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恐怖のアンデットライン農園へ!首無し騎士と拗らせ女神のアイスクリームパーラー
ルートビアと死体解剖劇場
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アンデットラインには大学病院や軍事施設、遺体安置所、墓地、監獄や処刑場などが点在している。
大昔、疫病が流行した頃に感染拡大を防ぐ目的で、恐ろしい悪魔やゴースト、ゾンビが出没するというデタラメを拡散し『アンデットライン』という通り名を付けて、村人を不用意に立ち入らせない対策を取っていた。
「ベンジーはお化けが怖く無いの?」
グレース皇子とクロウ、エステルと護衛のユーシン、アヴィは、ベンジャミンに案内されて、アンデットラインの中を散策していた。
クロウの問い掛けに、ベンジャミンはニコニコと笑って答えた。
「まあね。ここで働いている人たちは職業柄、平気みたいだよ。アンデットライン内にある民家やアパートには殆ど医者や軍人なんかが住んでるんだ。村や街に住むより家賃も格安だし、職場も徒歩圏内だからね」
通りすがりの人たちは大体白衣を着ていたり、軍服を着てる人ばかりだった。
大学病院前の薬局に到着すると、ベンジャミンはその中に入った。
「……薬屋か?」
店内は広く、薬剤師がカウンターに座っていた。奥には、なぜか飲食スペースもあった。
「うん。軽食も販売してるんだよ。この辺りには飲食店もないしね。はい王子様」
ベンジャミンは黒い液体の入ったカップをグレース皇子やみんなに振舞った。
薬草やスパイス入りの甘いビールのようだ。
「エールのようなものか?」
「しゅわしゅわー」
独特の風味がある飲み物に、グレース皇子は眉をひそめた。
「ああ、これって、ルートビアっすね。飲んだことがあります」
ユーシンは前世で、外国へ行った際にこのドリンクを口にしたことがあった。
「ふぎゃあ~、薬の臭い~、うへぇ~」
クロウはグレース皇子のカップをペロッと舐めて、顔にシワを寄せた。
「うーん、美味しくはないな~」
アヴィはカップを飲み干して苦笑した。
「薬として売っているからね、美味しくはないはずだよ」
ベンジャミンは笑っていた。
栄養ドリンク感覚で買い求めに来る客が多いそうだ。
薬局を出て、次に案内されたのはドーム型の大きな建物だった。
「ここはねー、死体解剖劇場だよ」
「え?」
「ドキドキわくわく人体解体ショー♪医学生だけじゃなくて、一般人も見学ができるよ」
ベンジャミンはテンションを上げていたが、一同は顔を真っ青にさせる。
中央には遺体を置くための台があり、観客席が円状にそれを取り囲んでいた。
「タイミングが悪かったなあ~、今はやってないみたいだね」
「そんなのみたくなぁーい」
うなだれるクロウの身体に、突然背後から白衣の男が飛び付いた。
「ふぎゃあ~!」
クロウは驚いてジタバタ暴れる。
後ろを振り返ると、この前、夜の墓地で出会ったハーバートと言う名の医者が居た。
「またあったね、オオカミちゃん」
「あれ?ハーバート教授?お久しぶりです」
「ベンジャミン君か~、こっちにきていたんだね!」
「ベンジーの知り合いなの?」
「うん。彼は有名な解剖学者だよ」
ハーバート教授はクロウのオオカミの身体を取り押さえるように抱き着いてニンマリ笑っていた。
「ねえ、精霊って永遠に死なないんでしょ?解剖させてよ~。首を切り落としたって再生するんでしょ?めっちゃエコじゃん~?」
「いやああああ~、死ななくても、痛いもんは痛いもん~、注射も嫌いだもん~、いやーん」
クロウは必死に抵抗した。
そしてチワワに化けるとグレース皇子の後ろに隠れて萎縮した。
「ははは、精霊の身体を切り刻むのはさすがに罰当たりですよ~、ハーバート教授」
「だって~、最近はなかなか死体が手に入らないから、全然解剖できないんだよ~」
解剖劇場では、近くの処刑場で絞首刑に処された遺体を使用するのだが、死刑囚は解剖を嫌がり拒絶するため、最近では入手するのが難しい。
「魔術師の方には死体がちゃんと供給されているようだけどね~羨ましい限りだよ。僕も魔術師に転職しちゃおうかなぁ~」
「魔術師?」
グレース皇子は、ヘラヘラと笑うハーバート教授に顔を向けた。
ハーバート教授は答えた。
「堕胎した胎児の遺体を煮込んで呪いの薬を作るとか、若い乙女の血を絞って若返りの薬にするとか。とにかく頭のイカれた集団だよ。そんな電波集団へ回す死体があるなら、医学の発展のためにうちにくれてもいいのにねえ」
ハーバート教授は愚痴を吐いた。
大昔、疫病が流行した頃に感染拡大を防ぐ目的で、恐ろしい悪魔やゴースト、ゾンビが出没するというデタラメを拡散し『アンデットライン』という通り名を付けて、村人を不用意に立ち入らせない対策を取っていた。
「ベンジーはお化けが怖く無いの?」
グレース皇子とクロウ、エステルと護衛のユーシン、アヴィは、ベンジャミンに案内されて、アンデットラインの中を散策していた。
クロウの問い掛けに、ベンジャミンはニコニコと笑って答えた。
「まあね。ここで働いている人たちは職業柄、平気みたいだよ。アンデットライン内にある民家やアパートには殆ど医者や軍人なんかが住んでるんだ。村や街に住むより家賃も格安だし、職場も徒歩圏内だからね」
通りすがりの人たちは大体白衣を着ていたり、軍服を着てる人ばかりだった。
大学病院前の薬局に到着すると、ベンジャミンはその中に入った。
「……薬屋か?」
店内は広く、薬剤師がカウンターに座っていた。奥には、なぜか飲食スペースもあった。
「うん。軽食も販売してるんだよ。この辺りには飲食店もないしね。はい王子様」
ベンジャミンは黒い液体の入ったカップをグレース皇子やみんなに振舞った。
薬草やスパイス入りの甘いビールのようだ。
「エールのようなものか?」
「しゅわしゅわー」
独特の風味がある飲み物に、グレース皇子は眉をひそめた。
「ああ、これって、ルートビアっすね。飲んだことがあります」
ユーシンは前世で、外国へ行った際にこのドリンクを口にしたことがあった。
「ふぎゃあ~、薬の臭い~、うへぇ~」
クロウはグレース皇子のカップをペロッと舐めて、顔にシワを寄せた。
「うーん、美味しくはないな~」
アヴィはカップを飲み干して苦笑した。
「薬として売っているからね、美味しくはないはずだよ」
ベンジャミンは笑っていた。
栄養ドリンク感覚で買い求めに来る客が多いそうだ。
薬局を出て、次に案内されたのはドーム型の大きな建物だった。
「ここはねー、死体解剖劇場だよ」
「え?」
「ドキドキわくわく人体解体ショー♪医学生だけじゃなくて、一般人も見学ができるよ」
ベンジャミンはテンションを上げていたが、一同は顔を真っ青にさせる。
中央には遺体を置くための台があり、観客席が円状にそれを取り囲んでいた。
「タイミングが悪かったなあ~、今はやってないみたいだね」
「そんなのみたくなぁーい」
うなだれるクロウの身体に、突然背後から白衣の男が飛び付いた。
「ふぎゃあ~!」
クロウは驚いてジタバタ暴れる。
後ろを振り返ると、この前、夜の墓地で出会ったハーバートと言う名の医者が居た。
「またあったね、オオカミちゃん」
「あれ?ハーバート教授?お久しぶりです」
「ベンジャミン君か~、こっちにきていたんだね!」
「ベンジーの知り合いなの?」
「うん。彼は有名な解剖学者だよ」
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「ねえ、精霊って永遠に死なないんでしょ?解剖させてよ~。首を切り落としたって再生するんでしょ?めっちゃエコじゃん~?」
「いやああああ~、死ななくても、痛いもんは痛いもん~、注射も嫌いだもん~、いやーん」
クロウは必死に抵抗した。
そしてチワワに化けるとグレース皇子の後ろに隠れて萎縮した。
「ははは、精霊の身体を切り刻むのはさすがに罰当たりですよ~、ハーバート教授」
「だって~、最近はなかなか死体が手に入らないから、全然解剖できないんだよ~」
解剖劇場では、近くの処刑場で絞首刑に処された遺体を使用するのだが、死刑囚は解剖を嫌がり拒絶するため、最近では入手するのが難しい。
「魔術師の方には死体がちゃんと供給されているようだけどね~羨ましい限りだよ。僕も魔術師に転職しちゃおうかなぁ~」
「魔術師?」
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ハーバート教授は答えた。
「堕胎した胎児の遺体を煮込んで呪いの薬を作るとか、若い乙女の血を絞って若返りの薬にするとか。とにかく頭のイカれた集団だよ。そんな電波集団へ回す死体があるなら、医学の発展のためにうちにくれてもいいのにねえ」
ハーバート教授は愚痴を吐いた。
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