愛
女神さまからのご命令により、男のフリして聖女として召喚されたミコトは、世界を救う旅の途中、ダンジョン内のエロモンスターの餌食となる。
想い人の獣人騎士と共に。
彼の運命の番いに選ばれなかった聖女は必死で快楽を堪えようと耐えるが、その姿を見た獣人騎士が……?
連載中の『世界のピンチが救われるまで本能に従ってはいけません!!〜少年聖女と獣人騎士の攻防戦〜』のR18ver.となっています!本編を見なくてもわかるようになっています。前後編です!!
ご好評につき続編『触手に犯される少年聖女を見て興奮した俺はヒトとして獣人として最低です』もUPしましたのでよかったらお読みください!!
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
初めてのパーティプレイで魔導師様と修道士様に昼も夜も教え込まれる話
トリイチ
恋愛
新人魔法使いのエルフ娘、ミア。冒険者が集まる酒場で出会った魔導師ライデットと修道士ゼノスのパーティに誘われ加入することに。
ベテランのふたりに付いていくだけで精いっぱいのミアだったが、夜宿屋で高額の報酬を貰い喜びつつも戸惑う。
自分にはふたりに何のメリットなくも恩も返せてないと。
そんな時ゼノスから告げられる。
「…あるよ。ミアちゃんが俺たちに出来ること――」
pixiv、ムーンライトノベルズ、Fantia(続編有)にも投稿しております。
【https://fantia.jp/fanclubs/501495】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる